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星降る夜の異世界異邦人

作者: 虚空紀行

遥か彼方の星系より、一筋の光が闇を切り裂き、未知なる星へと降り立つ。エリオという名の元軍人は、故郷地球とは異なるこの星で、予期せぬ不時着を余儀なくされた。彼の目の前に広がるのは、巨大な樹木が支配する未踏の大地と、魔法が息づく世界。そこで彼は、勇敢な剣士セリアと賢明な魔法使いアレンと出会い、彼らと共に、失われた金属Zaitanium-235を求める旅に出る。彼らの前には、古代の科学と魔法が交差する謎に満ちた冒険が待ち受けていた。ここに、星降る夜に始まる異世界異邦人の物語が、今、幕を開ける。

星降る夜の異世界異邦人-魔法の星の失われた金属-


第一章: 異世界の空に



-緊急事態-


宇宙船のコックピットは、激しい警告音で満たされていた。原因不明のコントロール不能状態に陥ったエリオの宇宙船は、未知の星系への緊急着陸を余儀なくされる。宇宙の無限の闇を背に、彼の宇宙船は一筋の光となって、その星の大気圏を突き抜けた。操縦桿を握りしめるエリオの心臓の鼓動が、耳鳴りのように響く中、彼は冷静さを保ちながら、できる限りの胴体着陸を目指す。


「アトラ、状況を報告してくれ!」エリオが命令するが、宇宙船のAIであるアトラからの応答はない。彼女の冷静で無個性的な声がこの緊急時に沈黙していることは、エリオにとってこのトラブルの深刻さを示していた。


宇宙船は激しい振動と共に、巨大な樹木をなぎ倒しながら大地に突き刺さり、ついに停止した。エリオは一瞬の静寂の中で自分がまだ生きていることに気づき、安堵の息をつく。しかし、彼が脱出口から外に出ると、目に飛び込んできたのは、地球とは明らかに異なる光景だった。周囲は見たこともない巨大な樹木で覆われ、地面には不思議な色の花が咲き乱れている。


エリオはその不思議な美しさに一瞬心を奪われるが、すぐに現実に引き戻された。彼は急いで船体に戻り、宇宙船の損傷状況を確認しようとする。アトラの沈黙は彼の心に重くのしかかり、冷静さを保ちつつも内心では焦りを感じ始めていた。周囲の未知の風景に深い興味を抱きつつも、彼の目的は明確だった。船を修理し、アトラとの通信を回復させ、なんとしても地球へ帰還すること。この未知の世界での生存と探求は、その目的を達成するための手段に過ぎなかった。



-星が降る夜-


空気を切り裂くような轟音が、静寂を破った。セリアとアレンは、村の外れにある小さな家の前で、夜空を見上げていた。星明かりがほのかに村を照らす静かな夜だったが、その平穏は突如として破られた。一筋の光が天を駆け、森の方向へと落下していく様子が目に映った。その光は、まるで星が地上に降りてくるかのようだった。


「アレン、見て!星が落ちてきたわ!」セリアは驚きと興奮の混じった声で叫んだ。彼女の目は、落下する光に釘付けになっていた。


アレンも同じく目を丸くしてそれを見つめた。「信じられない...。あれは一体何だ?」


落下する光は次第に弱まり、やがて森の奥深くで何かに衝突したかのように見えた。地響きとも似た振動が、遠く離れた彼らの足元まで伝わってきた。


「調べに行くべきかな?」アレンは言った。彼の中には好奇心が湧き上がっていたが、同時に未知への恐れもあった。


セリアは一瞬躊躇したが、好奇心がそれを上回った。「行きましょう!でも、慎重にね。何があるかわからないから。」


アレンは手を振ると、魔法によって小さな光球を生成した。それは彼らを照らし、夜の森を進む道しるべとなった。二人はその光を頼りに、家を出発し、森へと向かった。夜の森は不気味なほど静かで、ただ二人の足音と、遠くで鳴る夜の生き物の声だけが聞こえていた。星が落ちた方向へと進むにつれ、彼らの心は期待と不安でいっぱいになっていった。


やがて、彼らは森の中で異様な景色に出くわした。巨大な樹木が根こそぎ倒れ、地面は深くえぐれていた。そして、その中心には、二人がこれまでに見たこともない金属でできた、小さな屋敷ほどの物体が横たわっている。それは、星から落ちてきたとしか思えない、未知の存在だった。



