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2話

 しばらくしてようやく見つけました。腐臭の出どころを。

 倒木の陰に猪が横たわっていたのです。かなり時間が経っているのかグズグズに崩れてキノコまで生えています。

 判別は難しいですが、見たところ他の動物に襲われたりしたわけではなさそうです。周囲に争った形跡はありませんし、死体を(むさぼ)った形跡も無いように見えます。


「下手するとわたしもこうなるというわけですね」


 これは大自然からの忠告であると受け取りました。あまり舐めてると樹海の養分にするぞ、と。

 わたし一人が養分になったところで大した変化は無さそうですが、バタフライ効果というものがあります。小さな変化が将来的に大きな変化になるというアレです。

 だからどうしたって話ですが。


「わたしもこんなところで死にたくはありません。この忠告はしかと心に刻みましょう」


 それからわたしは魔力(マギ)を操作して領域を地面に対して展開し、ゆっくりと握り拳を開いていきます。動きに連動するようにして領域が拡大し、ボフッと土が盛り上がって地面にすり鉢状の穴が生まれました。


「本当は有料なんですよ? 来世ではわたしに感謝しながら天寿を全うしてくださいね」


 その穴に猪の亡骸を埋めて手を合わせ、祈りを捧げました。


「ふぅ」


 一息ついたわたしは荷物をそばに置きました。

 ちょっと疲れたので、今日はもうここで野宿をするとしましょう。そろそろ暗くなってきそうです。腐臭とかもうどうでもいい。


「あの猪が綺麗な状態だったら美味しく頂けたかもしれませんね」


 蓄えておいた携帯食料は底を突いているので、わたしの思考はどうしても食べ物の方向へ(いざな)われていきます。


「そういえば猪は雑食。よく利く鼻でキノコや芋なんかを見つけるとか」


 畑が猪に荒らされる、なんていうのはよく聞く話ですよね。

 そして猪がこの場にいた。ということは。


「もしかしたら、この辺りにそういった物があるのかもしれません」


 淡い期待を抱いて焚き火のために薪を拾い集めつつ、草木をかき分けて大きなハート型の葉っぱを探してみます。芋は大体ハート型の葉っぱです。可愛いですよね。


「お。探せばあるものですね」


 ハート型の葉っぱを発見。芋をいくつか掘り出し、拠点へ持ち帰ります。

 あ、そうそう。先程からちらほら見かけていますが、キノコは基本的に食べないほうがいいです。ほとんどが毒持ちな上に栄養もありません。

 落ち葉などを綺麗に払ってから薪を組み、そっと手を添えて魔力(マギ)を集中。まもなく煙が上がり始め、すぐに火が着きました。

 便利な魔法には感謝です。


「さて、初めて見るものですね……」


 火のそばで芋を前に唸っていると、ガサガサと少し離れた位置から物音が。念のために確認してみると──


「おやおや」


 そこには少し年上くらいの女性と幼い少女が倒れていたのでした。

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