表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/215

望まぬ共闘

 倒れていたモンスターの何体かが起き上がり、リフの後ろについてきた。


「――!!」


 シルバとカナリーは、緊張に顔を強張らせた。


「大丈夫、死んだふりしてた味方」


 両手のハサミをシャキンシャキンと鳴らしながら横移動するのはカニ系の赤いモンスター、サムライクラブ。

 栗の頭と、頭から背中までを茶色いトゲ状の髪で覆われた二頭身のモンスター、イガグリ小僧。

 遅れてズルズルと地面を這ってきたのは、濃い泥状のモンスター、リビングマッド。

 その三体が、リフの後ろに控えていた。




 キキョウはウインドイタチを抜いた刃で迎撃した。


「く……っ!?」


 続くもう一匹の尾が作る鋭い刃で二の腕を傷つけられるが、傷は浅いようだ。


「キキョウさん!」


 そのウインドイタチの背後を突く形で、ヒイロが残る一匹に骨剣を振りかぶる。

 横殴りの一撃にウインドイタチは吹っ飛ぶが、壁をしっかりと四肢で受け止め、ダメージを和らげる。


 壁を壊してからここまで、ほんの数秒にも満たなかった。

 シルバとノワは距離を取ったまま、顔を見合わせる。

 一瞬で決断し、二人は同時に動き始めていた。


「ま、ほんのしばらくだけどね!」

「ええ!」


 ノワの脳が即座に弾き出したのは、この場に倒れているモンスター達から得られる成果。

 そして出口が遠いこと。

 ヴィクターが眠っていた研究室への扉は、シルバの背後にあるのでこれも無理。

 となると、やはり戦うしかない。

 ノワは霊樹に向かい、クロスは雷球を四つ生み出してからキキョウの支援に空を駆ける。


「……おれも、やる」


 重い足音を鳴らし、ヴィクターもノワを追う。




 シルバ達も動いていた。


「出だしから、いきなり計算が狂うし……対魔コーティングとは厄介なモン持ってるな」


 シルバは霊樹に、カナリーとリフは魔人に向かって駆け出す。


「だったら、直接攻撃だね。ヴァーミィ、セルシア! リフと一緒にまずあの魔人を一気に叩く!」


 低く空を駆るカナリーの足下から、赤と青の従者が出現した。


「にぃ……!」


 横から何本も襲ってくる霊樹の根を腕の刃で切断しながら、リフは大きく息を吸い込む魔人目指して先頭を突

っ走る。


「厄介な奴が来る前に、片をつけるぞ」


 すべては事が終わった後だ。

 その前に相手を出し抜く、という思考すら今は許されない。

 最優先事項は、まず自分達が生き残ることであり、選択肢は戦うか逃げるかの二択しかない。

 シルバには、元より逃げるという選択肢はなかった。




『ひとまず俺はいつも通り、みんなの支援に回る。霊樹は任せた』


 シルバはノワに念波を飛ばしながら、周囲を見渡した。

 左手に魔人、中央に霊樹、右手にウインドイタチ。

 中央がノワとヴィクターだけなので心許ないので、これを手伝うのは当然として、さて、右と左のどちらを兼任するか。

 即座に決断し、シルバは右に走り出す。


『ちょっと、シルバ君!? ノワとヴィクターの二人だけで、これ相手にしろっていうの!?』


 走るシルバの頭に、霊樹に向かって斧を振るうノワから返事が返ってきた。

 口で話すよりも遙かに意思伝達が早いのが、精神共有の利点でもある。少なくとも音よりは早い。


『それがきついから、先に周りのを倒すんだよ。かといって誰も霊樹を相手にしなかったら、好き勝手に暴れるだろ』

『……それって、ノワ達が囮ってことじゃない?』

『そうとも言うな』


 床から何本も突き出てきた木の根に襲われるノワの姿は、まさしく囮のそれであった。


「何、すぐに援軍を呼ぶからしばらくの辛抱だ。ほれ」


