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いちが今向かっているところは、就職先を面倒見るといってくれた内原の元である。
18になれば施設をでなくてはならない。しかし、いちは頭が良い分けでもない。勉強は苦手というか嫌いであるし、運動神経おも特出しているわけでもない。
容姿も平凡であるし、人付き合いも得意でない。
しかし、好きなことはある。
お手伝いを長年してきたせいか、家事は好きだ。
そんなないない尽くしのいちだから、就職は難しく、バイト三昧になるのだろうとあきらめていた。
しかし。
「やあ、いち君。寒かっただろう。さ、入って入って」
こぢんまりとしたマンションのインターフォンを鳴らせば、ホンワカ雰囲気の内原が優しく迎え入れてくれた。
「こんにちは、よろしくお願いします」
「あはは、緊張しないで」
このホンワカおじさん内原は、バイト先の店主。ホンワカしているわりにやり手のようで、色々と手広く店を出しているらしい。
18で施設を出なくてはいけないし、施設の負担を減らしたかったいちは、小・中学校は新聞配達、そして高校に入り次第飲食店でのバイトを始めた。
バイト代は半分を施設の不足物資購入にこっそり回し、半分を貯金した。
本当はバイト代すべてを施設への恩返しに使いたかったのだが、今無理をして将来施設に迷惑をかけることは分かりきっていたので、現実を見据えて貯蓄した。
この内原は、バイト正社員関係なく働く意欲を知りたいようで、よく休みの合間に誰かしらに声を掛けていた。
いちもこの例に漏れず、内原とはよく話した。
ホンワカした内原はとても話しやすく、いちも楽しんで友人のように会話していた。
内原は友情か同情か哀れみかは不明であるが、18で施設を出なければならないいちに、良ければ職を紹介するといってくれたのだ。
チャンスを無駄にする気はない。
いちはすぐにお願いし、施設を出た今日、さっそくお邪魔する事になった。
勧められるままにお茶を頂き、
「あの…その、以前お話したとおり、得意分野がなくて。飲食店とかの裏方をやらせてもらったら」
「大丈夫だよ。いち君にぴったりなものがあるんだ」
内原はホンワカに加えニコニコと書類を出した。
「一応、ここに選んでおいたけど、もし問題があったら変更するから無理しないでね」
「あ、はい。ありがとうございます」
黄色のA4封筒。
中身は10数枚の書類。
「…結城家?」
「住み込みの家政夫、よろしくね」
内原はホンワカ、笑った。