【傘は三回、姿を変えた】
アルバム『産声』の中でも、この曲は少し静かです。
最初はただの“いい歌だな”で終わりそうになるんですけど、
よく聴くと、この曲はずっと同じものを描いています。
「傘」の変化です。
しかもその傘、三回姿を変える。
必要だった傘、折れ曲がった傘、そして自ら畳む傘。
その変化が、そのまま心の変化になっている曲だと思います。
雨が上がった朝
雨が上がった朝
濡れたアスファルトが
太陽の熱を浴びて
水蒸気が立ち昇る
雨上がりの朝って、独特の匂いがありますよね。
アスファルトが蒸れて、少し湿っていて、でもどこか清々しい。
なんとなく、鼻歌でも歌いたくなるような空気。
道ゆく人は傘を閉じ歩いてく
ここでは、傘はただの“役目を終えた道具”です。
雨が止んだから、閉じる。
それだけのこと。
でも、雨は終わっていない
袖の下で交わされた約束に
世界は操られて動いてる
ここで一気に空気が変わります。
さっきまでの清々しさのすぐ隣に、これがある。
理不尽なものって、天気みたいに簡単には晴れてくれない。
ニュースを見て、ため息をついて、分かってるけど何もできなくて画面を閉じる夜。
ああいうの、ありますよね。
だから、こう思ってしまう。
「頼れるのは自分だけだ」って。
折れ曲がった傘
頑なにそう思ってた
折れ曲がった Umbrella
隣にいた君は
冷たい雨を避けれずに濡れていた
ここで、傘が変わる。
自分を守るための傘。
でもそれは、自分しか守らない傘だった。
その結果、隣にいた「君」が濡れていた。
これ、分かってるけどやっちゃうやつだと思うんです。
自分のことで精一杯で、気づいたら誰かを置いてきてる。
守ったつもりで、守れていない。
そのとき、傘はもう“役に立っていない”。
だから折れ曲がる。
畳む、という選択
開いていた Umbrella
静かに畳んだら
最後も同じ動作です。
傘を閉じる。
でも、最初とは意味がまったく違う。
最初は、雨が止んだから畳んだ。
最後は
自分だけを守ることをやめるために畳んだ。
もう遠くの御空は
僕らに手招きしている
ここで、「僕」が「僕ら」になる。
ひとりで閉じこもるのをやめて、誰かと同じ空を見ることを選ぶ。
やっていることはすごく小さい。
でもこれ、分かっててもなかなかできないやつです。
おわりに
この曲がやっているのは、すごくシンプルなことだと思います。
「ひとりで守るのをやめる」こと。
それだけ。
でも、その“それだけ”が一番難しい。




