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-Baby's breath-解決編上

解決編は少し長いので2回に分けて投稿することにしました。最終話は5月9日の夜に投稿します。

PM 4:40 @1-2教室


 教室には江戸川先生と土居さん、増田くんもまだ残っていた。どうやらうちの年間スケジュールを探してくれていたらしい。


「先生、年間スケジュールはたぶん出てこないと思います。」

 4人が一斉に俺の方を見つめる。全員、どうして?と言いたそうな表情だ。


「結論から言うと小テストを散乱させた原因は風です。」

「純、部室でも言ったけど窓は閉まってたんだよ。」

「ああ、でも最初は開いてたんだよ。これから説明する。」


 俺は教員用机まで歩いて行き横の窓を開けた。風向きが変わったのか、はたまた弱くなったのか、あまり風は入ってこない。


「これは想像ですけど、おそらく掃除当番が開けた窓を締めるのを忘れていたんでしょう。先生が教室を出て行かれるときに窓は閉まっていましたか?」

 この質問はちょっとした賭けだ。ここで閉まっていたと明言されるとまずい。


「んー、意識してないんでよく覚えていないな。そもそも教室を出たのは俺が最後じゃないから、そのとき閉まっていても誰かが開けたのかもしれない。」

 期待通りの答えに俺はほっと胸をなでおろした。いや、後半はむしろ期待以上だ。


「つまり、掃除が終わった後の誰もいない教室で、教員机横の窓はこのように開いた状態になっていたんです。そこへ風が流れこんできて、小テストが散乱した。その証拠に、気づかれたとは思いますが小テストの上には小さな砂粒がついていました。今日は黄砂の量が多いみたいなので、その砂粒でしょう。」

 これで風が直接的な原因だということには全員納得したようである。


「でも純、土居さんがこの現場を発見したとき、どうして窓は閉まってたの?」

 そう、これが今回の件で最も大きな謎だ。


「窓は勝手には閉まらない。この窓を閉めたやつがいるんだよ。そして、そいつは窓だけ閉めて散乱した小テストには目もくれず教室を後にしたんだ。」

「誰なの、それは?」

 玲が身を乗り出してきた。表情からして好奇心にあふれている。


「分からん。」

 玲はもちろんのこと、他の2人もきつねにつままれたような顔をした。多かれ少なかれ誰がやったのか関心はあったようだ。


「誰がやったのかは分からないけど、おそらくこのクラスの誰かだろう。」

 視線が増田くんへと集まる。


「ぼ、僕じゃないですよ。美術部の先輩に聞いてもらえればアリバイはありますし。それに、なぜその人は窓だけ閉めたんでしょうか。窓を閉めたら普通床に散乱している小テストも拾うような気がするんですけど。」

「そう、普通は拾う。でも、窓を閉めたやつには散乱した小テストを拾う時間がなかったんだよ。」

 

 さて、ここからうまく収束させられるか。

「俺たちはこんなところでのんびりしているが、今は部活動の時間だ。だから、この教室あるいは廊下まで来るのは部活動を一時的に抜け出してということになる。まあ、もしかしたら私用ではなく、部活動の一環でここを通ることもあるかもしれない。どちらにせよ、1年生の心理としては『戻ってくるのが遅い』と上級生に思われたくはないはずだ。」


「確かに、僕も美術部に入りたての今の時期に遅刻とかはしたくないですね。」

 当の1年生から納得が得られた。これでもう大丈夫だ。


「そうだろ。その1年生は早く部活動に戻りたかった。でも、これ以上紙が散乱するのを放置しておくのも気が引けた。だから妥協案として窓だけ閉めて、教室を後にしたんだよ。」

「なるほどな、確かに楠川の推理で全て説明がつく。」

 

 江戸川先生に納得してもらえた。土居さんにもこの説明で納得してもらえるだろう。玲を見るとなんだか悔しそうな様子だ。まああれだけ推理小説好きを公言しておきながら俺に先を越されるの面白くないだろう。ただ、玲の『事件』という直感は概ね正しかったことになる。


「純、それで私たちの年間スケジュールはどこ?」

「ああ、部室からここに来るときに廊下を注意深く見たけどなかったし、教室にないならおそらく廊下の窓から外に飛ばされたんだろ。」




PM 5:10 @文芸部室


 隣では玲がぶつくさ言いながら年間スケジュールを書いている。5時をまわると、いつもなら西日が部室に差し込んでくる頃だが、先ほど降りだした雨で部室内は薄暗い。そろそろかなと思い、俺は席を立つ。


「ん?どこ行くの?」

「ちょっと野暮用。10分くらいで戻ってくる。」

 そう、ちょっと事件の真相を確かめに行くだけだ。


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