10話 大将の正体
「おいしい！」 「うまいな！」
「実はな、ここの大将…… 前に働いていた場所が凄いんだ！」
気になった、カイルは大将に尋ねてみる。
「どこで働いていたのですか？」
「王国の料理人をしておりました。」
「どうして、辞めてしまったのですか？」
「不満があったわけでは、無いんですけどね…… 一番は、ここの新鮮な魚に魅了させられた……というのが、理由ですね。 後は料理人として、気軽に食べて来て頂きたいという思いからでしょうか……今の皆さんのように……」
照れくささもあって話を変えたかったのか、今度は大将がカイル達に聞いてきた。
「お二人は、どちらに行かれるのですか？」
「僕たちは、王国に向けて旅をしているんです。」
「そうでしたか…… 何か目的でもあるのですか？」
カイルとタイロンは、顔を見合わせる。
もしかしたら、王国の情報を手に入れることが出来るかもしれないと思い、話してみることにする。
「王国の剣が盗まれてしまったのは、ご存知ですか？」
「はい、存じ上げております。 ……それが関係があると？」
「今から、話すことを信じて下さい…… 信じられないかもしれませんが、本当のことです！」
「わかりました……」
「僕が手伝いをしていた店に、剣を盗んだ人が来たんです。 様々な出来事があった後、剣を置いていったのです。 ……僕がその剣を返しに行くことになって、ここまで来たんです！」
大将は、くすっと笑う。
「私はこれでも、重役の人達とも接して来ました。態度や仕草、表情を見ればわかります。 あなたは、嘘を言っていない……信じましょう！ しかし、困りましたね……王国の人間は、あなたたちを信じてくれるでしょうか……」
「そうなんですよね……」
「私が王国にいた頃の情報で良ければ…… お教えしましょう！」
すると大将は、ペンと一枚の紙を持ってきて、大まかな見取り図のようなものを書いた。
「少しでも、お役に立てば良いのですが…… それと、王国の料理人に会うことがあれば、私の名前を出すのも良いかもしれません…… 知っている者もいるはずです！」
「ありがとうございます！ そういえば、大将の名前を聞いてませんでしたね……」
「これは、私としたことが…… クックです。改めて、よろしくお願いしますね！」
話を終えると、漁師の男が勘定をする。
店を出た後、2人はお礼を言うと、男は帰っていった。
タイロンと話す。
「そろそろ、出発するか？」
「そうだね！ 漁師の人にご馳走してもらったし、クックさんとも会えたし、行こうか！」
2人は、メレンポッドを後にした。
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