表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/27

13話:背後の青空

「教えて下さい、私が誰なのか」

 それは兵衛の望みに適う言葉のはずだったのに、彼が感じたのは喜びとは遥かに異なる気持ちだった。

 古刹に過去を思い出してもらえば、何かが救われると漠然と思っていた。

しかし、それは間違っている。

 加害者側ならまだしも、あの惨劇を自分と同じところから見た古刹に思い出させることに意味はあるのか。

 もう自分たちは解放されない。

 現状を変えられないのに、他人を穴に引きずり込み『同類』を増やす意味は何なのか。

 不意に扉の向こうに焦点があった。窓のない廊下には、仄暗い空気が溜まっていた。

 それに気づいたとき、何かが萎んでいくような気がした。

 すぐ背後にいる古刹ではなく、扉の外にいる薄闇を近くに感じた。

「思い出すことと聞いて知ることは、結果が同じようで全く違います」

 自分でも、口にした後にその言葉の意味を考えた。ああ、彼女を引き離すための言葉かと、淡泊な答えが浮かんだ。

 思い出すことは、そんなに簡単ではない。それでも自分は彼女を責めるのかと、また苦々しい気持ちが舞い戻ってきた。

 そんなとき、背後からぽつりと声がかかった。

「ごめんなさい」

 振り返って目に入った古刹は、背中に抜けるような青空を背負っていた。

 真っすぐこちらを見つめる古刹に、沢山の人々の姿が重なり――兵衛は息を詰めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