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23話

 魔人は苦しそうな悲鳴を撒き散らし、そして──


 身体から黒いモヤを吐き出して、ばたり、と仰向けに倒れていくのを慌てて支えました。黒いモヤは地面へと吸い込まれていきました。


「っ! 大丈夫ですか?!」


 返事はありません。意識を失っているようですが、奇跡的に息はあります。

 ──生きている。死んでない。

 上手くいった……のでしょうか。上手くいったんですよね、これ……? 信じてもいいのでしょうか。

 しばらく様子を見ます。もちろん魔教徒が逃げたフリして隙を突いてくる可能性もあるので周囲の警戒はまだ緩めるわけにはいきません。


「……ふぅ~~~……」


 そろそろ大丈夫でしょう。

 肺の空気を全て吐き出すほどに緊張を出し切って、体の強張りをほぐします。

 魔人から人間になる瞬間は初めて目の当たりにしました。これは貴重な経験です。

 自分が魔法使いになった瞬間も気を失っていたので、わたしも多分こんな感じで魔人から人間に戻ったのでしょうね。

 運が良かった。本当に運が良かった。

 でも運が良かったと少女が思ってくれるかどうかはまた別問題になります。意識が戻って、族長さんや部族が死んで生き残りは一人になってしまったこと、そして大切なものを奪っていく魔法の呪いのことを知ったとき、生きるのが辛くなってしまうかもしれません。


「魔教徒のことは気がかりですが……やはり今はこちらが最優先ですね」


 腕の中でぐったりとしている少女。木の根に貫かれたままの族長さん。そして集落にはまだ半分ほど弔っていない人たちが残されています。

 こちらの仕事をしっかりとこなさなければなりません。

 少女を抱え、族長さんの元へ。


「この子は無事です。あなたという存在があったから、戻って来られたのだと思います。相当好かれていたんですね」


 すやすやと、安らかな寝顔を浮かべる少女。こちらの苦労も知らないで、呑気なものです。


「弟子は取らないことにしているので、この樹海を出るまでは面倒を見てあげますが、それ以降は知りませんからね」


 面倒を押し付けられてしまいましたね。やれやれ。

 ──まあ、たまにはいいでしょう。

 わたしのことを『天使』と言ってくれたことに免じて、少しくらいは面倒を見てあげてもいいです。


「騒がしくなりそうな予感がしますね」


 はてさて、どうなることやら。




   ──終わり。

もうちょっとだけ続くんじゃよ。

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