-剣士と魔法使いと元軍人-


夜が深まる中、エリオは宇宙船の外装を慎重に調査していた。その時、森の奥から物音が聞こえ、彼はとっさに身を隠した。慎重に覗き見ると、二人の若者が警戒しながら近づいてくるのが見えた。彼らの服装は地球のものとは明らかに異なり、彼らがこの星の住人であることを直感した。


セリアとアレンが宇宙船のそばに立ち止まった時、エリオは出迎えることに決めた。「こんばんわ。エリオと言います。」彼は両手を広げ、無抵抗な姿勢を示した。


セリアが最初に口を開いた。「君はどこから来たんだい?」彼女の声には好奇心が満ちていたが、それに混じってわずかな警戒心も感じられた。


エリオは答えた。「遠く離れた地球という星から来ました。ここにいるのは偶然です。私の宇宙船が故障し、ここに不時着しました。」


アレンは驚きを隠せずにいた。「宇宙船?それで、あの轟音は...」


「はい、不時着の際のものです。」エリオは宇宙船を指差しながら説明を続けた。「幸い、船体に大きな損傷はありません。明日にはシステムの復旧を試みることができるでしょう。」


セリアは好奇心旺盛にエリオを見つめた。「今夜はどうするつもり?」


「船内で過ごします。」エリオは落ち着いて答えた。「この中なら安全ですし、必要なものは全て手の届くところにありますから。」


彼らの会話は、互いの存在に対する驚きと興味で満ちていた。セリアとアレンは、この未知の来訪者と再び会う約束をして、森の中へと消えていった。エリオは一人宇宙船の中へ戻り、不安と期待が交錯する中で、翌日を待った。彼の心の中では、この星とその住人たちに対する好奇心が、不安を上回っていた。


-帰り道-


夜の森はアレンが作り出した光球の光でわずかに照らされており、セリアと彼は静かに帰路を歩いていた。二人は、夜空から降りてきた不思議な人物、エリオのことで頭がいっぱいだった。


アレン:「エリオっていう人、見たこともないような鎧を着ていたね。あの人、本当に空の星から来たんだろうか?」


彼の言葉は純粋な好奇心に満ちていたが、彼の声は不思議な出来事に対する興奮を隠せなかった。


セリア:「そうね。彼がどこから来たのか、それだけは分かったわ。でも、宇宙船って何?空から降りてくるなんて、想像もつかないわ。」


彼女の声には、未知の世界への好奇心が溢れていたが、同時にその概念に戸惑いも感じられた。


アレン:「うん、空の星からって聞いただけで、どういうことなのか全然わからないよ。」


彼は軽く首を傾げながら、光球をもう少し高く浮かべた。その動作は、未知への憧れと同時に、その理解の難しさを表していた。


セリア:「明日、エリオにもっと話を聞いてみたいわ。彼の世界のこと、もっと知りたい。」


セリアはアレンの光球を見上げながら、新たな知識への渇望を胸に抱いた。


アレン:「そうだね、彼に会って、もっと色々聞いてみよう。不思議な話が聞けるかもしれないから。」


アレンは確かな友情を込めてそう言い、セリアは彼の提案に明るい笑顔を返した。


セリア:「約束ね。」


二人は森の静けさの中、家路を急いだ。



-夜が明けて途方に暮れる-


朝の光が宇宙船のコントロールルームを優しく照らし、エリオは宇宙船のメインコンソールに向かった。昨夜のトラブルにもかかわらず、彼はAIのアトラを再起動するための基本的な診断プログラムを実行できた。幸い、通信システムは無事で、エリオはアトラの起動を試みる。


「アトラ、聞こえるかい?」エリオが期待混じりに問いかけると、彼の前にアトラのホログラムが静かに現れた。室内が穏やかな光で満たされる。


「おはようございます、エリオ。システムが再起動しました。どのようにお役に立てましょうか?」アトラの声は、故障からの復帰を示す冷静さと一抹の安堵を含んでいた。


エリオは安堵の息をつきながら、アトラに故障の状況を報告するよう頼んだ。「アトラ、故障の状況を報告してくれ。」


アトラのホログラムが応答する。「システム診断の結果、ハイパードライブの主要コンポーネントに故障が発見されました。その修理にはZaitanium-235が必要です。」