 言って、シルバは道具袋から瓶を放り投げた。

 ノワは木の根と、胴体から伸びてきた枝をやり過ごしながら、それをキャッチする。

 その中身を確かめ、ノワは怪訝な顔をした。

『……魔力回復薬(マナ・ポーション)?』

「お前だって技の一つや二つ持ってるだろ。だったら必要なはずだ。何、礼なんていらねーぞ」

「こ、これ、元々ノワのじゃない!」


 そう、それはカナリーの従者が回収した、ノワの所有していた魔力ポーションだった。


「だから、礼はいらないっつったの。とにかく最初から全力で倒しにいってくれ!」


 シルバは、ノワ達霊樹組と、クロス達ウインドイタチ組のちょうど真ん中に陣取った。

 一方、シルバに山のように文句が言いたくてしょうがないが、さすがにそれどころではないという風に、ノワは霊樹の根本に近付く。


「あーもー、しょうがないわね! いくよ、ヴィクター!」

「おう」


 ノワはその場で足を止め、大きく斧を振りかぶる。

 軽い衝撃が身体に伝わるのは、彼女を串刺しにしようとする木の根を、シルバの放った祝福『大盾(ラシルド)』がちゃんと防いでいる証拠だ。

 これなら、技に集中できる。


「ださいから嫌いなんだけどね……この際贅沢は言ってられないし――」


 気合いを上乗せした斧が唸りを上げる。


「キコリ撃ち!!」


 植物系のモンスター相手に有効な、斧技の一つだ。

 大きな刃が、深々と木の幹に突き刺さり、どこに声帯があるのか霊樹が苦悶の悲鳴を上げる。

 その隣で、踏み込んだヴィクターによって、地面が揺れる。


「ぬうん、たつまきけん」


 巨大なコークスクリュー・ブロウが同じく木の幹を叩き、霊樹が大きく揺れる。

 再び悲鳴が響き、空からは緑色の葉が落ちてくる。

 それを確かめ、シルバは印を切った。


「ノワ、ヴィクター、祝福飛ばすぞ」


 二人の身体を、魔力障壁が取り囲む。


「ぬう。なんだこれ」


 少し戸惑った声を上げるヴィクターに、シルバが背後から声を掛けた。

「『鉄壁(ウオウル)』。回復は任せるけど、基本は攻撃専念。防御は俺が担当する」

「のわさま、いいのか」

「あー、いいよいいよ、ヴィクター。こういう時のシルバ君は馬鹿正直に律儀だから、言うこと聞いてあげて」


 再び斧を振りかぶりながら、少し不機嫌な様子でノワが言う。

 霊樹は攻め方を変え、身体から蔓を放ってくる。

 その蔓がヴィクターの首や腕にまとわりついた。絞め殺す気だ。

 しかし、この程度の太さの蔓で、ヴィクターをどうこうすることは出来ない。


「わかった。おれ、こうげきする――もういっかい、たつまきけん」


 蔓を引きちぎりながら、二発目の拳が霊樹に軋みを上げさせた。


「……おっとろしいな、おい」


 それを眺めながら、シルバはあれが後で敵に回るのかと、ちょっとゾッとした。


『……ううう、私の身体、無事で済むのでしょうか』


 おそらく落とし穴から様子を伺っているタイランからの念話に、シルバは意識を向けた。

 通常会話の数倍の速度で、意思のやり取りを開始した。


『最悪、全部オーバーホールの必要があるかもな。……そして、またカナリーが、新しいギミックを組み込むと』

『お、お手柔らかにお願いします……何だかその内原型を留めなくなりそうで……』

『とにかく、タイランの出番はもうちょい後だ。力の性質上、今、戦う訳にもいかない。今は身体を休めておいてくれ』

『は、はい……』

 ひとまず今週乗り切ればリアルの状況が落ち着きますので、もう少々お待ちください。

 ……あと、これはこれでストレス展開の一種なんかなあ、とか読み返して思ったり。

 こちらの展開が少し続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