~ いつもの日常 ~
~ いつもの日常 ~
現国の授業が終わると、幹矢は廊下に出てきた鬼に叱られた後、教室に入ることを許可された。しびれた足をカバーするため壁に手をつきヨロヨロと教室に入る。こういう時は一番窓側、つまりドアから遠い自分の席を恨む。やっとの思いで席に着くと、うつぶせになって休憩する。窓際の席は陽射しがいい感じに当たって気持ちいい。少し夢にダイブしそうになったころに一人の少女が幹矢に話しかけてきた。
顔を上げるとそこには見知った顔があった。黒髪ロングで清楚な雰囲気をまとった彼女は幹矢を叱るように話しかける。
うん、相変わらずセーラー服が相変わらず似合っている。
「幹矢!!一回起こしたじゃん!!二度寝したでしょ!」
「んあ?あぁ雪菜か。うん、よくわかったね。」
「もぉ、私は今日は日直だって言ったじゃんか。幹矢のやりそうなことくらいわかるよ…」
「最近の朝は雪菜に甘えてばっかだったからね~。」
「ほんとだよ、まったく幹矢は私がいないと何もできないねっ。」
雪菜と呼ばれる少女は冗談を言う。
「そうだね、もう結婚してくれ!!このまま甘えさせてください!!」
「……」
「??雪菜さん??」
当の本人は幹矢の呼びかけが聞こえていない。真っ赤な顔を手で押さえて慌てふためいている。
「幹矢と結婚か…。子供のこととかもあるし…。」
もう手が付けられない。どう考えても冗談なのはわかるが、乙女というものはわからないものだ。
突然のプロポーズを本気で受け止める雪菜さんの目を覚まさせようと幹矢が肩をたたき、意識をこっちに向けさせる。
「ひゃう!!」
とすさまじい驚き方に逆にびっくりした幹矢は、落ち着いて状況を伝える。
「雪菜…冗談だよ…?」
というと雪菜のトマトのように赤かった頬はみるみる青ざめていく。少し黙った後。
「私で遊ぶなぁ!!!!!!」
といって寝起きの幹矢に痛烈なビンタを決めて廊下に向かった。
幹矢は頬を撫でながら次の時間割を確認する。
「あぁ、そうか次は“能別”の時間か。」
すると前の方から
「幹矢、俺らも移動教室だぞ。」
と一部始終見ていたのかクスクス笑いながら歩いてくるツンツン頭の少年いた。
「あぁ、白斗わかっているよ。」
【説明しておくと、さっきの少女の名前は“村雨 雪菜”この少年は“赤霧 白斗”といい三人は同居している。この3人の通うこの学校は少し特殊でいろんな地方からくる人がいるのだが3人は幼馴染で、学校が遠いということもあり3人同居しているのである。】
ということで幹矢と白斗は〈材1 トレーニングルーム〉と書かれている教室に入っていった。桔梗高校の生徒・教師は全員腕輪をしていて、教室の入り口にある機械にスキャンさせることで授業の出欠、開始を記録させている。
幹矢&白斗はスキャンを終わらせてロッカールームで体操服に着替える。着替えて教師を待つ間、幹矢は白斗に話しかけた。
「お前、今日なにすんの?」
「確か…実戦経験だった気がするわ」
「どんまい(笑)俺は…も実戦経験でした」
「まあ、お互い頑張ろうや。」
「白斗、お前は金〇がつぶされたことないからつらさがわからないんだよ。」
「あの悶絶姿は爆笑だったねwww」
「www、じゃねーんだよ!!」
と言い争っていると眼鏡をかけたインテリ系の男性が入ってきて
「はいはい、始めますよ。実戦の人は各々始めてください。座学は隣の部屋でやるので移動してください。はい、解散。」
【桔梗高校。表向きは普通の私立高だが、腕輪をつけた生徒や教師は桔梗高校の敷地内ならば“異能力”を使うことができる。一人一人違うのではあるのだが基本は以下の5つに分類される。
自らの身体能力の強化を行う 身体強化
物質の性質を変化させる 材質変化
A座標からB座標まで移動する テレポート
火・水・風・土そのものを操る エレメント
他に分類される珍しい能力 特殊
の5つである。
ちなみに“能別”と呼んでいた授業は「能力別トレーニング」という授業で、先ほどの5つの組に分かれての授業となる。幹矢と白斗は二人とも材質変化の部類に含まれているためにともに授業を受けているのだ。
それと実戦経験という授業内容は特別なロボットと本気でやりあうことを指していて、みんな嫌がっている。各々に合わせたレベル調節はしてあるのだがそれでも嫌なものは嫌だ。本気でやりあう以上、けがや死の寸前というのは避けられないコースではある。そのような生徒は保健室の先生の異能力「治癒」によって回復させてもらう。
“治癒” 完全に死んでいる者を除いて、生物のあらゆる傷を一瞬で治すことができる能力。特殊系に分類される。
】
そして山城幹也は準備ができたようで、ロボットの前で落ち着き構える。そして叫ぶ。
「No735、山城幹矢!! 第三次実践トレーニング始めます!!!」
叫びと共に人型ロボットが起動し、目の前の人間と戦闘を開始した。