part1
初投稿です。よろしくお願いいたします。
二酸化炭素や排気ガスに覆われ、変化することのない真っ黒な空。見える星など何一つない。
その代償なのか、22世紀後半、時代はついに科学に追いついた。
《進行可能になりました》
全自動四輪自動車に搭載されているAIが、抑揚のない音声で事実告知する。
僕の名前は寝屋川 優一。日本の高校に通う、只の高校一年生。今はその高校から全自動四輪自動車で帰宅中だ。
22世紀後半の現代では、全てにおいてAIの下に世界が回っている。日々の生活も学校も、大人達の仕事でさえも。
僕の相棒によれば、何十年前だかには有り得なかったことらしい。例えば、僕が今乗っている車に乗るには、適正年齢を超えた上で試験に合格してようやく、車に乗れていたらしい。しかも乗れたといっても、手動運転の車だとか。
でも僕が生まれたころには、既にそんな代物存在していなかったから、全自動でない車なんてもはや都市伝説に近い。
《優一様、お母様からお電話です》
現代的で電子的な音声が車内に流れる。
お母様、ねぇ…。いい予感はしないな。
「取らなくていい。家に帰って直接話す」
《かしこまりました》
着信が留守電に切り替わったのを確認して、一つ溜息をこぼす。
悪い予感がする。その理由の大部分は僕の研究室にあるのだが……
僕の研究室には、現代から過去に行くことのできる、時空間移動装置がある。
かの国民的な、青いネコ型ロボットが出てくる、所謂タイムマシーンが。
あると言っても僕が作ったものではない。そもそもの話、今日では時空間移動装置は製作はされていても、販売、使用することは世界条約機構において禁止されている。だから僕みたいな一高校生が持っていていい代物ではないわけだ。
そんな代物が僕の研究室にあるわけだから、家族はもちろんのこと、誰が見たって驚く。
まだ母上に見られていると決まったわけではないが、嫌な予感がする。
当たらなくていい感覚程当たるものだし、まぁ最悪の事態を想定して動くに越したことはないか。
重たい目つきで空を見上げる。
この車は屋根の当たる部分にスカイルーフがある。だから上を見上げてみれば、眼前には星一つない真っ黒な空が広がる。
この真っ黒な空にもまた、昔はLEDライトのように光り輝く粒体が存在していたらしい。史実などによれば、光り輝く粒体は´星´と呼ばれていたらしいが、見たことのない僕にとってみれば、その存在もまた都市伝説的なモノでしかない。
何十年も前の時代には当たり前だったのだろうか?夜空を見上げれば星があるということは。
「はぁ……」
史実上の話にとらわれ、無気力なまでに溜息をもらす。
今の時代に関係のないことを考えても仕方がない。僕が今考えるべきことは母上の電話の用件が何なのか、ってことだ。
「ルツ、なるべく早いルートで頼む」
《かしこまりました》
route2、略してルツ。僕をサポートしてくれるAIであり、今の僕の相棒だ。
僕の全ての交友関係を含めた上で、唯一と言っていいほど信頼している。まぁ僕が開発したってことが、理由としては多分にもあるんだけど……。
予定していたルートを変更して走るルツ。
しかしルートを変更しても空の風景は変わることなく、頭上にはいつもと同じ見慣れた真っ黒い空が広がっていた。
お読みいただき、ありがとうございました。