表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

21話

 ──後ろを見ればわかる。

 魔教徒にそう言われて素直に後ろを確認する人なんてどこにもいないでしょう。適当なことを言っているに決まっています。後ろを確認したらその隙に逃げる算段なのはお見通しです。

 そう思ったのですが──


 ゾ ワ ッ


「っ?!」


 突如、背後から強烈な魔力(マギ)の高まりを感じました。本能の赴くままに横っ飛びで回避行動をとると、わたしが立っていた位置が爆音と共に陥没しました。


「あぁ~んおしぃ~! もうちょい気を引けばよかった!」


 視界の端で悔しがる魔教徒の姿。それよりもなにが起こったのか、なにに襲われたのか、のほうが重要です。

 その姿を確認して、わたしは自分の目を疑いました。自分の目を疑うなんて初めての経験です。


「────」

「……いくらなんでも早すぎはしませんか」


 そこにいたのは……魔人となった少女でした。

 奇麗な青い瞳を不気味に光らせて、自らの血で全身を染めた飢えた獣のように荒い呼吸を繰り返す人ならざる者。その身に悪魔を宿した破壊の権化。

 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている魔教徒を睨みつけます。


「ネタ切れだったのでは?」


 確か『伏兵を残しておけばよかった』と言っていたはずです。つまりもう手の内は残されていないと。


「そうだよぉ~? 魔物(﹅﹅)はね☆」


 舌を出し、下瞼を引き下げてあっかんべーをする魔教徒。そのまま後ずさるように距離を取っていきます。


「時間稼ぎよろ~。そんじゃまったね~☆」


 あっけなく、魔教徒は手を振りながら逃げていきました。本当は追ってでもすぐに殺してやりたいところですが、それよりもやるべきことがあります。

 わたしは葬儀屋。死んだ人を弔うことが仕事であり、魔教徒を討伐することは仕事に含まれません。そっちはついでのようなもの。

 魔教徒よりも魔人のほうが優先度が上です。


「少し考えが甘かったですね」


 これはわたし自身に対しての言葉。

 少女が魔教徒のナイフの毒に侵されて死んでしまったのならば、それは悪魔が宿りやすくなっているということ。少し考えればわかることじゃないですか。魔教徒からの情報収集に気を取られていました。


「助けてあげますからね。今すぐに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