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~ 能力別トレーニング 実践 ~

~能力別トレーニング 実践~


「No735、山城幹矢!!第三次実践トレーニング始めます!!!」


 起動したロボットが戦闘用の仮設フィールドを展開している。その広さ半径100mの円で、日によって変わる仮設パターンが今日は“森”で周りは木々に囲まれ、薄暗い。この仮説フィールドの中で傷を負ったり、最悪死んだりしても現実世界に戻れば仮設フィールドに戻る前の姿にしっかり戻っている。その分痛みがすごいのではあるが。その痛みで気絶する人もたまにいる程である。ロボットが生徒につけた傷やダメージはデータとして転送され教師に確認される。結果、居残りで教師と特訓するはめになる生徒も普通にいる。


これが“実践”である。


 生徒から嫌がられるのもわかるだろう。最悪のパターンは仮想フィールド内での“死”、からの居残りコースである。


 いつの間にかフィールドを展開し終えたロボットは話す。

「ダイサンジクンレンヲハジメル」

言い終えるとピストルの音が鳴る。これが開始の合図だ。


 地獄の訓練を受ける本人、山城幹矢はというと近くの木の太い枝を折り、右手に握る。長さは1mくらいのものだ。対するロボットはあっという間に姿を消し、幹也の視界からいなくなっていた。


「さぁ、今回はどんな規格外だ??」


この訓練は“能力者vs能力者”の仮想訓練であるため、当然ロボットは能力を使用する。これも日によって変わるため“実践”はロボットの能力を推測するところから始める人が多い。このリセット機能は本当に地獄を極める。


 幹矢がロボットをキョロキョロ探していると幹矢の死角から火の玉らしきものが飛んできた。悪寒を感じた幹矢は即座にしゃがんだ。死角からの攻撃に対して幹矢のこの反応は人ではないものを感じさせたが、ロボットの攻撃も負けてなく反射でしゃがんだ幹矢の頬をかすめた。

その攻撃の正体は火矢だった。木に刺さった火矢の方向からロボットの位置を瞬時に逆算した幹矢は木の陰に隠れる。本物の戦闘は一瞬の油断が死につながる。本来相手の位置探しに負けた幹矢は死んでいてもおかしくはない。幹矢にはとある過去の事情により“経験”が豊富である。つまり、あの悪寒おかんは運ではなく実力だったのだ。まあ傷は負ったけれども。

 

 だが死ぬという“0%”の可能性を反撃できる(相手の位置を正確にはつかめていない)“1%”にした実力はまぎれもなくすごいことだ。


 幹矢は脳を休憩させることなく動かす。この火矢から推測できる能力は〈エレメントの火属性〉と〈別の場所から火を転送してきたテレポート系〉と〈なんでもありの特殊系〉の3つである。この仮説はあらかじめ矢を持っていたという設定の元の仮説だ。


仮設の中で一番不安定な〈特殊系〉の仮説は例えばの話をすると、〈摩擦係数を操る〉などの能力であれば簡単に火を生み出せる。他にもいろいろな能力は考えられるが。

このように推測から特殊系は必ず外してはいけない。


幹矢は木の陰をうまく利用しながら、距離を縮める。その最中、かわしきれないものを右手に握る木の棒ではじく。


この行動から解決しておくことがもう一つ。木の棒<超速度の火矢ではなく木の棒>超速度の火矢であることの秘密だ。


この答えは幹矢の能力にある。


材質変化系ざいしつへんかけい  能力名 材質変化ざいしつへんか”という能力に。


(俺の能力は手のひらもしくは手の甲で触れている物を、過去に触れたことのある“異能の混じっていない純粋な物質”と同じものに形、見た目を変えずに材質だけ変化させる能力だ。あの時は木の枝を鉄の棒に変えていたから大丈夫だった。まぁ、質量は変化してしまううから当たる瞬間だけ変えたんだけど。)


 つまり正確にあの出来事を表すなら〈飛んできた火矢を木の枝の形をした鉄の棒ではじいた〉ということである。


 接近しながら幹矢は考えを張り巡らす。

 (相手はどの能力であろうとまぎれもない“遠距離型”。なら“近接型”の俺は不利だ。確実に距離を詰め一撃で沈める。そのためには…。)

 相手ロボットは幹矢に遠慮なしの猛攻をする。まさにその攻撃は、火矢の雨というほどに。だが幹矢も押されているばかりではない。

 

「そこっ、見えたぞ!!!」

ついにはロボットに触れられる数歩前まで近づいた。このトレーニング壊せば生徒は勝ちだ。幹矢はこの勝負、次に視界から消えたら負けと思っている。だから勝負に出た。完全にロボットのタイミングを外した幹矢は木の棒を構える。それをロボットは防ぎにかかる。しかし幹矢の戦略はその先を見越していた。

 

 (相手の能力を完全把握していない以上、熱で溶かされるパターンも考えられる。だから、この場合は…)


 気づけばロボットの周りは、幹矢との延長線上を除いて360度、宙を舞う木の枝に囲まれていた。そして鉄の棒を振り下ろすふりをして握っていた鉄の棒を捨て、空になった手をロボットにあてる。すると宙を舞っていた木の枝が一斉にロボットに刺さる。まるでハリセンボンのようだ。360度から刺さる木の枝は精密機器を完全に破壊した。


 「ネオジウム磁石」

と一言だけつぶやき息を整える。

 (俺の能力は手のひらから離れても2秒までなら効果を持つ。ばらまいた木の枝を鉄に変化させてばらまいたのちすぐにロボットを最強の磁石に変化させればあっという間に木の枝が鉄の矢に変化するというわけだ。まあ、森だから出来たことだなこれ…。)


 展開されたフィールドが倒壊していく。数多の生徒はこれが気持ちいいのである。完全勝利的な感じがいいのだろう。まあ、快感でおぼれたの後には刺激で目を覚ますことが必要。ここからが地獄。そのあとの痛みがすごいからだ。幹矢の今回の訓練で頬のかすり傷を負ったからそれだけの痛みがくる。

 「いっつつ、まあ、終わったからいいか。早くシャワー浴びるか。一番乗りみたいだけどみんな頑張ってね♪」

と聞こえないと知っていながら嫌味を残して立ち去る。


地獄を終えた戦士は、まるで背中に羽が生えたかのように軽そうな足取りで戦場を去る。


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