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#1 重たい目覚め

初めて小説書きます。超ド素人です。

文章力も語彙力も全然ないので話にイラっとしたらそっとブラウザ閉じてください。

作者は百合が大好物なので百合要素入れようかなと考えてます。たぶん。


2023/01/27 "第二の母"を"義母"へ変更しました。


「ねえねえお母さんっ。この絵本読んでー!」


「あらセラ、今日もその本を読みたいの?好きなのね~」


「うんっ!この絵本大好きなの!すっごくワクワクするんだぁ~」


「ふふっ。それじゃあ座って。読んであげる。」


「やったぁ~!」



―――あるところに一人の冒険者がいました。

その冒険者は誰も見たことが無いような素敵な景色を求めて旅をしていました。

その冒険者は旅の途中、巨大な毒グモや石の巨人、吸血鬼やドラゴンなど恐ろしい魔物に襲われましたが誰にも負けない力と勇気を持って立ち向かい倒しました。

たくさんの危険に会いながらも旅を続け、たくさんの景色を見ることができました。

黄金に輝く砂漠の世界、白銀に煌めく氷の大地、七色に染まった天空の花畑、大空を映し出す広大な湖、瑠璃色のクリスタルで染められた地底世界、聖なる光で満ちた古代文明の遺跡。

冒険者は長い長い旅を続け、世界中を巡り、数多の悪を打倒し、多くの人々に讃えられ、最後は世界の果てで長い眠りにつきましたとさ……………………。

―――










*****************************







 カーテンの隙間から光が差し、小鳥の鳴き声が耳に届き始める。


 疲れはとれていないが長い年月で染みついた朝の習慣によってセラは自然と目を覚ました。

この街の中でも1、2を争うほど安価な宿屋のベッドは寝心地が良い訳がなく、眠りが浅かったためか夢を見ていた。

幼い頃の懐かしい思い出。


「……………………はぁ。」


 大好きだった母親との記憶は冷めきった心にささやかな温もりを取り戻させるが、同時に心の奥底に押し込め忘れようとした憧れを意識させられ、考えるのをやめよう……とため息と共に思考を吐き出した。

 気怠さから二度寝を決め込もうかと考えたが先ほどの夢の続きでも見てしまったら一層陰鬱とした気持ちになるだけだと重たい身を起こす。


 長い期間取り替えられてないであろう所々に空いた穴から光が漏れるボロボロのカーテンを開くと柔らかな朝日が視界に広がる。少しでも清々しい気持ちになりたいと朝日に縋ってみたものの暗くなった気持ちにまでは光は届いてくれないようで本日2度目のため息をこぼしそうになった。


「んん~っ…………!ふぅ………………よし。」


 このままぼーっと空を眺めていても仕方がないと背伸びをし気力の無い気持ちを無理やり切り替える。

朝日を浴びてクリアになった思考で起きてまずやるべきことを頭の中に並べながらボサボサに乱れた鈍色の髪を手で梳く。肩にかかる程度に伸びた髪を後頭部でまとめ上げ1本のテールを作る。

ポニーテールを揺らすように頭を横に振り頭部に普段と同じ感覚を確認したら、部屋の隅に立てかけられた木桶を持ってくる。


「〈アラテラ=モルテリノクス〉『ウォロ』」


―――チョロロロロロロロ………………

桶の上で指をかざし詠唱すると指の先から水が生成され桶の中へと流れ落ちていく。


 水の基礎魔法『ウォロ』。指先から水を生み出すだけのシンプルな魔法で、この世界の最高神とされる神の名に続けて魔法名をつけ足して唱えれば適正のあるものは簡単に使用することができる基礎中の基礎の魔法。

 この世界「アラテラ」の全ての人間は最高神アラテラ=モルテリノクスの加護を受け誕生し、その加護によって火、水、風、土、雷、氷、光、闇のいずれかの属性のうち1つまたは複数の適正が与えられる。

