20話
気持ち悪い笑いを浮かべる魔教徒に速攻で圧縮魔法を発動させました。
「ちょちょちょ?! ちゃんと答えたじゃん?!」
「安心してください。みね打ちです」
「剣ですらないんですけど!?」
足元の地面に対して発動させたので当たっていません。噴きこぼれた怒りで一瞬本気で当てそうになってしまったのは秘密です。
答えられる質問であれば本当に答えてくれそうですね。
深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、次の質問を投げかけます。
「あなたは毒使いですね」
「……うわ、こっわ。逆に聞いていい? どうしてそう思ったわけ?」
「こちらが聞いているんです」
「ちょまっ! マジであぶいって!」
同じように足元の地面を抉りました。今度はより近くで。
その反応で正解だということはわかりました。ならば今回の件はいろいろと説明がつきます。
「確かにウチはいろんな毒を専門にしてるよ! これでいいでしょ!」
頬を膨らませてそっぽを向いてしまいした。魔教徒でなければ愛嬌があるくらいには思えたかもしれませんね。あり得ませんが。
「毒で動物を同時に大量虐殺することで綺麗な依代を一気に生産する、といったところですか」
「だったらなんだってわけぇ〜?」
「毒と言えば、この樹海に自生しているキノコ。あなたの仕業ですね」
「……正解。これ質問じゃなくて答え合わせになってね?」
わたしは優秀ですからね。どや。
少女はよく拾い食いをすると言っていました。そして不運にも魔教徒の息がかかった毒キノコを食してしまった。
出会った時点で、すでに手遅れだった。結果、死んでしまった。そういうことでしょう。
わたしが埋めた猪の死骸も、毒キノコを食してしまって、あの場で力尽きたのでしょう。
ですが腑に落ちない点もあります。
「悪魔はそう簡単に動物には宿らないはずです。なにかカラクリがあるのでは?」
「ようやく質問らしい質問キター! それはコレのおかげなんだなぁ〜」
掲げてみせたのは魔教徒なら全員持っている悪趣味なナイフ。他と比べて異様に刀身が短いのが気になっていました。
「魔教徒のナイフを使うと悪魔様が宿りやすくなるっていう加護がかけられてるってわけぇ〜!」
「それは加護ではなく呪いと言うのです」
うっとりとした表情で語る魔教徒に訂正しても無駄ですが、言わずにはいられませんでした。
悪魔を崇拝する魔教徒らしい呪いがかけられたナイフですね。
「あなたのナイフの刀身が短いのは?」
「研いだときの粉を毒に混ぜてるからだよぉ~」
それで魔物になりやすいというわけですか。いろいろと納得がいきますね。魔教徒と悪魔の出現には近いものを感じていましたが、やはり魔教徒の手引きによるものが多かったわけですか。
「魔教徒の規模は?」
「さぁ〜? 多すぎてわかんなぁ〜い」
「本拠地は?」
「さぁ〜? どこかにあるんじゃなぁ〜い?」
「構成は?」
「さぁ〜? ウチが下っ端ってことは確実ぅ〜」
やはり末端の者にはまともな情報は与えられていないようですね。使えない。
これ以上この魔教徒から有益な情報は得られないと判断しました。
「では最後に。──なぜそんなに余裕があるのですか? あなたの生殺与奪はわたしが握っているのに」
この問いに対し、魔教徒は「キヒィ」と不気味な笑みを浮かべて言いました。
「──後ろを見ればわかるかもよぉ〜?」