エリオは真剣な表情でアトラを見つめた。「Zaitanium-235はどこで見つかる?」


「センサー分析によると、Zaitanium-235はここから西に約50キロメートルの地点に存在します。」アトラのホログラムが確かに告げる。


「了解した。その座標をナビゲーションに設定してくれ。」エリオは指示を出し、アトラは即座に作業を開始した。


エリオはアトラに感謝し、セリアとアレンが来るのを待つ準備を整えた。彼は彼らに今朝得た情報を共有し、必要な金属、Zaitanium-235を探しに行く計画を話すつもりだった。外に出ると、エリオは宇宙船の出口で彼らの到着を静かに待った。



-村にて-


セリアとアレンは朝早く、村の中心にある広場で昨夜の出来事について村人たちに話していた。彼らは空から降ってきた不思議な船と、その船の持ち主であるエリオについて語った。


セリアが興奮を隠せずに語り始める。「昨夜、アレンと私は森の中で不思議な船を見つけたの。その船は、星から来たという男、エリオが操っていたわ。」


アレンも話に加わった。「エリオは遠い星からやってきたそうだ。でも、一人では心細いだろうし、村に来てもらったらどうだろうか。」


村の長老が質問した。「その船を、ここに持ち帰ることは可能かね?」


セリアは考え込む。「村人たちが力を合わせれば、何とかできるかもしれないわ。肉体強化の魔法を使えばきっと大丈夫よ。」


村人たちはその話に興奮し、長老は決断を下した。「ならば、そのエリオの同意を得たなら、エリオとともにその船をここに持ち帰るのだ。」


セリアとアレンは村人たちからの歓声を背に、エリオに会い、彼の船を村に持ち帰る提案をする準備を始めた。彼らはエリオがどのように反応するか分からないが、この提案が受け入れられることを期待していた。



-たくさんきた-


朝の霧がまだ宇宙船を優しく包んでいる中、エリオはセリア、アレン、そして筋肉隆々の10人の男たちが自分のもとに近づいてくるのを見て、何のために彼らが来たのか首を傾げた。


セリアが一歩前に出て、明るく提案した。「エリオ、私たちの村に来ない?船は彼らが運ぶわ。」


エリオはその提案に一瞬戸惑った。「船を運ぶ? それはどうやって…?」彼の声には信じられないというニュアンスが含まれていた。


「大丈夫。私たちに任せて。」セリアは自信満々に答え、エリオの疑念を軽く払いのけた。


「何を言っているんだ?」エリオは彼らのがいくら力自慢でも無理であろうと考えた。疑心暗鬼のままでいた。彼には、彼らがどうやってその重い宇宙船を動かすつもりなのか理解できなかった。宇宙船は人が束になっても動かせる重量ではないというのに。


彼らはエリオの疑問に対して、ただただ前向きな態度を示した。セリアとアレンは、エリオの迷いや不安に対して具体的な説明を提供せず、ただ彼を説得した。


エリオは、彼らの提案に対する具体的な部分は見えないまま、彼らの熱意に圧倒されて、やや渋々ながら同意することにした。「わかった、君たちの提案に乗ることにする。しかし、本当にうまくいくのか?」



-魔法-


エリオはセリアとアレンが筋骨隆々の男たちに指示を出しているのを見た。男たちは宇宙船の周りに集まり、準備が整ったようだった。エリオは彼らが宇宙船をどうやって村まで運ぶつもりなのか、疑問に思っていた。


「準備はいい?」セリアが男たちに声をかけた。


男たちは頷き、アレンは彼らに向かって手を振った。その瞬間、彼の手から輝かしい光が放たれ、筋骨隆々の男たち一人一人に身体強化魔法がかけられた。彼らの体はさらに膨張し、力強くなった。


