12話
作業は比較的スペースのある広場らしき場所で行いました。猪を埋めたときのように一人分の穴を掘って遺体を運び、焚き火のときと同じように遺体に手を添えて発火させ、遺骨を埋める。墓標を立てて宝石のブレスレットを供える流れをひたすらに続けます。
人の焼ける臭いはとうに慣れましたが、鼻が曲がりそうになるほどの激臭であることに変わりはありません。街の葬儀屋ならば焼却場が用意されているので臭いの問題は解決されているのですが、当然樹海にそんなものはありません。ダダ漏れです。
「ふぅ……これでようやく半分ほどですか。まだまだかかりそうですね」
凝った体をストレッチでほぐしながら改めて全体を眺めてみた素直な感想です。
一人一人を丁寧に弔っているのでどうしても時間がかかってしまいます。
猫の手も借りたい気分ですが、手を抜くわけにはいきませんし誰かに任せるわけにもいきません。丁寧に弔いつつ早急に仕事をこなすには、わたしの魔法が必要なのです。
気づけば夜が明けていました。
「葬儀屋」
この後の仕事の流れを脳内でイメージしていると、女性が戻ってきました。なんだか疲れたような表情を浮かべています。
「おかえりなさい。あの子は?」
「泣き疲れて眠った。ワタシの家で寝かせている」
ほとんどの家は倒壊しているのですが、女性の家は無事だったようです。よかったですね。
「あの歳でこの光景は荷が重いでしょう。無理もありません」
顔見知りが全員無惨な殺されかたをしていたら、精神が崩壊しても不思議はありません。少女の目が覚めたとき壊れていないことを祈るばかりです。
「なにか手伝えることはあるか」
「そうですね、ちょうど手伝ってほしいと思っていました」
「そうか、なにをすればいい」
「いえ、思っていただけです。そんな疲れ切った表情ではお仲間も心配してしまいますよ」
わたしに霊魂を見たり声を聴いたりする能力は備わっていませんのでなんとも言えませんが。二度も死んでいるんですけどね。
「だが、ワタシもなにかしてやりたい。同胞のために」
「では祈りを。あちらから順番に終わっているので」
それならば女性を休ませることができるでしょう。気は休まらなくても、少なくとも体の疲れを癒すことはできるはずです。
ここから先はもう魔人化を心配しなくていい程度に原形が無くなっている人ばかりなので、急ぐ必要はありません。
「……わかった。では──」
女性が言いかけて、それはとある爆音によってかき消されてしまいました。
まるで、巨木が折れてなぎ倒されるかのような。それも断続的に。
嫌な予感しかしませんね。
「もしかしなくてもですが」
「魔物が戻ってきたんだ……!」
ですよねー。




