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star road  作者: 亜來日六
Section1 R.start
3/3

part2

短いです。区切り的に仕方なく、ご愛嬌……


「ジリリリリリ」


一日の始まりを告げる目覚まし時計の音が、とある住宅街の木造建築の2階の部屋に鳴り響く。

その部屋には、朝を告げるように太陽の光が差し込んでいた。


「ぅ、うぅん……」


目覚ましが鳴っても、件の部屋に居る彼女は目を覚まさない。

何度か布団の上でゴロゴロしながら目覚ましをやり過ごそうとしている。


「あぁもう……うるさい!」


耐えきれなかったのか、勢い良く起き上がって目覚ましの音を止める。

そこでようやく起きたのかと思いきや、また布団に横になり二度寝を決め込もうとする。


「みちほーもう朝よー……そろそろ起きなさい」


しかしそれを許さまいと彼女の部屋に入り、慣れた手つきで彼女を覆う布団を取り払う、彼女の母。


彼女は市内の高校に通う二年生、尾道 みちほ。短く切りそろえられた髪は肩までもなく、切れ長パッチリ二重に、乳白色でシミ一つないお肌は、知らず知らずにみちほの女子人気に貢献している。男子人気ではなく、あくまで女子人気だ。

加えて女子にしては少しばかり身長が高く、そして胸も大きくないことから、陰では宝塚なんて呼ばれたりもしている。


………決してないわけじゃない、大きくないだけだ。大事なことだから。


「うぅん~……」

「今日も学校でしょ。早く起きて準備しないと遅刻するよ」


起きようとしないみちほに、みちほ母は半ば呆れたように溜息をもらす。


「もうちょっだけ……」


布団を取られても起きようとはしないみちほ。にへらと弛緩しきった表情で、枕に顔をうずめようとしている。


「そんなこと言ってまたギリギリになるんでしょ。いいから起きなさい!」


二度寝をさせた後の展開が目に見えているみちほ母。だからベッドからは離れようとしない。


「ん~分かったよぅ……」


観念したのか、半分目が開いていない状態で布団から起き上がるみちほ。

髪はぼさぼさで服もところどころ着崩れていて、はんぶん肩が出てしまっている。


「ご飯できとるから。降りてくるんよ」


ようやく起き上がったみちほを見て、みちほ母は部屋から出ていく。


もう朝か、今日もまた学校か……行きたくない、もう少し寝ていたい。でも下降りないと母さんが煩いし。


最近、なんだか寝ても寝ても眠気が取れない。授業中は先生の話が読経に聞こえて眠たくなるし、学校から家に帰ってきたらいつの間にか寝てしまっている。


これはもしや成長期なのかな?どことは言わないが、思いのほか育たなかった部分が、ここにきて発育してるのかな?


パジャマの胸元を覗くように服をつまんで引っ張てみる。


ダメ、なにも変わってない。なんならへこんでるまである。これ以上へこみようもないはずなのに。


もしかして私は性別を間違えて生まれてきたんじゃないか、と常々感じる。腕相撲だって、並大抵の男子相手なら勝てるし。


……あれ?思い返せば返すだけ、ますます女子に思えなくなってきた。

というか逆に私に女っぽいところってあるんだろうか?……………………うん、考えない方が、いい、かな。


軽くため息を一つこぼして、ベッドから立ち上がる。

面倒くさいけど、そろそろご飯食べないと、着替えるの間に合わないし、下降りよ。


部屋を出てとことこと階段を下りていく。そしてそのまま暖かい匂いのするリビングへと向かう。


「おはようみちほ」

「おはよ」


リビングに入れば、そこでは既に父さんが新聞を広げて朝ご飯を食べていた。

視線は新聞に向けられたままの挨拶に、私も適当に返して自分の椅子に座る。


「みちほ、弁当鞄に入れといたからね」

「ん~ありがと」


背中越しに洗い物をする母さんに、常套句になりつつあるお礼を返す。そしてそのまま目の前にあるコップを手に取る。


「っぷはぁ」


寝起きの牛乳は最高に美味い。マジ最高。牛乳の一番美味しい飲み方は?って聞かれたら、間違いなく寝起きだ。

それなのに誰も共感してくれない。父さんも母さんも、学校の友達も…………あ、そういえば


「あ、そだ。母さん、今日帰り遅くなるかも」

「何時頃?」

「ん~まだ分かんない」


忘れてた。そういえば今日、部活終わりに遊びに誘われてたんだった。

まぁ実際の所、遅くなるかもってだけで、そこまで遅くなるとは思ってないけど。


「まぁ時間が分かったら電話して」

「分かったぁ」


間延びした返事をして、バターの塗られたトーストにかじりつく。


家ではお決まりの朝食。バターの塗られたトーストに、目玉焼きとベーコンと牛乳。

決して洋食好きな家族の自覚はないが、何故か家では毎朝このメニューだ。


「早く食べて着替えないと学校遅れるよ」


のんびり口に含んだトーストを咀嚼していると、母さんはいそいそと手を拭きながら椅子に置いてあった鞄に手を伸ばす。


あの時間に起きてものんびり食べられないのだから、あれから二度寝をしていたらと考えると、母さんには頭が上がらないんだけど、それでもやっぱり私は明日もまた、同じように二度寝しようとするんだろうな。


「父さんもそろそろ会社でしょ?新聞もそのぐらいにして動かないと」

「うん」


同じように急かされる父さん。広げていた新聞をパタリパタリと折りたたんで、机の上に置く。

カッターシャツの第一ボタンを留めて、少し緩めてあったネクタイをキュッと締める。そのまま椅子から立ち上がれば「それじゃ行ってきます」と、上着のスーツを身に纏いリビングから出ていく。


流し目にそんな父を届けながら、「行ってらっしゃーい」と、尻すぼみに返事をする。


未だに私は、父さんがどんな仕事をしているのか知らない。別に知りたいと思ったこともないし特に気にもならないんだけど、土曜日も仕事に行ってて疲れないのかな?と、気にはなる。


まぁ気になってるだけで、心配してるわけじゃないんだけど。


フォークを目玉焼きの黄身の部分に突き刺す。そして垂れそうな黄身をこぼすまいと急いで口の中に放り込む。


「あんたも早く食べて着替えなさい」

「ふぁかっへるっへ」


飲み込む前に話しかけられ、咀嚼しながら返事をする。行儀が悪いのはご愛嬌。別に今にはじまったことじゃないし、母さんも今更なにも思ってないだろうし。


「行儀悪いよ。母さんもそろそろ仕事行くから、戸締りよろしくね」


と思ってたけど、違ったらしい。しっかり注意された。それも食い気味に。


「はーい」

今度は母さんが、リビングを出ていく。


次々と家から出ていき、ポツンと一人取り残されるみちほ。

ベーコンにフォークを突き立てる。


「……」


先程まで人気があり空気が暖かく感じたこの場所も、今は少し寂しく感じる。実際、部屋の温度も下がった気がする。


私もそろそろ準備するか………。


ベーコンを口に放り込み、パンを片手に自分の部屋に向かった。


お読みいただき、ありがとうございました。

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