エリオは目を見張った。「これは…?」彼は驚嘆の声を上げた。


「これは身体強化魔法。力を高める魔法だよ。」アレンが説明した。


魔法がかけられた後、男たちは宇宙船に手をかけ、その巨大な重量にも関わらず、宇宙船をゆっくりと持ち上げ始めた。力強く、宇宙船は確実に持ち上がっていった。


エリオはこの光景に衝撃を受け、彼らの強さと魔法の力に驚愕した。「信じられない…」


筋骨隆々の男たちは、身体強化魔法の力を借りて、宇宙船を慎重に、しかし確実に村へと運んでいった。エリオとアレン、セリアも彼らに続き、村へと向かった。


村に到着し、宇宙船が安全に村の広場に置かれると、エリオは再び筋骨隆々の男たちと魔法を使ってくれたアレンとセリアに感謝の意を表した。


「あなたたちのおかげで、船を安全に運ぶことができました。」エリオの言葉は心からのものだった。



-必要なもの-


その晩、村の広場ではエリオを囲んで賑やかな宴が開かれていた。焚き火の明かりが暖かく、村人たちの笑顔が輝いている中、エリオと村の長老が対話を交わしていた。


「エリオ君、君の星には魔法がないと聞いたが、本当かね?」長老が興味深く尋ねた。


エリオは頷き、「はい、私たちの世界では、魔法はただの伝説です。科学と技術が私たちの生活を支えています」と答えた。


周りの村人たちは、そんな世界の存在に驚きの声を上げる。その一方で、アレンが興味津々で質問を投げかけた。「じゃあ、エリオ、ここに来た目的は何なんだ?」


「私の宇宙船の修理に必要な特別な金属、Zaitanium-235を探しています。センサー分析によると、その金属はこの村の西方、約50キロメートルの地点にあるらしいのですが…」エリオが話を続けると、セリアが思い出したように口を挟んだ。


「西方50キロメートル…それって、もしかして魔王城のあたりじゃない?」セリアの言葉に、一同は驚きの表情を浮かべた。


「魔王城?」エリオが疑問を投げかけると、長老が説明を始めた。「ああ、それは古い伝説の地だ。かつてこの星を恐怖に陥れた魔王が住んでいたと言われている城だが、今は誰も近づかない、忘れ去られた場所だよ。」


「しかし、その地には貴重な物が眠っているとも言われています。もしかしたら、エリオ君が探している金属も…」賢者が推測すると、エリオは希望を見出したように目を輝かせた。


「それなら、探検に行く価値がありそうですね。しかし、一人では難しいかもしれません…」エリオが慎重に言葉を選ぶと、アレンがすぐさま手を挙げて言った。


「心配するな、エリオ!僕たちが力を貸すよ。この冒険、一緒に行こうじゃないか!」アレンの提案に、セリアも賛同の意を示した。


「そうね、私たちも一緒に行くわ。魔王城の秘密を解き明かし、エリオが帰るための手助けをするのよ!」セリアの言葉に、村人たちからも励ましの声が上がった。


「ありがとう、みんな。こんなにも温かく迎え入れてくれて、本当に感謝しています。」とエリオは心からの感謝を述べ、その夜は更けていった。



-装備と決意-


翌朝、エリオと村の若者たち、セリアとアレンは村の長老と賢者から魔王城の情報を集めていた。長老は彼らに魔王城の位置と距離について説明した。


「魔王城へは、ここから西へ約50キロメートル。無理をすれば1日で着くけれど、途中で1泊すれば余裕をもって着けるだろう。」長老が言うと、アレンは魔法でお湯を作れることを加え、「僕の魔法があれば、インスタント食品も楽しめるよ。」と明るく話した。


しかし、セリアは少し心配そうに口を開いた。「でも、魔王城の現状がどうなっているかは誰も知らないわ。」


賢者が落ち着いた声で彼らを励ました。「確かに、魔王城は多くの謎を秘めている。だが、君たちなら何かしらの手掛かりを見つけられるだろう。」


エリオは「ありがとうございます。皆さんのアドバイスに感謝します。我々は準備が整い次第、出発します。」と感謝を表し、セリアとアレンも同意を示した。


エリオは、魔王城への旅に備え、彼の技術とこの世界の環境に適応するため、パワードスーツを長距離行軍用に切り替えた。宇宙船の装備庫からデュアルストライクARXを取り出し、実弾とレーザーの切り替えが可能なこの武器を装備した。さらに、彼の腰にはレーザーブレード、フォトンエッジが装着され、未知の危険に対応できるよう準備を整えた。


一方、セリアは自らの剣と革鎧を身につけ、アレンは自身の杖とローブを選んだ。彼らはそれぞれの得意とする装備で、冒険に必要な準備を整えた。


「大丈夫かい、エリオ?」セリアが心配そうに尋ねると、エリオはニッコリと笑って頷いた。「大丈夫だよ、セリア。この装備なら、どんな困難も乗り越えられるさ。」


アレンも彼らに加わり、「僕たちも準備万端だ。魔法と勇気があれば、きっと道は開ける。」と力強く言い、彼らの士気を高めた。



-森の中の遭遇-


魔王城へ向かう途中、森の奥深くで、エリオ、セリア、アレンの3人が同時に足を止めた。「まて、」彼らはほぼ同時に口にした。エリオは生体センサーに反応があったことを確認し、セリアは周囲の気配を敏感に察知していた。一方、アレンは探索魔法の反応を感じ取っていた。


