3話
突然現れた女性と少女。出血は止まっていますが頭や腕に外傷があり衰弱しています。さすがに放ってはおけません。
「──よし、これで良いでしょう」
拠点になんとか運んで、手持ちの物で応急処置を施しました。あとは安静にして様子を見ましょう。
二人とも赤みがかった褐色の肌をしていて、白っぽい塗料で顔や手の甲に独特な模様が描かれています。宝石があしらわれたブレスレットをしているのも特徴的でしょう。
部族かなにかでしょうか。この辺りが縄張りの。こういう人たちはなんと言いましたか……アマゾネス?
「それはさておき、目が覚めるまでにパッチテストを済ませておきましょうか」
先程集めてきた芋が食べられるかどうかを確かめる方法。それがパッチテストです。
まずは半分に折って、断面を手首に擦って15分ほど放置。毒性を持っているならかぶれてきます。つまり食べられません。
「……ダメですね」
わたしの白くてスベスベな肌が赤くかぶれてしまいました。とってもわかりやすくて助かります。
でも別の意味では助かりませんでした。食べられないし、パッチテストの説明もここまでになっちゃうし。最悪です。
「ぁ……ぅ……」
「おや、目が覚めましたか?」
芋を適当に放り投げると、女性が小さく息を漏らしてうっすらと目を開けました。奇麗な水色の瞳です。
あまり警戒されたくはないので、優しく笑いかけます。
「具合はいかがですか? 応急処置にもなっていない応急処置で申し訳ありません」
まだ状況を呑み込めていないのか、女性はきょろきょろと辺りを見回しています。それから隣で横たわる少女の寝顔を見て安心したように吐息を漏らしました。
「お前助けてくれたのか」
「ええ。急に現れたので驚きましたよ」
言うほど驚きはしませんでしたけど。
女性は模様が描かれた手の甲を見せるようにして一礼をしました。彼女が所属する部族なりの感謝のしるしといったところでしょうか。
「なにか礼したい。なにがいい」
「では一つ。見たところこの辺りの地理に詳しいとお見受けします」
「道案内か」
過去にも似たような経験があるのか、わたしのお願いしたいことをあっけなく察してくれました。
「はい。お願いできますか?」
「構わない。が、あとでいいか」
「その子ですよね」
「ああ」
まだ目覚める様子のない少女。もうしばらく安静にしておくべきでしょう。
大人しく目が覚めるまで待つとします。
誰かがそばにいてくれるって、とっても暖かくて心強いですね。
と、女性が自分の荷物をあさると、意外そうに瞳を大きくしてこちらを見つめてきました。
「なにも盗らなかったのか」
「私物はいりません。死物なら別ですが」
どや。
「???」
伝わりませんでした。ぴえん。