第二話:静寂の中の予兆
日が高く昇り、村全体が活気に満ちていた。シオンはいつものように村の中を歩き、手伝いを探していた。昨日と同じように平和な空気が漂っているが、心の奥には生まれてから感じたことのない微かな違和感が残っている。
広場では、村の子どもたちが元気に走り回っていた。小さなアンナがシオンを見つけると、無邪気な笑顔で駆け寄ってきた。
「シオンお兄ちゃん!一緒に遊んでよ!」
「おっと、アンナ。また元気だな。」
シオンは微笑みながら膝を折り、アンナの髪を軽く撫でた。彼女は村の未来を象徴するかのように明るく無邪気だった。こうして村の人々と触れ合うことが、シオンにとって日々の癒しになっていた。
「今日はね、かくれんぼをしてるの!お兄ちゃんも隠れて!」
「よし、じゃあどこかに隠れてみようか。」
シオンはアンナたちの遊びに加わり、村の裏手の森へと足を運んだ。子どもたちの笑い声が遠くから響く。森の静けさと、村の賑やかな声が対照的に感じられる瞬間だった。
村に戻ると、フィーナが畑仕事をしていた。シオンは彼女のそばに寄り、手伝うことにした。
「シオン、またぼんやりしてるわね。」
「いや、少し風が冷たく感じただけさ。」
フィーナは眉をひそめた。「風?今日はいつも通りよ、変なこと言わないで。」
彼女は軽く笑い飛ばしたが、シオンはその違和感を無視できなかった。村人たちは皆、平穏な日常を楽しんでいる。だが、自分だけが何か見えないものに気づいているような感覚に囚われていた。
その日の夕方、狩人のカイルとルークが森から帰ってきた。彼らの表情は普段よりも険しく、いつもの活気に欠けている。手にした獲物はいつもより少ない。
「おい、シオン。今日はちょっとおかしなことがあった。」カイルが近づき、低い声で言った。
「何かあったのか?」シオンが問いかけると、ルークも険しい表情で口を開いた。
「森の中がいつもと違う。動物たちが妙におとなしくて、しかも痕跡がほとんどないんだ。いつもなら鹿やウサギの足跡がたくさん見つかるのに、今日はほとんどなかった。」
「それに…」カイルは声を潜めて続ける。「森の奥の方に、不気味な静けさが漂っていた。風の音も、鳥の鳴き声も、まるで止まってしまったみたいだった。あれは普通じゃない。」
その言葉に、シオンの胸に冷たい感覚が広がった。カイルとルークは経験豊富な狩人だ。彼らが感じる異変は、決して見過ごすべきではないものだろう。
「…何かが近づいているのかもしれないな。」シオンは小さな声でつぶやいたが、フィーナや他の村人たちには聞こえないようにした。皆が心配するのは避けたかった。
夜になると、村人たちは焚き火を囲み、賑やかな夕食の時間を過ごした。だがシオンはその喧騒の中でも、森で感じたという違和感と自身の感じた違和感が頭に残り続けていた。