エリオが振り返り、セリアとアレンに確認の視線を送る。「何かいる。センサーが反応している。」


セリアは剣を握りながら警戒の姿勢を取り、「私も何かの気配を感じるわ。この森、何かが違う。」


アレンは杖を手に取り、「私の探索魔法も何かを感知している。この方向から…」と言いながら、エリオとセリアが感じ取った同じ方向を指さした。


この瞬間、3人は互いの実力と、お互いが未知の存在に対してどのように反応するのかを知ることになった。エリオは、地球の先端技術を駆使した装備を持っているが、この星の魔法の存在を未だに完全には理解していなかった。同様に、セリアとアレンもエリオがどれほどの力を持っているのか、その全容を把握していなかった。


「皆、準備はいいか?」エリオが低く声をかけると、セリアとアレンは同時に頷いた。


「エリオ、あなたの技術と私たちの魔法があれば、大丈夫よ。」セリアが力強く言った。


アレンも加えて、「そうだ。問題ないだろう」


彼らは未知の存在に立ち向かう準備を整え、互いに信頼を寄せ合いながら、ゆっくりとその方向へと進んでいった。


慎重に進む中、3人は突如、前方にバーサーカーベアの群れを発見した。5頭の獰猛な熊が、彼らの前に現れた。避けて通ることもできたが、エリオ、セリア、アレンは互いの力を確認する絶好の機会とみなした。


事前の打ち合わせにより、戦略が立てられていた。エリオは遠距離からの攻撃を担当する。彼のデュアルストライクARXは、実弾とレーザーを切り替えて使用できるため、さまざまな状況に対応できる。アレンは探索魔法の反応を利用してバーサーカーベアを間引く役割を担い、エリオが銃撃で仕留める。そして、熊が接近してきた場合はセリアが剣で対応することになっていた。


アレンが先陣を切り、手を振るうと、彼の杖から放たれた光の球が一頭のバーサーカーベアに直撃した。球から放たれる魔法の力で熊は一時的に動きを鈍らせ、その隙にエリオがデュアルストライクARXを構え、精密な射撃で熊を一撃で倒した。


しかし、攻撃により他の熊が刺激され、怒り狂って3人に襲いかかる。セリアが前に出ると、彼女の剣は輝きを増し、迫り来る熊に向かって力強い一撃を放った。剣の切れ味は鋭く、熊の厚い毛皮を容易に切り裂き、一頭を倒した。


戦いが進むにつれ、3人の連携はさらに磨かれていった。エリオの技術、アレンの魔法、そしてセリアの剣技が見事に融合し、残りの熊たちも次々と倒されていった。


戦いが終わると、3人は互いに頷き合い、彼らの間には新たな信頼が生まれていた。この戦いを通じて、エリオはセリアとアレンの実力を知り、セリアとアレンもエリオの能力を認めることとなった。



-つかの間の休息-


数度の戦闘を経験したものの、エリオ、セリア、アレンの前には、彼らの実力に匹敵するような大きな脅威は現れなかった。森の深い部分を進む中で、彼らは偶然にも山肌にへこんだ洞窟を見つけ、そこで夜を過ごすことにした。エリオが持参していたインスタントラーメンを夕食とすることになり、アレンが魔法でお湯を沸かした。


セリアとアレンはインスタントラーメンには不慣れだったが、暖かくておいしい食事に心から感謝した。彼らは火を囲みながら、それぞれの世界の食事や文化について語り合った。エリオから見れば、この星の食事は新鮮で興味深いものだったが、セリアとアレンもまた、エリオの持ち込んだ地球の食文化に興味津々であった。


