19話
数が増えようが所詮魔物は魔物。蟻が一匹から十匹に増えたところで片足で踏み潰せます。それがちょっとばかり大きくなっただけでしかありません。
「 全 力 全 開 ! 」
両手を広げ、魔力をわたしにできる限界まで高めて領域を広範囲に展開。全ての魔物が範囲内に収まりました。
「 最 大 出 力 ! 」
両脚で踏ん張り、両手を合わせるように握り込みます。とてつもない反発力にバチバチと魔力が可視化されて荒れ狂いますが、お構いなしに力技で領域を圧縮。
領域の範囲内にいた魔物は中央へ集まっていき、バキベキとけたたましい音を立てながら強制的に形を変えていき、最終的には手の平サイズの球体にまで圧縮してやりました。
巻き込まれた地面はすり鉢状にえぐれ、そこに川の水が一気に流れ込んでいきます。
「な……うそでしょぉ~? そんなのありぃ~?!」
球体になって足元に転がる魔物の塊を踏み潰し、泡を食って尻もちをつく魔教徒を見下します。
「あなたも巻き込んだつもりでしたが……運がいいのか、逃げ足が速いのか」
魔教徒はなにをしてくるかわりませんから、しっかりと警戒しながらゆっくりと近づきます。
「もう終わりですか? あなたのご自慢の魔物は? ネタ切れですか?」
周囲も警戒しますが、それらがいるような気配は感じられません。
「魔物はぶっちゃけネタ切れ~。伏兵残しておけばよかった☆」
舌をちろりと出して、全く後悔しているようには見えません。まだなにかあるに違いありません。
報奨金目当てで生かしたまま捕らえることは多々ありますが、ここは樹海のど真ん中。引き渡せる場所まで連れて行くのは現実的ではないでしょう。
早々に殺してしまうべきか。
「まてまて待って! ウチから話聞きたくなぁ〜い? そんな怖い目しないでよぉ〜」
どうやら殺気が態度からも漏れてしまっていたようです。慌てふためいて手を振り、後ずさっています。
魔教徒は多くの謎に包まれた組織。喋ってくれるなら貴重な情報源です。情報もお金になりますから、貴重な収入源とも言えましょう。
「魔教徒相手にわたしが容赦するとは思わないでください。変な動きをしたら即刻殺します」
「わかったから低い声出さないでよぉ〜、怖いなぁ〜もう」
魔教徒は立ち上がってお尻の汚れを払いました。若干ため息交じりで腰に手を当てました。
「んで~? ウチから聞きたいことなにかある~?」
魔教徒について聞き出したいことは沢山あります。ですがその前に一つ確認したいことがありました。
安易に近づくのは危険なので一定の距離を保ったまま、質問します。
「──少女を殺したのはあなたですね?」
その質問に、魔教徒はニヤリと口角を上げました。
「キヒッ、ばれたぁ~?」




