プロローグ
プロローグ
9月の下旬、少し肌寒い空気が澄んでいるのがよくわかる朝に、朝日に照らされながら心に闇を抱えた少年が一人、駅のホームに息を切らして立っていた。
「遅刻だ…」
彼の名は山城幹矢。福岡県私立桔梗高等学校に通う一般高校生である。
まあ現在、彼は電車を見送り遅刻コース真っ最中なんだが。
汗のしみ込んだシャツに風があたり少し寒い。耐えしのぎながら待つこと数十分、次の電車が来て意味もないのに急いで乗り込む。それから揺られること30分ほどで最寄りの駅に着いた。
桔梗高等学校、通称キョーコーは駅から近いため生徒からは結構喜ばれている。幹矢は急いで上履きに履き替え、2階教室まで急いで駆け上がる。教室前でゆっくり忍び足に変え、タイミングをみはからい後ろの扉を開けて教室に入る。運のいいことに幹矢の席は一番後ろ、黒板から一番遠い。
(確か、1時間目は現国【現代国語】の時間。だから、あの若鬼婆の授業か…)
などと考えているとものすごいスピードで顔めがけてチョークが飛んできた。それを間一髪右手で受け止める。
(おいおい、今の200キロほど出てたぞ…殺す気かよ)
幹矢に若鬼婆と言われていた女教師は笑顔で質問する。
「山城幹矢君?何してるのかな?」
(もうおしまいだ、ここは正直に言うしかねえな)
「はい、この山城幹矢!!ドのつくレベルの遅刻をかましましたっ!!」
教室が笑いに包まれるが、幹矢と鬼の冷たい世界は冷める一方で対談は続く。
「じゃあ、ちょうどこの授業に合わせて反省の意を込めて一句どうぞ。」
教室のみんなは意外な顔をしていた。
(あの鬼婆がチャンスを!?)
「えっ!!」
死ぬと思っていた幹矢は必死に言葉の引き出しをあさる。そして、出てきたものを並べる。
「遅刻した
鬼教官の
餌食かな」
暖かかったクラスの雰囲気も冷徹な世界に飲み込まれる。
「山城幹矢、貴様廊下に正座してくださいね?」
笑顔とは時には安寧には残酷な武器にも変化する。幹矢は刃物を突き付けられたかのようにおとなしくなり静かに外に出る。
教室にいた時間 2分
「まあ、いいか。」
とつぶやき外の世界を眺める。正座しながらではあるが。
と彼の生活は怒涛のスタートを決めた。
だが一体どうして女教師は200キロ程のスピードで投げれた?
なぜ、幹矢はそれを傷なしで受け止めきれたんだ?