表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

5話

「それはまた厄介ですね。魔物ですか」


 死んだ人間に悪魔が宿った存在を『魔人』と言うのなら、死んだ動物に悪魔が宿った存在を『魔物』と言います。

 先程埋めた猪も、状態が良かったら魔物になっていた可能性もあったという訳ですね。

 大抵が低級の悪魔なのであまり苦戦することはありませんが、それはあくまでわたし視点でのお話。普通の人間からすれば、人を簡単に殺せるほどに狂暴化した動物を相手にするようなものでしょう。

 もちろん魔法も使ってきます。低級でも悪魔が宿っていますから。


「それでも相手にしなければ時間が解決してくれるのでは」

「駄目だ。今でなければ」

「ですよねー」


 首を振って頑なになる女性に、わたしは小さくため息を漏らしました。

 魔物の命はなぜか長くありません。

 これは個人的な見解ですが、悪魔の依り代として人間は相性が良く、動物は悪いのです。

 人間には高い知性があるから悪魔の考えを思考できる。だから生きていける。でも動物には難しい。だから生きていけない。

 つまり放っておけばいずれは馬鹿だから勝手に死ぬ。──というのがわたしの意見。

 もちろん本当のところはわかりませんし、あまり興味もありません。


「でも約束は約束です。魔法に関する質問にはお答えしましょう」


 わたしがそう言うと、彼女は手の甲の模様を見せるように一礼してから言いました。


「魔法の使いかた聞いたとき、お前『無理だ』と言った。なぜだ。弔い合戦果たせれば死んだっていい!」


 存外よく喋る人ですね。嫌いじゃないです。

 ですが──


その程度の覚悟では(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)足りないからですよ(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)


 全くもって、これっぽっちも。

 女性はショックを受けたようにほんの僅かですが、項垂れました。


「……足りないのか」

「足りません。必要な覚悟はそのさらに先にあります」

「どういう意味だ」

死ぬのは大前提(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)と言っているんです。必要なのは、絶対に死なない(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)という覚悟です」


 死にたくないという想いを糧に、死ぬことによって得られる皮肉な力。それが魔法なのです。


「???」


 この方には少しややこしかったでしょうか。しきりに首を傾げています。

 簡潔に手順だけで伝えてみましょう。


「一度死んで魔人になってから、もう一度人間に戻ってください。そうすれば魔法が使えるようになっています」

「そんなことでいいのか」

「待っ──!」


 女性は舌を限界まで伸ばして、顎に力を入れたのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