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桜の天使たち  作者: 氷雪杏
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桜の天使たち 16

 三人が音楽室前まで来ると、音楽室内からやけに騒がしい声が聞こえてきた。首を傾げて美和は扉を開ける。

 中では、茶子が半狂乱になっており、それを部長の勉をはじめ、数人が押さえ込んでいた。

「茶子ちゃん! 一体どうしたの?」

 美和は一団に駆け寄る。

「麩隙さん、友達の愛取さんがあんな事になってしまって、少し参ってるみたいなんだ」

 勉が茶子を押さえながらも顔だけ美和の方を向いて言う。

 美和は茶子の前までやってきた。

「茶子ちゃん……」

 茶子は涙を流しながら暴れていた。だが、目の前に来た美和に気付いたようだった。

「美和ちゃん、私が好子を殺しちゃったんだ! 私が居たのに好子は! 間に合わなかった!」

 部室の入口で、美咲とあさみが目を見開いて顔を合わせた。美和も少し驚いたが、なだめるようにゆっくりと茶子の頭を撫でる。

「落ち着いて茶子ちゃん、多分あなたのせいじゃない。とにかく今日はもうゆっくり休んで」

「そうだよ、卯野さんの言う通り、今日はもう休んだ方がいい。送っていくから、もう帰ろう?」

 勉もなだめにかかる。茶子はまだ少し興奮した様子だったが、やっと暴れるのを止め、素直に勉に連れられていった。



 勉と茶子を見送った美和は、唇に指を当てながら美咲とあさみの元にやってくる。

「さっきの茶子ちゃんの言葉、聞いた?」

「うん……ヅラの話と少し似てるね」

 元気なく美咲が言う。

「でも、ヅラの話には茶子ちゃんは出てこなかったわよね」

 髪をかきあげ、もう居なくなった茶子の歩いて行った方を眺めながらあさみが溜め息まじりで言った。

「そう。微妙に食い違いがある。少なくとも、茶子ちゃんは現場に居たんでしょうね」

 目を細め、美和は少し間を置いた。

「茶子ちゃんなら何か知ってるかも知れない」

「あの状態で今聞くのは酷じゃない?」

 あさみは腕を組む。

「明日、お見舞いに行ってみるわ。もし、落ち着いているようだったら聞いてみるつもり」

「ねぇ、私も一緒に行っていい? 私達、一年の時は好子ちゃんと仲良かったし」

 心配そうに美咲が言った。

「あ、じゃあ私も」

 あさみも話に乗ってきたので、美和は二人に指でマルを作りオッケーのサインを出した。美和としては、桂の証言はどうも納得できない何かがあったので、どうしても真実が知りたかった。

 ――校内に残っている生徒は、速やかに下校をして下さい――

 先ほどから同じ放送が何度も流れている。美和は肩をすくめた。

「さて、そろそろ帰りましょうか」

「雄一君に会わなくてもいいの?」

「ここには居ないから、多分強制下校してるんじゃないかな。上着はまた明日返す事にするわ」

 雄一と会えなかった事を残念に思ったが、美和はそれを表にださないよう、クールに装って見せた。

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