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17話

「どうしました?! 大丈夫ですか?!」


 わたしは少女へ駆け寄り顔色を窺いますが、血色が悪く目も充血して窪み、素人目に見ても身体に異常をきたしているとハッキリわかります。

 果たして、体調が急激にここまで悪化することがあるのでしょうか? これは明らかに普通ではありません。

 つい先程までは普通に見えたのに。


「ゴポッ……おぶぇ」


 黒い血塊を吐き出して、まともな呼吸すらままならない様子です。わたしは外傷の応急手当程度の知識しか持ち合わせていませんので、少女の身体になにが起こっているのか皆目見当もつきません。

 すでに目の焦点が合っていませんでした。


「はぁ、はぁ、ジル姉……? 白いお姉さん……? どこ……? 急に夜になったよ、真っ暗だよ」


 手を握っているのに、その手は壁を探すように彷徨っています。視覚にとどまらず感覚すらすでに失っているようです。


「わたしはここです。ここにいますよ」


 手を強く握ります。それでも少女の手はわたしの手を握り返してはくれませんでした。


「どこ……? どこなの……? ごほっ。苦しいよ……」

「まさか耳まで……」


 音すらも聞こえなくなってしまったようです。握る手からもどんどん体温が下がっているのがわかります。命の灯が小さくなり、自らの体を温められなくなってきています。


「ダメです、死んではいけません!」


 訳もわからないままに魔法を発動して、少女の体温を人肌に維持します。無駄だと分かっていながらも、悪あがきをせずにはいられませんでした。

 目、鼻、耳、口からダラダラと血が溢れてきました。


「生きてください! お願いですから……!」


 せめてあなただけでも生き残ってくれなければ、ここの部族(ひとたち)が二人をなんのために逃がそうとしたのかわからなくなってしまいます。

 どんどんと少女の身体から力が抜けていくのが伝わってきます。この世に抜け殻だけを残して、魂が世界に溶け始めていきます。


「手放してはいけません! 諦めてはいけません! どうか届いてください!」


 わたしのそんな願いを嘲笑(あざわら)うかのように、最後には少女の身体から力が完全に抜けてしまいました。

 地面に吸収されるかのように、少女の身体が一気に重くなったように感じて、わたしの手には虚しさだけが残されました。


「どうして……こんなことに」


 こうして、女性と少女の部族は──全滅しました。

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