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第6話:世界最強の臆病者

 ある意味奇跡的な出会いをした美少女は、どこかに行ってしまった。

 気を取り直して困ったときは、空間ウィドウに頼ろう。

 まずは、戦闘手段を確保しなければ。先程のようになってはいけない。さっきのように裸の美少女が助けてくれるわけでもないしな。

 項目から「ステータス」を選択した。そこには、STRとかATKとかVITとかDEFとかINTとかRESとかDEXとAGI

とかLUKとかが書いてある。全くもって意味がわからない。3文字のアルファベットの横にはそれぞれ数値が振ってあるみたいだ。くそ……もっとしっかり幼い頃ファンタジーゲームとかやっておけばよかったよ。

 とりあえず、適当にAGIの数字を10000くらい振っておくか?

 俺は、空間ウィンドウ上でAGIを10000に修正した。

 いやいや、さすがにもっと考えた方がいい。カウンタがどのくらい減るかもまだわからないし、少しずつ均等に割り振るのが得策だろうな。




 ーそのときだった。




 ーガサガサ。




「ひいっ!?」


 背筋が一瞬で凍った。何このデジャブ感!

 

「あっ……」

  

 俺は何を血迷ったか。

 空間ウィンドウ上でAGIが10000になった画面のまま、草むらのガサガサにびっくりして「コンパイル」を押していた。




「……、やっちまった」

 



 カウンタが34になっていた。もうほとんど残ってないだと……。

 なぜ俺はこんなに失敗と恐怖のどん底に落とされなければならないんだよ!?


 待てよ。何が変わった?

 よく探せ。集中しろ東條奏多。

 最強の装備を身にまとっていたり聖剣を作り出したりしたわけでもないし、力もみなぎっているような感覚もない。

 



「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」




 まずい、さっきの緑色の巨体の魔物(オーク)が5体姿を現した。

 俺を追いかけてきた。まずい。

 さっきより2体多いよ!

 

「まずいまずいまずい、助けてくれさっきの美少女ー!」


 足がすくんでいたが、そんな場合ではない。俺は、必死に片足を持ち上げ、逃亡の一歩を踏み出そうとしたときだった。





 ーーえっ?

 




 まばたきをする間も与えず、俺は100mほど先にあったはずの大木に激突していた。





「いっ……てぇ……」

 



 一瞬だった。




 何が起こったのかの理解が追いつかない。

 とりあえず、逃げよう。魔物はもうすぐそこにやってきている。


 一歩、もう一歩と踏み出す。しかし、俺は、その一歩毎、景色が変わっていることに気づく。




 こ、これは……。

  

 



 ーー超高速で移動している!





 まさか、あのAGIって逃げ足的なやつだった!?

 それか、素早さなのか!?


 考えている場合ではない。逃げよう。逃げるんだ。


 



 ってあれ?




 

 もうオークは追ってきていない。


「逃げられたのか?」


 顔を上げれば、東西に限りなく広がっている100メートル級の巨大な壁の前に立っていた。

 これはデカすぎる。

 空間ウィンドウのマップを確認すると壁の中は最南端の王国であるサランヘーデル王国らしかった。

 というか入り口どこだよ。

 ここで、手にした最強の逃げ足を使って高速で壁を回った。


 ーあった!


 壁の入り口らしき場所に二人の門番の警備員が立っていた。全身に金属製の鎧を纏っていてなかなか強そうだ。

 



「待て」




 警備員は、槍を突き刺してきた。完全に不審者扱いされている。


「あのー、この中に入りたいんだが……」

「では、通行許可書を提示していただこうか」


 そんなものがあったんだ。しかし、そんなもの持っているわけない。

 それに、20年間のこの王国はこんなでかい壁なんかなかったはずだけど。

 何か凶悪な事件が起こってセキュリティがより頑丈になったのだろうか。

 しかし、どうやってこの窮地を乗り越えようか。そして俺が出した答えは。



「なくしました!」


 

 数秒の沈黙の後、警備員が口を開く。


「お帰り願う」

「そんなぁぁぁぁ!」

「通行許可書は、在籍の王国から正式に発行してもらうことになっている。不審者、貴様の在籍王国は?」

「うーん、ジャカルタ王国!」

「そんな王国はない。帰れ」

「うそぉ!?」


 なかったか、かなりの賭けだったけどさすがにインドネシアの首都が名前になっている王国なんてなかったか。


「いつまでそこに立ち止まっている!」

「ひい!?」


 俺は、最強の逃げ足で壁の西側を行くように高速で逃げた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 息が上がる。この高速移動に自分の体力がついていけてない証拠だ。それに、チート能力のカウンタはもう使い切ってしまったも同然だ。

 どうすればこのカウンタが増えるんだろうか。何かの条件があるのだろうか?

 それとももう一生増えないという可能性は……。いかんいかん、ここはプラス思考で。


 さて、どうやってこの壁を突破しよう?


 ん? 

 

 突破?


 何を考えているんだ俺は、突破じゃない……




 超えてしまえばいいじゃないか!




 そう、こんな壁越えることなんて容易かった。

 「使えるものは応用する」。その考え方は、工学医学の研究の世界で当たり前のことだ。

 高速移動で、駆けぬけよう。この壁を……!


「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアア!」


 俺は、無意味に士気を挙げた。


 ードン!


 地面を強く蹴る音とともに壁に向かって第一歩目を踏み出した。


「来たぁ!」


 気持ちいい。

 空を飛んでいる気分がこんなにも気持ちいいだなんて。

 俺は、光を余裕で凌駕する速さで壁を登り切った。


「って、あれ?」


 力や速さは大きければ大きいほどコントロールが難しくなる。




 ーー壁を超えすぎた。




 落ちる。

 上空100メートルだぞ。どうやって着地すればいい。

 壁をもう超え切って空中に投げ出されてしまった俺は、後戻りなんてすることができない。

 

 今まで俺を育ててきてくれてありがとうお母さんお父さん。




 ーさようなら。




 俺は、まるで宇宙から落ちてきた隕石の如く、かすかに熱をまといながら、地面に落下しようとしていた。

 落下先でも確認しようと俺は地面に目を向けた。




 ーまずい、人がいる!



 

 この世のものとは思えないほどの衝撃音と共に俺は落下した。

 



 なんと俺は、無事だった。



 

 落下した俺の下には5人ほどの男が下敷きになってくれたからか、痛みがかなり緩和されていた。

 こんな大きい音立てながら落下したんだ。街の人が騒ぎを嗅ぎつけて集まってくるに違いない。男たちにバレる前に早めに退散しよう。


「すまん、お前たち! 先行くぞ!」


 そう言い残して立ち去ろうとしたときだった。


「んんんんんんんんんんんんんんんん!」

「えっ?」


 俺は咄嗟に後ろを振り返った。


「なっ! なんだと!?」


 どこかで見たことがある。


 それどころの話ではない。


 つい10分前程に見たことがある。この顔を忘れるわけがないんだ。



 ーピンク髪の巨乳美少女!?

 

 

 美少女は、口をテープで覆われていて、鋼鉄の器具でその美貌な体を拘束されていた。

 これって襲っていいの? ここにきてラッキースケベイベント!?


「んんんんんんんんんんんんんんん!」


 美少女はテープ越しにさっきより大きい声を上げた。

 あれ? 怒ってない?


 仕方がない。とりあえずテープを外してやろう。





「貴様……。早くこの拘束具を外せ!」




 テープを外した瞬間、罵声を浴びせてきやがった。

 美少女はかなりお怒りのようです。

第6話を読んでいただきありがとうございました。

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