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私はいつのまにかなくなっていたペンダントを探すために、今日歩いてきた道筋を辿ろうとカフェテラスまで走って戻ってきた。
今はまだお昼過ぎで人が多い。とりあえず私はカフェの店員さんに落とし物としてペンダントが届いてないか確認しようとしたときだった。
「おい。急に走り出してどうした?」
シャルさんが私の後を追いかけてきていたようだ。私は焦りすぎて、声をかけられるまでシャルさんがついてきていたことに気づいていなかった。
「首からかけていたペンダントがないんです。どこかで落としたのかも」
「ああ、あの魔石のついたものか」
「ええ、大事なものなので私探します。シャルさんは先にお帰りになっていただいても……」
「私も周囲を探そう」
そういってシャルさんは、私たちが座っていたテーブルの方へ向かった。
「あ、ありがとうございます」
まさか手伝ってもらえるなんて思ってなかったが、人手が多いに越したことはなく、非常に助かる。
座席の方は彼にまかせて、私はカフェのカウンターへ向かった。
結果ペンダントは見つからなかった。
カフェの施設内を可能な限り探し回り、私たちが歩いてきたルートを辿りながら物陰を見てわまり、診療所もくまなく確認して、ようやく家に戻ってきた。
「やはりそもそもつけていなかったんじゃないのか」
シャルさんに問われる。
「シャワーと寝る時以外は、常につけています。今日も朝起きてすぐ、首にかけたはずです」
私は力無く答える。今日の朝もペンダントをつけたことは覚えがあるのだ。だが今は、とにかく家を探してみるしかない。祈る気持ちで私は家の中を探した。
「どこにもありません」
私は涙ぐんで言った。
あのペンダントは私の魔導術の先生から譲っていただいたもので、本当に大切なものなのに……。それにペンダントについていた魔石がないと、大きな問題が発生する。
「ないものは仕方ない」
シャルさんがあっさりと言ってのける。
「仕方なくありません!あのペンダントがないと私は治癒術もなにも使えないんですよ」
魔石がなければ、私は治癒術も使えないただの娘。つまり今の職すら失いかねないということだ。
「替わるものはないのか」
「ありません!個人が魔導術用に魔石を所持するのは結構大変なことなんです。それこそ軍人とか医者、学者なんかにしか支給されません。……私は昔猛勉強して医師免許を取って、さらに先生のツテもあって所持できてたんです。」
「……そうなのか、それはまいったな……」
焦りでおかしくなってしまった私のテンションにシャルさんは若干引き気味である。
替わりの魔石を手に入れるなんて、すでに亡くなり地に埋まった魔獣の天然ものの魔石を自分で掘り当てない限りは、ほぼ不可能だ。というか、それもほぼ不可能ではある。
私は一度冷静になって考えみた。
ペンダントのチェーンはチタン製で、経年劣化を鑑みて定期的に買い替えていた。チェーンが切れるとは考えがたい。
本当に今日ペンダントは私の首から落ちてしまったのだろうか……。
私は最近耳にした噂を思い出す。
不審な魔石の紛失騒ぎ……この町では1ヶ月前くらいから、魔石の紛失が相次いでいると聞く。窃盗事件なのではないかと言い出す人もいるらしいのだ。
藁にも縋る思いだが、私の魔石を見つけ出すには、あとはこの騒動を追うしかないかもしれない。
「見つけ出してみせます」
「は?」
「必ず見つけ出しますよ!」
「はぁ」
「明日は休診して、聞き込み調査です。手伝ってください!」
「……おぉ」
シャルさんは訳がわからず、呆然としていた。
こうして私たちはこの不可思議な事件解決へと動き出すのであった。