「これは本当に便利だね。こんなに簡単においしい食事ができるなんて。」セリアが言いながら、ラーメンをすすった。


アレンも笑いながら、「魔法もいいけど、こういう技術もすごいよね。エリオ、また明日もこれ食べられる?」と期待を込めて尋ねた。


エリオは微笑み、「もちろんだ。僕の宇宙船にはまだたくさんあるから、みんなで食べよう。」と応じた。


その夜、3人は冒険の疲れを癒やしながら、明日への準備を整えた。洞窟の中は暖かく、外の冷たい風を忘れるほどだった。彼らの心は、共に過ごした時間と共有した経験で結ばれ、新たな友情が深まっていった。翌朝、彼らは再び魔王城を目指して出発する準備を整える。この小さな休息は、彼らにとって貴重な一時だった。


-魔王城-


魔王城に到着したエリオ、セリア、アレンは、その警備システムが未だに生きていることを目の当たりにした。地面をすべるように徘徊する、人の半分ほどのサイズのゴーレムたちが彼らの前に現れた。しかし、エリオにとっては、これらのゴーレムは故郷の星でよく見るロボットに過ぎなかった。彼にとっては、魔王城が古い科学文明の遺産であることが明らかになった。


「ふむ、これらは古代の警備ロボットだ。自分の星で見たことがある。」エリオは冷静に観察し、セリアとアレンに説明した。


セリアは剣を手に緊張した構えを取りながらも、エリオの言葉に安堵した。「科学の力で動いているのね。でも、どうやってこれを通り過ぎるの?」


アレンも魔法の杖を握りしめつつ、エリオの答えを待った。「もし魔法が効かないなら、どうすればいい?」


エリオはパワードスーツのデータインターフェースを操作し始めた。「問題ない。このロボットたちは、おそらく中央制御システムに繋がっている。それを見つけ出して無力化すれば、通り抜けられるはずだ。」


セリアとアレンはエリオの提案に同意し、彼の指示のもと、魔王城内部へと慎重に進んでいった。エリオの技術的知識とセリアの剣技、アレンの魔法が組み合わさり、彼らはゴーレムたちを巧みにかわしながら、城の深部を目指して進んでいった。


城内は科学技術が色濃く残された場所であり、エリオはその技術に興味津々であった。一方、セリアとアレンはこの未知の技術に戸惑いつつも、エリオの導きで新たな発見を楽しんでいた。


やがて、彼らは中央制御室と思しき場所に辿り着き、エリオはコンソールに接続し、ゴーレムたちを無力化するコードを入力した。システムがシャットダウンすると、城内の警備ロボットたちは一斉に動きを停止し、彼らの前の道が開かれた。


「やったぞ、これで前に進める。」エリオは達成感に満ちて言った。


セリアとアレンも安堵の息をつき、「エリオ、ありがとう。君がいなければ、この城を探検することはできなかったわ。」セリアが感謝の言葉を述べた。


「本当に助かったよ。さあ、探しに行こう!」アレンが元気よく提案し、3人は新たな冒険に向けて歩を進めた。彼らの前には、古代科学文明の秘密と、彼らが探し求めていた貴重な金属が待っていた。この魔王城の探索は、エリオにとっては科学と技術の謎を解き明かす旅でもあり、セリアとアレンにとっては、魔法だけではない、別の力、科学の力という新たな世界の理解を深める機会でもあった。


-古の住人-


進むにつれ、エリオは自らの仮説に確信を深めた。魔王城の構造と警備システム、特に徘徊するゴーレムの存在は、彼にとってはかつてこの地に落ちたスペースコロニーの遺物に他ならないように思えた。何らかの原因で搭乗者たちはすべて死に絶え、その技術だけがこの場所に残されたと考えられた。


大広間にたどり着いたとき、彼らは正常に稼働している美しいアンドロイドを発見した。アンドロイドは彼らに向かって話し始めた。「警備システムを停止させたのはあなたですか?ずいぶん久しく人を見ていませんでした。ここへは何用で?」


エリオは直接的に答えた。「Zaitanium-235を求めています。」


アンドロイドは彼の質問に答えた。「それなら、私が知っています。ここにはもう人はいませんから、私も連れて行ってください。」


エリオはアンドロイドを静かに観察した後、思いを決めたように言葉を紡いだ。「君の名前は…アリア。これからは私たちの仲間だ。」


アリアと名付けられたアンドロイドは、新しい名前を受け入れると、彼らに向かって軽く頭を下げた。「アリア、了解しました。これからは皆様のお役に立てることを願っています。」


