バレットボアたちの弱点
すみません、盛大に寝過ごしました。
残りヒイロとキャノンボア戦は本日18時に更新させていただきます。
あ、ちゃんと今月本が出る予定です(寝過ごした原因)。
「に、陣形」
後方のバレットボアたちはスクラムを組み、また蠢き始めていた。
キキョウやタイランも攻めているのだが、盾役と突撃役の二種類のバレットボアの攻めに難儀していて、他の猪たちの動きを制することが出来ない。
その間にも、バレットボアたちの中で魔力が高まりつつあった。
『儀式魔術だね。一旦、距離を取るといい』
カナリーからの『透心』が飛んできた。
「倒さなくて、よいのか?」
『最終的には倒すさ。だけど、優先すべきは僕達がやられないことだろう? シルバがいないんだから、いつもほど無茶はできない』
「某は、それほど無茶はしておらぬつもりであるのだがな……」
呟きながらも、カナリーの忠告に従って、キキョウはバレットボアたちから距離を取り、守り重視の構えに切り替えた。
これだけ距離が空いていれば、迎撃も十分可能だろう。
木々の間を熱を持った風が流れ始め、それがバレットボアたちに集まっていく。
「にぅ……契約精霊のしょうかん」
同じく腰を落とし、いつでも動けるように構えていたリフが、呟いた。
「リフよ、今何と言った?」
「ぞくせいは火。対象は……じぶんたち自身」
ぼうっ……! とバレットボアたちが、赤い炎に包まれた。
マジであるか。
キキョウの顔が引きつった。
「……猪が、火を纏ったのだ」
『……自分から、焼き豚になったね』
「にぃ……あまり、おいしそうじゃない。それに、森がもえるの、や」
モース霊山育ちのリフは、山火事を心配しているようだった。
確かに、これだけ木の多い場所で火を放つのは、危険以外の何物でもない。
バレットボアたちは力を溜めている。
突進してくるか、それともまた前みたいに飛んでくるか。
けれど、リフが見切った分だけ、手を打つのはキキョウたちの方が早かった。
「タイラン!」
「はいっ、水属性の精霊砲いきます!!」
タイランが両腕を突き出し、両掌に仕込まれた噴出口から青い精霊砲が放たれた。
「ブフォッ!?」
炎をまとっていたバレットボアたちが、明らかに怯む。
そしてその隙ができれば、『アンノウン』の中でも速度に秀でた二人には充分。
跳躍し、枝と枝の間を駆け抜けたキキョウとリフが、儀式魔術を組んでいたバレットボアたちの真上に到達していた。
何体かのバレットボアたちが目を見開いていたが、手遅れだ。
「これで決まりなのである」
「に!」
着地したキキョウが刀を振るい、リフは頑丈な前衛バレットボアたちの背後を突いた。
「や、あああ……!」
そして正面からはタイラン。
理想的な挟撃だ。
程なく、周辺のバレットボアたちは、キキョウたちによって倒されることになった。
「こちらは揃って精霊には強いのである。カナリー、そちらは問題ないであるか?」
キキョウは広場を挟んだ対岸、雷撃魔術の光が時折迸っている森へと視線を向けた。
「……まったく問題ないよ。それに、弱点も見えてきたしね」
キキョウからの『透心』を受け、カナリーが応える。
森の中を、後ろ向きに高速飛行中である。
近接攻撃担当は、赤と青の従者二人。
追いかけてくるのは十数体のバレットボアたちだ。
追いついてきたバレットボアたちを迎撃し、時折カナリーが雷撃魔術でそれをサポートする。
バレットボアたちはキキョウたちの側と同じく赤い炎を纏っていたが、そろそろその恩恵も消えつつあった。
「どうやらこの子たち、一体一体の魔力は少ないようだ」
だからこその、儀式魔術でもあったのだろう。
身体の大きさに魔力量が比例する訳ではないが、今ヒイロと対峙しているキャノンボア以外は、魔術を連発できるほどの魔力は有していないようだった。
なのでカナリーの執った策は単純明快。
適度に挑発しながらバレットボアたちに魔術を無駄打ちさせ、かつスピードを調整しながら後退し、追いついてきたバレットボアはヴァーミィとセルシアが倒す、という方法だった。
そして、相手のスタミナが尽きそうになったのを見計らい、大規模な雷撃魔術で残りを殲滅した。
「決まり手は、時間稼ぎ。いまいち、華やかな勝利とは言いがたいね」
毛皮を焦し、引っ繰り返るバレットボアの群れを見、カナリーは首を振るのだった。




