第1話:陰キャラの異世界転移
ー情報化社会。
情報技術の高度化によって、情報が中心となって機能していく社会。人が、情報を目にせず終わる1日は存在しない。人は、情報によって動かされている。情報こそが、真の支配者である。
人工知能もまた情報が核となって成立している革新的な最新の情報技術だ。人工知能が人間を超えるシンギュラリティが起こるのも時間の問題だ。
「だが、その人工知能を操る人間になれば真の真の支配者になり、真の真の支配者を支配する人間は真の真の真の支配者であり、真の真の真の支配者を支配する人間は真の真の真の・・・」
「奥の左隅に座っている学生、静かにしなさい」
ニヤニヤしながら妄想を膨らませていたら体外に漏れていたようだ。老人の教授に怒られた。
そういえば、今は大学の講義中だったんだ。
講義名はプログラミング言語論。プログラミング言語の歴史や仕組みを学ぶ講義だ。無論、天才の俺にとって、この講義は聴く必要もない。ただの単位獲得のための出席だ。
俺は超難関大学R大学に通う自称陰キャラ大学生東條奏多。ちなみに、21歳。自分の顔に5段階評価をつけるとすれば4といったところか。
そして俺には人が寄り付かない。暇があればプログラミングをしていて、プログラミングをしている俺は常に笑っている。笑ってしまう。プログラムは俺の世界であり、俺の自由に設計できる優越感に幸せが止まらない。
そう、俺に近づいてくる人間なんていないんだ。
1日の授業が終わったので、帰宅しよう。
*
暗いな。
いつの間に俺はこんなダークな世界に迷い込んでしまった?
誰かが後ろから「だーれだ」をやっているわけではないよな、だって陰キャラだもん。
ーいつまでもそこにいて満足か。
*
ゆ、ゆめだったか・・・。
いつから俺は夢見る乙女になった?
知らぬ間に一人暮らし用のボロアパートの一室で寝てしまっていたらしい。
というか、さっき、おじさんの声が聞こえたけどまさかあの教授か?そんなに俺が講義中にブツブツ言っていたのが気に食わなかったのか。これは、ヤツの呪いか?
単位落としたくないから後日謝りに行くか。俺は、天才プログラマー(になる予定)だ。こんなところで折れるわけにはいかない。
ー俺は世界を変え、世界を構築する人間になるんだ。
そう心の中で意気込んだときだった。
ーいつまでもそこにいて満足か。
さっきの声?
頭の中にさっき夢で聞こえていたおじさんの声が流れてきた。
ー!?
ーなんだこれは!
その刹那、俺の体を囲うようにして突如青白い光が現れた。光は、見たこともないような文字をしていて俺に刻々と迫ってくる。
「やっ、やめろーーーーー!」
*
ーバシャン!
冷たい。
川かなんかに落ちたかのような感覚。
耳を澄ませば人間のざわめきが聞こえる。
「アーチャーバーチャーヤーチャーヤ・・・!?」
「ヌモントゥヌフスバチンチン!?」
「キャングヌーキャングヌー・・・」
何を言っているか全くわからない。とりあえず、日本語ではないことは確かだ。
とりあえず目を開けてっと。
まず最初に確認できたのは雲一つない青空だった。さっきまで部屋にいた俺は第一の疑問点を見つけた。
次に確認できたのは、周囲の人間が俺を囲んでいるということだ。周りに人が寄り付かない陰キャラの俺は第二の疑問点を見つけた。
次に確認できたのは、俺が今何らかの中世の西洋風の街の中の噴水にちゃぷんしているということだ。水遊びなんかするわけがない陰キャラの俺は第三の疑問点を見つけた。
次に確認できたのは、俺が今全裸であるということだ。ここで第四の疑問て・・・ってあれ?これ公然猥褻じゃない!?どうなってんのこれ!?
「グニャンプスセヘントロフフフヤヤヤ!」
なんだ!?
鎧に身を包んだ五人の兵士らしきものが俺に槍を向けてきた。
「ちょっと待ってくれ!誤解だ!話せばわかる!」
腕がちぎれる勢いで全力で両手を挙げ、首を横に振りまくった。
ーここで死ぬわけにはいかない。俺は、天才プログラマーになり、俺は世界を変え、世界を構築する人間になるんだ!
「ヌフントロババクリヌスアチャンダーーー!サマクリスバムンヘ!」
兵士の一人が槍の太刀打ちの部分で俺の頭部を思いっきり殴ってきた。
ーどうやら俺は、牢獄に放り込まれたらしい。




