第五話：騎士団の到着
シオンが気絶してから数時間が経過した。村は静まり返り、かつての活気は影を潜めていた。瓦礫の中には、村人たちの悲しみが渦巻き、数多の命が奪われた跡が残っていた。暗闇が村を覆う中、遠くから騎士団の馬の足音が聞こえてきた。
騎士団は、村からの緊急連絡を受けて急ぎ足でやって来た。彼らのリーダー、アンドリューは、鋭い目つきで周囲を見渡し、無残な光景に顔をしかめる。
「この村に何が起こったのだ…」彼はつぶやく。
部隊は村の中心部に向かい、瓦礫を避けながら進む。騎士たちは武器を構え、周囲に注意を払いながら、彼らの任務を果たそうとしていた。
「アンドリュー、こちらを見てください！」部下のリリアが叫ぶ。彼女の指差す先には、気絶したシオンが倒れているのが見えた。
「彼が生き残りか…」アンドリューはシオンに駆け寄る。彼の周囲には、かすかに動く者たちがいた。シオンの他にも、村の生き残りが数人いた。
村の若者、カイル、そしてフィーナの姿が見える。カイルは軽傷を負い、無理に立ち上がろうとしているが、痛みに顔を歪めていた。フィーナは、彼のそばで心配そうに見守っている。
「彼らも生き残っているとは…」アンドリューは思わず安堵の声を漏らす。リリアもシオンを確認し、彼の呼吸を確かめる。
「意識は戻っていないようですが、息はしています。」リリアは報告する。
「よし、急いで応急処置を。カイル、フィーナ、君たちも無事か？」アンドリューが声をかける。
カイルはうなずき、フィーナも頷いた。「なんとか生き残ったけど、村は…」カイルの言葉は重く、村の現状を思い出すと、心が痛む。
「今はそれを考えている場合ではない。彼らを救出し、すぐに避難所に移す。」アンドリューは指示を出す。騎士団は、シオンと村の生き残りを安全な場所へ運ぶ準備を始めた。
「みんな、強く生きろ。これからも戦い続けなければならない。」アンドリューは、村人たちを励ますように言葉をかける。
騎士団の力強い手で運ばれ、シオンはようやく安らかな場所に移された。意識が戻る前に、彼らの温かい思いやりが、彼を包み込むように感じられた。シオンの心には、まだ闇の影が残っていたが、騎士団の存在が少しずつ希望を与えていた。
