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桜の天使たち  作者: 氷雪杏
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桜の天使たち 3

 E・T高校の桜並木から、はらはらと花びらが散る。強い風が吹く、とその度に桜吹雪が起こる。幻想的な校門の景色とは対照的に、殺風景な裏庭では二人の影が揺れていた。

「こないの……」

 影の片方―少女は小刻みに震えながら、やっと言葉を吐き出した。

「自分で検査薬を試したら……陽性だった……」

 しばらく黙っていたもう一つの影―男性は、また面倒臭そうに溜め息をつく。

「堕ろせって言うつもりでしょ? でも私、自分の体を傷付けるの怖い!」

 涙目で少女は訴えた。だが、男性は鈍い反応しかしなかった。

「今は金が無いから、またその話は金が出来てからするから……」

 逃げるように裏庭を出てゆこうとする男性を少女は睨みつけるように凝視した。

「このまま逃げたら……私、あなたを許さない……」

 少女の言葉に、男は少し振り返ったが、何も言わずにそのまま裏庭を出てゆく。

 その場に残された少女は崩れるように座り込み、声をあげずに泣いた。校門から吹かれてきた桜の花びらが、少女をなぐさめるように肩にふわりと舞い降りた。

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