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22話

 逃げた魔教徒は『どの程度使役できるのか実験をしていた』と言っていました。

 魔物が集落を一斉に襲ったり、生き残りがいるとわかって戻ってきたりと妙に賢い行動を取ったのは、魔教徒の命令があったからでしょう。


「────」


 低く唸り声をあげる少女。まるでゾンビのよう。可哀想に。

 少女に宿った悪魔はおそらく低級の悪魔。動物に宿る悪魔と同程度でしょう。どういう理屈か知りませんが、あの魔教徒が言うには悪趣味なナイフには悪魔を宿しやすくするだけでなく、悪魔を使役する能力も備わっているらしいですね。

 しかしそれもまだ(﹅﹅)低級止まりのようです。今後はどうなるかわかりません。


「おっと」


 魔人であるならば低級の悪魔とはいえ魔法を使えるはずですが、真っ直ぐに突っ込んできたのでウマ跳びで飛び越して躱しました。

 そのまま勢い余って巨木に激突して、根本からへし折ってしまいました。なんて馬鹿力。

 この魔人の魔法は自らの肉体を強化するようなものでしょう。特殊な魔法は厄介ですが弱点を突ければ脆かったりします。が、シンプルな魔法には穴が少なく、シンプルゆえの強さがあります。

 低級の悪魔だから簡単な魔法しか使えない、という可能性もありますが。


「低級の悪魔……試してみますか。少しだけ」


 少々危険な賭けですが、わたしには試してみたいことがありました。今回は絶好の機会とも言えます。


「マグさん……でしたっけ。そんな低級な悪魔なんて追い出してしまいなさい」


 正気を失った青い目を見つめてわたしは呼びかけました。

 そう。わたしが試そうとしていることは──蘇り。

 わたしと同じように魔人から人間に戻り、魔法使いとして生まれ変わること。

 きっと感謝はされないでしょう。

 これは小さな命を死なせたくないというわたしのエゴ。魔法の呪いのことを知ったら生きるのが辛くなることでしょう。

 ──それでも。

 それでも、あなたを死なせたくないからこの集落の人々はあなたも一緒に逃したのです。それはきっとあなたが愛されていたから。

 魔教徒の手にかかり、魔人に堕ちて散らしていい穢れた命ではないのです。


 だから──


「あなたを守って死んだ族長さんのためにも、生きなさい! 頑張って生きて生きて生き続けて、それから『頑張って生きたよ』って報告してあげてください! 族長さんもそれを望んでいるはずです!」


 普通の悪魔よりも弱い悪魔ならば、生き返る可能性もそれだけ高まっているはずです。

 あとは少女の気持ち次第。生きたい、死にたくないという想いが強ければ……!


「──ga」

「……! そうです、戻ってきてください!」


 明らかに違った反応を見せました。

 よろよろとおぼつかない足取りで魔人はこちらへ歩み寄ってきます。物凄い力で両腕を掴まれました。締め上げられる両腕が悲鳴を上げますが、少女の痛みに比べたらこんなもの、どうってことありません。


「──guaaa」

「さあ、早く戻ってきてください。族長さんにあとのことを頼まれたんです。それはあなたのことでもあるんですよ」

「──gaaaaaaaaa!!!!!!!!!」


 魔人は苦しそうな悲鳴を撒き散らし、そして──

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