セラは水、氷の適正を持って生まれた。



 木桶の中に水が少しずつ溜まっていくのをぼーっと眺めていると、今朝見た夢―――記憶の続きを無意識に回想していた。






『――はいっ。おしまい。めでたしめでたし。』

『わはぁ……やっぱりすっごくワクワクするなぁ。わたしもこの冒険者さんみたいにいろんなとこ行ってみたい!それできれいな景色をたくさん見たいな~!』

『セラは冒険者になりたいのねぇ。でも、お外はこの絵本みたいにこわ~い魔物がたくさんいるのよ?』

『だいじょうぶだよ!冒険者さんみたいにすっごく強くなってぜ~んぶたおしちゃうんだっ!』

『あら。こわくないの?』

『ちょっとこわいけど……でもっわたしにだってだれにも負けない勇気があるもん!』

『ふふっ。そうね。その勇気があればセラも素敵な冒険者になれかもしれないわね。』

『えへへっ………………うんっ!わたしのいちばんの夢!』


 母は優しい笑みを浮かべて私を撫でてくれた。

私の夢の原点。何歳の頃の話か忘れてしまったが、大好きな絵本を読んでもらった時の記憶。




 父、母、セラの3人はセラが暮らす国――アルガード王国の辺境にある小さな村で生活していた。

 父は冒険者だった。冒険者といっても絵本に出てきたような住む場所を持たず世界中を旅する旅人のようなものではなく、1つの場所に定住し冒険者ギルドに加入し依頼を受け近隣の森などに出て魔物を狩り報酬を得るといった猟師と傭兵が合わさったようなものだった。

 セラが3歳の頃、父は一家の大黒柱として日々依頼をこなすため一日中出払っていることが多かったからか、父との思い出はそれほど多くはなかった。それでもその頃の父はとても優しい人だったということは覚えている。

 母は冒険者として戦う力などは持っておらず、またセラも幼かったため一日のほとんどをセラと共に過ごしてくれていた。家の家事をこなし庭の小さな畑の世話をし、空いた時間で絵本を読んでくれた。

村にはセラと同年代の子供はおらず遊び相手がいなかったため、一緒にいる母親との時間が全てだったセラにとって母の存在はなによりも大きく大切なものだった。


 母はセラが4歳の誕生日を迎えたその日に亡くなった。

誕生日プレゼントを買うためにセラと共に馬車に乗り、近くの街へと出かけたその道中で魔物に襲われた。セラが魔物に殺されそうになった時、身を挺してセラを守りそして殺されてしまった。

 その後母が倒れセラが再び殺されそうになっていたところを近場にいた冒険者が駆け付け魔物を倒してくれたことでセラは生き残ることができた。

 その時セラは血を流し倒れ伏す母が死んでしまったことを理解し、しかし幼かったセラはその事実を受け入れることができず泣き疲れ眠りに落ちてしまうまでただひたすら泣き喚き続けた。


 それから1年後、父は再婚した。

突然再婚すると打ち明けその再婚相手を連れてきた父に対して母のことを忘れてしまったのか……とその時のセラは困惑と怒りを感じていたが、今思えば母を亡くしてから塞ぎこんでしまっていたセラを思っての行動だったのかもしれない。

 父が連れてきた再婚相手――義母の印象はとても綺麗な人………………だった。

それだけなのかと思うが義母とセラは母娘の関係ではあったもののその間に愛情というものは無く、他人のようなどこかよそよそしい関係だった。

 セラは彼女のことをどうしても母として見ることができず心を開けなかったのだ。

そのことを少なからず感じ取っていたであろう義母も再婚当初はセラに対して少しでも愛情を注ごうとしてくれていたようだが時間と共にその感情も薄れ、父との間に新たな子供を授かってからはセラに対して愛情を向けることはほとんど無くなっていた。


 再婚から1年後、最初の妹ができた。

エルネと名付けられたその子は母親譲りの美しい白金色の髪と父親譲りの浅葱色の瞳を持って生まれた。

 幼いながらも可憐な愛らしい顔、少しつり目気味の綺麗な目を見れば将来は母親のようにとても美しい子に育つだろうと簡単に想像ができた。両親はエルネをとても溺愛し年の離れた姉であるセラはあまり構われることがなくなっていた。

 

 それからさらに2年後、二人目の妹ができた。

三女である妹、セローネもまたエルネと同じく白金色の髪と浅葱色の瞳を持って生まれた。

エルネと比べてたれ目気味の目をしていたがセローネも綺麗な女性に育つだろうなとセラは思った。

 2歳になったエルネは色んな事に興味を示し、特に姉であるセラには強く興味を引かれたのかよくくっついて回るようになっていた。セラも最初は戸惑ったもののエルネと遊んであげるようになり、エルネの無垢な明るさに絆されセラは少しずつ以前の明るさを取り戻していた。

