表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

6話

「バカですかあなたは。いいえバカですねあなたは。またはアホです」

はひほふふ(なにをする)


 危うく舌を噛み切られて自害されるところでした。軽いトラウマになっているのでやめて欲しいです。本当に。

 わたしはとっさに女性の口の中に魔力(マギ)の領域を展開し、圧縮も拡大もせずに固定したのです。彼女からすれば口の中にいきなり硬い球が現れたような感覚でしょうか。これで舌は噛めません。

 実際にあるのは空気穴を開けておいた魔力(マギ)の膜なので呼吸に問題はないはずです。念のためしばらくこのままでいてもらいましょう。

 わたしは胸一杯に空気を取り込んで──


「いいですか? 人間が死んだら絶対に魔人になるわけではありません。よしんば魔人になったとして、人間に戻れる確証もありません。そして人間に戻れて魔法を得たとして、それが戦いに使える魔法であるかはわかりません。わたしの言いたいことがわかりますか? バカバカしいくらいに賭けにもなっていない愚行ですよこれは。もっと言えば悪魔はあなたと違ってバカではありません。こちらの思惑をあえて裏切るようなことをしてくるかもしれないんです。向こうだって宿主を選ぶことができるんですからね。わたしが知っている限りでは魔法を得ようとして死んだ人間はほぼ全てそのまま死んでいます。魔人になる段階へ行けたとしても人間に戻れず、破壊を撒き散らす前に討伐されます」


 ──矢継ぎ早に叩き込んであげました。

 女性は目を白黒させていました。

 一旦呼吸を落ち着けてから、魔法の最も大切なことを教えてあげます。


「仮に全ての問題をクリアして魔法を得たとして、あなたはできますか? ──大切なものを失い(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)続ける覚悟を(﹅﹅﹅﹅﹅﹅)

「…………」

「あなたにだって一つや二つ、大切と思えるなにかがあるはずです。魔法が使えるようになっただけでその全てを失っていいんですか?」

「…………」

「それが魔法を使うために必要な代償。──いいえ〝呪い〟です」


 魔法使いのほぼ全ての人間が同じことを思ったことがあるでしょう。

 魔法なんて力、欲しくなかったと。もちろんわたしだって例外ではありません。今でこそ開き直っていますが当時は相当荒れました。

 それはさておき。


「で、頭は冷えましたか?」


 聞くと、女性はコクコクと頷きましたので、魔法を解除して口を自由にしてあげました。


「……お前は今も失い続けているというのか」

「はい」


 なにを失い続けているかは……内緒です。

 いい女には隠しごとの一つや二つ、あるものですから。どや。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