セリアとアレンは、アリアを温かく迎え入れ、彼女がグループに加わったことで、彼らの冒険がさらに豊かなものになることを予感した。


「アリア、Zaitanium-235の場所を教えてくれるか?」エリオが尋ねると、アリアは即座に答えた。「はい、私が案内します。」そして、彼らを魔王城の奥深くにある秘密の場所へと導いた。


途中、アリアは魔王城がかつてスペースコロニーであったこと、そして彼女がそのコロニーの運用システムを管理していたAIであることを語った。エリオたちは、この星の科学技術と自分たちの知る宇宙船の技術が交差する点に大きな興味を抱きながら、アリアの話に耳を傾けた。


アリアの案内により、彼らはついにZaitanium-235を発見した。その瞬間、彼らは新たな仲間と共に大きな一歩を踏み出した喜びを共有した。


「アリア、君がいなければ、これを見つけることはできなかった。感謝するよ。」エリオが感謝の意を表すと、アリアは優雅に一礼した。


「エリオ様、セリア様、アレン様、私がお役に立てたことを光栄に思います。これからも皆様の冒険をサポートします。」


-帰郷-


村に戻ったエリオ、セリア、アレン、そして新たな仲間アリアは、長老への報告を決めた。彼らは魔王城の探索で得た貴重な知見と、Zaitanium-235を見つけ出したこと、さらにアリアという新しい仲間を得たことを共有した。


エリオはAIアトラにZaitanium-235を渡し、宇宙船の修理を進めることを指示した。彼の宇宙船はこの星に不時着して以来、彼の帰還の希望をつなぎとめる唯一の手段であった。アトラはその責任を理解し、修理作業を迅速に開始した。


一方、アリアはエリオと共に行動することを選択した。彼女はかつてのスペースコロニーのAIであり、自身が持つ知識と技術をエリオたちの冒険に役立てることを望んでいた。アリアの加わりにより、彼らのチームはさらに強固なものとなり、未知の世界での生存と探求に新たな強みを得た。


「アリア、君が私たちと一緒にいてくれることを嬉しく思うよ。」エリオがアリアに感謝を表明すると、アリアは微笑みながら答えた。「エリオ様、私も皆様と共にこの星をさらに探索できることを楽しみにしています。」


長老はエリオたちの報告を聞き、彼らの勇気と成果に深い敬意を示した。「君たちの行動は、私たち全員にとって大きな希望を与えてくれた。この村はいつも君たちを歓迎する。」


一週間が過ぎ、宇宙船の修理も終わった。AIアトラの分析により、現在位置も特定できた。ワープの際に位相のずれたこの星にたどり着いたこと、この世界に満ちた魔力がハイパードライブに負荷となったことも判明した。また、その対応も済んだ。エリオとアリアはともに宇宙船に乗り、村人たちの見守る中、空へと帰る準備を整えた。


エリオは村の長老と村人たちに向かって言った。「この度は本当にお世話になりました。私たちが遭遇したトラブルの原因を研究し、安定してこの星と地球を行き来できるようになれば、必ずまた訪れます。その時は、また皆さんの温かい歓迎を受けられることを楽しみにしています。」


長老はエリオに返答した。「エリオよ、あなたたちは、いつでもこの村へ戻ってくるとよい。私たちはあなたたちの安全な帰還と、再びの訪問を心から願っている。」


アリアもエリオの隣で頷きながら、村人たちに感謝の意を示した。「この短い間ですが、私もこの星と皆様との出会いを大切に思います。また戻ってきたときは、さらに多くのことを共有できることを楽しみにしています。」


そして、エリオとアリアは宇宙船に乗り込み、アトラのナビゲーションのもと、新たに設定されたコースで宇宙へと飛び立った。村人たちは彼らが遠く離れた空へと消えていくのを見送りながら、彼らの無事な旅と再会を願った。


宇宙船内では、エリオがコックピットに座り、アリアが隣に立っていた。エリオは深呼吸をして、アトラに話しかけた。「アトラ、地球へのコースを設定して。」


アトラの声が宇宙船内に響いた。「コース設定完了しました、エリオ。いつでも出発できます。」


「ありがとう、アトラ。それじゃあ、行こう。」エリオが言うと、宇宙船のハイパードライブが起動し、彼らは再び宇宙の旅へと出発した。アリアとアトラと共に、エリオは地球への帰還を果たすため、そしてこの星との橋渡しとなるための新たな冒険に向かったのだった。

初の小説です。難しいです。改ページがわからない。

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