流れ星は一人でやってきたのか?
「にわかには信じ難い話だが、あんな物見せられちゃな。蓮はドッキリとかするタイプでもないし」
事情を聞いた陽太の反応は意外にもあっさりとしたものだった。
逃亡中の宇宙人だなんて馬鹿げた話を聞けば、もっと大袈裟に驚いたり疑ったりするものだと思っていたが、すんなり受け入れるものだから、逆にこちらが驚かされた。
「事情はわかった……ただ、1つだけ言わせてくれ」
陽太が不機嫌そうに言うものだから「何?」と尋ねた声が自然と強張ってしまった。
「どうして俺に嘘なんてついた。人を頼るなら、ちゃんと信頼しろよ」
もっともな意見に、俺は陽太の目を真っ直ぐに見ることはできなかった。
「悪い、お前が重大な秘密を言いふらすような奴だと思ってるわけじゃない。ただ、話せばお前も巻き込むかもしれないから……」
自分でも支離滅裂なことを言っているのは分かっている。
ステラの素性を明かすか否かに関係なく、ステラに会わせ、協力を頼んだ時点で、陽太を巻き込んでいるのには変わりはない。
そもそも協力を求めるのであれば、ステラの素性は明かした方が何かと都合が良いのだ。嘘なんていつバレるかわからない。いつ崩れるかわからない関係を続けるよりは、最初から全て明かすべきだ。
結局のところ、俺は陽太を頼りながらも、完全に信用しきることはできなかったのかもしれない。
「まあ、気軽に話せる内容じゃないのは確かだし、お前の気持ちはわかる。ただ、これからはちゃんと信頼してくれよ。俺のできることならなんでも協力するからさ」
陽太は俺の言い訳に対してまだ何か言いたそうだったが、これ以上空気を悪くしないように気を遣ったのか、話を切り上げた。
そういった気遣いのできる点で、陽太は俺より大人だ。
「それじゃあ、今度はステラちゃんに質問していい?」
陽太から突然話しかけられたステラは、ビクリと体を震わせたが、口ぶりだけは偉そうに「なんだ?」と尋ねた。
「ステラちゃんはこの星にいつからいるの?」
単純な疑問だが、俺もまだ聞いていないことだった。
「ワタシがこの星にやって来たのは、だいたい10年前らしい」
ステラの判然としない回答に、俺は「らしい?」と聞き返した。
俺の反応を見て陽太は「お前も知らないのかよ」と呆れ気味に呟いた。
俺が先にステラに会ったのにもかかわらず、何も知らないのが恥ずかしくなった。
「覚えていないのだ。その頃はまだ小さかったから。キリヤは10年前にこの星にやって来た赤ん坊のワタシを拾ったと言った」
10年前……ステラの外見は15歳くらいの歳に見えるから、5歳くらいで地球にやって来たことになるが、それだと赤ん坊という表現には違和感があるし、記憶が全くないというのも違和感がある。
だが、それはあくまで地球人の成長スピードで考えた場合だ。もしかするとステラは地球人よりも成長の早い種族で、10年前にはまだ本当に赤ん坊だったのかもしれない。
「じゃあ、どんな乗り物で地球に来たのかも知らないの? あと他に仲間は?」
陽太の質問にステラは首を横に振った。
「分からない。ワタシは地球に来たときのことや、その前のことについては何も知らないし、キリヤは教えなかった」
ステラは悲しげな表情を浮かべた。
「でも、きっとステラちゃんには仲間がいると思うよ」
陽太の発言にステラは「え?」と呟いた。
「ステラちゃんは、この星に来たとき赤ちゃんだったんだよね? それなら自力で地球に来たわけじゃないだろうし、親や仲間と一緒に来たんじゃないか?」
陽太の説は一理ある。
宇宙人がなぜ地球にやって来たのかは分からないが、赤ん坊を一人で別の星に送るとは考え難い。実はステラには仲間がいて、今もステラを探していたり、あるいはどこかに捕えられているのかもしれない。
ひょっとしたら、仲間がいるという希望が反抗の意思を芽生えさせるのではないかと懸念して、天王寺はステラに事実を隠したのかもしれない。
「そんなら、俺たちはステラちゃんの仲間を探すべきなんじゃないか? ステラちゃんだって本当の家族に会いたいだろ?」
「ワタシの家族……」
陽太は人の心に響く言葉を探すのが上手い。まだ出会って1時間も経っていない少女、それも宇宙人の少女が何を求めているのかを既に理解していて、欲しい言葉を与えている。
「でも、まだ仲間がいると決まったわけじゃないだろ?」
俺を抜きにしてステラと話を進めようとしている陽太を遮った。
陽太の言い分は理解できるが、話が飛躍し過ぎているような気がする。仲間探しより先にやるべきことがあるのではないだろうか。
「結果が出るとは限らないけど、探してみる価値はあるんじゃないか?」
「探すったって、手掛かりが……」
「10年前って情報があるし、ちょいとリスクはあるけど天王寺製薬の周りから調べることだってできる。手掛かりゼロってわけではないだろ?」
「どうせ徒労に終わると決まってる。素人が軽く調べるだけで見つかるなら、宇宙人の存在なんてとっくに公になってるだろ」
「じゃあ他になにができんだよ」
ステラの里親探しを優先する提案を口に出そうとして、喉元で抑えた。
ここでそんな提案をしてしまえば、ステラをさっさと追い出したいと考えていると思われる。ステラが宇宙人だということを隠して信頼を失いかけたばかりで、あまり悪い印象を持たれたくなかったし、どうやらステラも仲間探しに乗り気なように見える。
「わかった。まずは10年前のUFOの目撃情報でも探ってみよう」
「よし、決まりだ! ステラちゃんもそれで良いよね?」
「ああ、良いぞ!」
ステラは満面の笑顔で答えた。
俺も薄い笑みで返したが、どこか胸につっかえるような感覚があった。