 8歳となり自意識が育ってきたセラは家庭内での自身の立ち位置をなんとなく理解し、長女としてしっかりしなければ………と姉としての気持ちを強く持つようになり今まで塞ぎこんでいた分家族の役に立とうと家事を手伝うようになった。

今は家の事を頑張って、大きくなったらお父さんのように冒険者になって、お金を稼いで、ゆくゆくは絵本のような冒険者に…………………漠然としたものではあったが目標を持って明るい気持ちで頑張ろうと思えた。

ただ、セラは要領が悪かった。教えてもらったことや大事な伝言を忘れてしまったり、畑の野菜を枯らしてしまったり、洗った洗濯物を運ぶ最中に転んで落としてしまったり、料理を焦がしてしまったり、やること1つ1つが空回りしてしまいそのころになって自分がひどく不器用であることを自覚した。

失敗ばかりが重なりセラは両親に叱られることが増え日に日に自信が小さくなっていった。


おそらく21歳となる現在のセラの卑屈な性格を形成しだしたのはこの頃からだったのだろう。



 1年後、四女のモネが生まれた。

モネもまた美しい白金色の髪を持って生まれたが、上2人の妹と違い瞳の色が紫色だった。

父は浅葱色、義母は琥珀色の瞳だったので不思議に思ったが、高名な魔法使いだった父の母――セラの祖母と同じ瞳の色だったためその血を濃く継いだのだろうと父が語っていた。

モネはエルネほどではないがシュッとした形の目をしていてそれでいて少し眠たそうなおっとりとした目つきをしていた。

 

 妹たち3姉妹はとても溺愛されていた。

エルネは物覚えがよく舌足らずではあったがたくさんの言葉や文字をすらすらと簡単に覚えた。

セローネはとても早い時期に1人で立てるようになり、たどたどしいながらも家の中を良く動き回っていた。

モネはとてもおとなしく泣き喚くことも少なく夜泣きなどで両親を困らせることがあまり無かった。


 その頃には父の3姉妹への関心と反比例して出来の悪いセラに対する関心が薄れていき、家庭内で孤立を感じていたセラの明るくなりかけていた心は鳴りを潜め、ただただ家族に迷惑をかけたくないからと妹たちとも距離を取るようになり部屋の隅っこで小さくうずくまって過ごすようになっていた。

幼い頃の優しかった父と母の記憶と母と一緒に読んだ大切な絵本を胸に抱えて、幸せだった思い出に縋って生きていくだけだった。―――――



――――――――


「っ!……………ん?ってうわっ!」


自分が無意識に記憶を掘り返していたことに気付き慌てて意識を現実に引き戻す。

桶を見ると水が一杯になり端からあふれて零れた水が床に広がっていた。


「あぁ……・!また……はぁ………………。」


「無意識にぼーっと考え事しちゃう癖、直さないとな………………。」


 目の前の事、今自分がやっていることすら忘れて物思いにふける。いつからだったか分からないが、昔部屋の隅にうずくまって1人でいるようになってからいつしか身についてしまったセラの悪い癖だった。



「ぞうきん、は下にいって借りてこなきゃか。んしょっ。」


 窓を開け、木桶を抱えて窓の下に人がいないことを確認して余分な水を捨てる。

 木桶を再び床に置き両手を水に浸す。ひんやりとした水の柔らかい感触に手が包まれて少しだけ気持ちが落ち着く。

それからしっかりと顔を洗った後、再び水を捨てる。


 部屋の中じゃなくて外に出て顔洗えば良かったと床に溢れた水を見て今更なことを考える。




 お母さんとの思い出はいつも優しくて温かい………………がその記憶に引っ掛かるようにくっついてくる暗く重たい記憶。

思い出すたびに自分のちっぽけな自尊心や虚栄心が理不尽に抉り取られような痛みが胸に走る。





「……………………もう、考えなくていいんだ。思い出さなくても。あの子達は、あの人達はもう家族じゃない……。ただの他人だ……。」




こびり付いた嫌な記憶を振り払うように頭を横に振る。

水と一緒に洗い流せれば良かったと思いながら、自分に言い聞かせるように呟いた。








最後まで読んでいただきありがとうございます。

更新はスローペースだと思うのでふと思い出した時にでも読んでいただけると嬉しいです。

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