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13話

 こちらはまだ仕事の途中だというのに、本当に悪魔は『空気を読む』ってことを知りませんね。ゆっくりする暇もありません。

 まあ正直な話、こうなるんじゃないかと予想はできていました。

 これだけ人を燃やして煙を立ち昇らせ、激臭を撒き散らしていればここに人が残っていると教えているようなものですから。


「お前は続けていろ」


 音の鳴るほうへ険しい表情を向けながら女性は言いました。


「……まさか『立ち向かう』なんて言いませんよね」

「立ち向かうさ。コンココンゼンを貫く」


 またそれですか。困難に立ち向かう、みたいな意味でもあるのでしょうか。それは無茶や無謀を通り越した、ただの自殺でしかないというのに。


「魔物の大群相手になにができるのですか? 死ぬだけです」

「葬儀屋。お前の仕事はなんだ」

「死んだ人を弔い、その魂を導くことです」


 唐突になんでしょう。素直に答えました。


「お前はお前の仕事をこなせ。ワタシはワタシの仕事をする。言っただろう、これは弔い合戦だと。お前は関係ない戦いだ」


 そう言うと女性は音のほうへ歩き始めます。勝ち目など無い戦いへ向かって。


「ワタシの家に地図がある。道案内の約束守れなくてすまない」


 ──あとは頼んだ。


 そんな声が、風に乗って届いたような気がしました。

 なるほどなるほど。

 わたしはそんな声など無視して、女性と肩を並べて歩きます。


「おい、ワタシの話聞いていたか? お前は仕事をしていろ」

「わかっています。これはその仕事のためにやるんです」


 わたしは矛盾に取り憑かれた美少女ですから、お金のために仕事は欲しいですが、命のために余計な仕事は増やさないで欲しいのです。

 死んだ人を弔うのが葬儀屋の仕事。生きている人を助けるのがわたしの仕事。この両方がわたしの中で混在しているのです。


「近所でどっかんばっかん騒がれていては、死んだお仲間さんが安らかに眠れないじゃないですか」

「……どうなっても知らないぞ」

「安心してください、魔物程度ではどうにもなりません。わたしよりもご自分の心配をしてください」


 そのまま音のほうへ歩き続けていると、幅はありますが歩いて渡れそうなほどの浅い川が現れました。その対岸に、大量の魔物がひしめき合っています。

 牙が異常に発達した猪の魔物たちでした。


「奴らに同胞が殺されたんだ……! 油断するビャ」


 ──黒い影が視界の端を掠めました。

 随分と可笑しな噛みかたをしましたね。


「──?」


 チラリと隣を見ると、女性の片腕がくるくると宙を舞っていました。

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