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泣かない女の子のヒミツ

作者: 全休

どんなことがあっても泣かない、不思議な女の子がいたんだ。


パパとママの仕事が遅くなって1人寂しく布団に入る時も、

悪ガキに意地悪された時も、

野良犬にお気に入りの服をビリビリに破かれた時も、

きらいなピーマンを食べる時も。


でも、ぼくは一度だけ見たことがあるんだ。あの子が泣いたのを。



それはみんなで公園で遊んでいた時のことだ。

夕方になって帰ろうと思った時、ベンチの上にくまのぬいぐるみが置いてあったんだ。

それはその女の子のぬいぐるみだった。

ぼくはそれを両腕にしっかり抱きかかえて、女の子の帰った道を走った。


すると、しばらく走っていたら、女の子が見えた。

こっちに走ってくる。きっと置いて忘れたことに気がついたんだろう。

でも様子がおかしい。


僕の前で立ち止まった女の子は、僕の腕の中にいるぬいぐるみを見て、ひどく失望した顔になった。

そしてあの泣かない女の子は、ついに泣いたんだ。それはあっさりと。

あとから話を聞くと、自分以外の腕の中でいつものように愛くるしく笑っているそいつを見ていたら、急に怒りや悲しみが湧き上がったんだって。




そう、女の子のそばには、いつもそいつがいた。

1人寂しく布団に入る時も、

悪ガキに意地悪された時も、

お気に入りの服が破れた時も、

嫌いなピーマンを食べる時も。

そいつはいつも彼女のうでのなかから、穏やかな笑顔を彼女に向けるんだ。

その顔をみてると、どこからか元気が湧いてくるんだって。

ぼくは彼女にそいつを返した。

彼女は依然として微笑みを崩さないそいつに、こう言った。



「この浮気者。あなたは私だけにほほえんでくれればいいの。わかった?」



その時の彼女のいたずらっぽい笑顔を忘れたことはない。

彼女はそいつに嫉妬して、そしてぼくもそいつに嫉妬した。

そいつは変わらず彼女の腕の中から笑顔を覗かせている。

余裕なやつだよ、まったく。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

感想どんどん書いてきてほしいです^_^

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