サヴァランとかリフの仲間達とか
「ついでにフィリオ氏を通して、クロップ老とも連絡を取らせてもらった」
まるでシルバの感想が伝わったかのように、カナリーは話を変えた。
「ほう、フィリオ氏ならば某やヒイロが行動を共にさせてもらっていたが、聞いておらぬな。しかして、如何な用事だったのだ?」
「決まってる。サヴァランの件だよ。キキョウ達には専門外の内容だからね。特に語るようなことでもないと判断したんじゃないかな。……というか、重甲冑に組み込んだギミックや、精霊炉の効率化について、話したいかい?」
カナリーが問うと、キキョウとヒイロはスッと目を逸らした。
「そもそも、爺さんはどう思ってるんだよ」
シルバの問いに、カナリーは短く「は」と笑って見せた。
「現状じゃ研究や改造もままならんし、データが取れるなら協力してもいいとさ。良くも悪くもあの爺さんは研究命だからね。そういう意味では重甲冑のギミックやサヴァランに関しても、さらなる戦力アップが見込めるだろう。それにタイランが甲冑から出た場合、あの甲冑のほったらかしも勿体ないだろう?」
「ということは、サヴァランを使うとして、普段は眠らせとくのか」
「……そこが迷う所でね。やはり何らかの義体を用意すべきかなぁと。けれど、『灼熱』には、『泉の瓢箪』にいて欲しいってのもあって僕一人の一存では決められないし、全員の意見が必要だろう。という訳でこれに関しては保留だね」
「その辺の話はちょうどさっきしてた所だ」
シルバの言葉に、タイランはコクンと頷いた。
「残る土産話と言えばそうだね。実家に帰った折、父上を一発殴ってやろうと思ったんだが、よく考えれば『今の』父上には殴られる心当たりがない。僕のこのやり場のない怒りはどこにぶつければいいんだろう」
「あー、クロス・フェリーの件の続きね……」
確かにノワの事件の半分は、クロスの問題だったといってもいい。
カナリーにしてみれば、巡り巡れば自分の父親に原因がある、ということなのだろう。
「もっとも、その父上は何やらまた、家を抜け出したようでね。会うことは出来なかったが」
不満げに、カナリーは赤ワインをグラスに足した。
「またて」
「……放浪癖があるんだ。そして、その先で女を作る。困った人なんだ」
「へー、吸血鬼の貴族って、なんかすごい椅子に座ってワイングラスとか膝に猫とか、そんな感じなんだけど。服はもちろん真っ黒なの」
ヒイロのイメージでは、そういうのがカナリーの父親のイメージであるらしい。
「……いやいや、あの父上に、そんなポーズは似合わないさ。まったくね」
「というかそれって、悪の首領じゃねえか……」
シルバの突っ込みに、海老やホタテの蒸し料理を頬張っていたリフが顔を上げる。
「に?」
そして仔虎状態に戻るベルトに視線を落とす。
「いやいや、真似しないから。カナリーも、俺の分のワイングラスを用意しようとするんじゃないっ!」
「残念だ。意外に似合うと思うのだがね」
引っ込めた分のグラスは、ヒイロが有り難く頂いていた。
「……司祭を何だと思ってるんだ」
シルバの問い詰めに、ふ、と神を信奉しないカナリーは笑う。
「神にだって色々いるだろう?」
「……生真面目な聖職者なら、ぶち切れてもおかしくない発言だなぁ、おい」
髪を掻きながら、シルバは特に怒りもせず、反対の席を向いた。
「で、リフの方は村の方どうだった?」
「に。みんなで温泉入った」
海老に海鮮ソースを塗りながら、リフが答える。
「あ、リフちゃんいいなー。ボクも行きたかったかも」
「に……向こうのみんな、キキョウとヒイロとタイランが元気にしてるか気にしてた」
「んんー、そっかぁ。じゃ、また今度稽古をつけてもらいにいかなくちゃね」
試したい技もあるし、とヒイロはリフから海老を分けてもらいながら言う。
「肝要なモンスター達の扱いはどうだったのだ?」
オムレツをライスで食べつつ、キキョウが問う。
「に。だいじょぶ。みんな、マルテンス村の方でお仕事手伝ってる」
「モンスター使いの登録も済ませた訳だけど、あんまり大きいモンスターは難しいよなぁ、リフ。連れて歩くなら、どんなモンスターがいいんだろうな」
一応六人パーティーとはいえ、カナリーの従者が二名、それにもしサヴァランを足すとすればこれでもう九人。結構な大所帯だ。
迷宮の通路の広さを考えると、一パーティーの人数は基本六人が理想とされている。大きいモンスターはかえって動きを妨げる可能性が高いのだ。
「に……それは、リビングマッドのダンから聞いてる。同族にリビングメタルいる」
「リビングメタル? ……動く金属?」
「に。リフよりお兄の為になる。ただ、数がすくないらしい」
何だか分からないが、リフには考えがあるようだ。
「ふぅん……じゃあそれを手に入れるのが、リフの次の目標かな」
「に。あとこれ」
リフは、壁に掛けたコートから細い銀管と小さな箱を取り出した。
シルバは、銀管の方を受け取った。
「煙管?」
「いざという時用。霊樹の葉を使う」
リフは、シルバの前に小さい箱の方も置いた。
霊樹の葉を煙管で燃やす……となると、シルバの頭に浮かんだのは、窒息や煙幕、誘惑の煙、稀に風系の魔法を使う一体のモンスターの名だった。
「……スモークレディ?」
「に」
「あ、そういえば、霊樹の件はどうなったんだい。僕が帰省している間に、第五層の件は進展あったのかな」
トマトスープをスプーンで掬いながら、カナリーがシルバに尋ねてきた。
「第五層は先日突破されたよ。表彰式が明日で、しばらくはお祭騒ぎじゃないのかな」
「霊樹の苗は、先輩の幼馴染みが魂吸い取っちゃったけど、その前に種だけいくらか残してたんだよ。それを回収して、育てたの」
霊樹が枯れた時、シルバが拾った粒がそれだった。
「ア、学習院で、フィリオさんとリフちゃんが……その、ある程度再生を……」
タイランが説明を付け加え、カナリーは納得したようだ。
ノワとの決戦前、第五層の冒険者ティム達から苗を頼まれた場には、カナリーもいたのだ。
「なるほどね。一応の義理は果たせてた訳か。しかし、そういうことなら僕も帰省を見合わせて、みんなで第五層突破戦に参加すればよかったかな」
残念そうなカナリーに、シルバは腕を組んで天井を見上げた。
「んんー、どうだろうなあ。何だかんだでノワ戦で結構疲れてたし、やめといて正解だったと思うぞ」
「けれど、様々な特典もあるんだろう? もったいないとは思わなかったのかい?」
「そりゃあるけどなー。ただ、歴代の突破者見てると、後々動きづらいんだよ」
「ふむ?」
カナリーの疑問には、アーミゼストにいる時間の長いキキョウが、答えた。
「階層突破ホルダーは、有名になる故、注目されやすい。よろしくない者に狙われることも多くなるというのだ。これまでの突破パーティーの中には、プレッシャーに負けて引退された者もいるという」
「なるほどね。確かに目立つのは……僕もこれ以上は、ねぇ? 何しろ全員、ある意味訳ありな訳だし?」
そういえば今のご時世、喫煙云々という話題もあるかもしれませんが、ここはそのままにさせて頂きます。
嗜好としての煙草ではなく、ガジェット的なモノだからという事情です。




