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VI


◆◇◆◇


 空が茜色の夕日に染まってきた頃、街には疲労困憊で肩で息をしながら歩いてゆく二人の姿があった。


 彼女に振り回され、飛鳥は大学と街で一日中、ナンパをさせられた。


 ちなみに女子たちには、飛鳥以上にサハリエルが人気があった。


 美人で高飛車、時々古風な言葉を使う彼女のキャラは、意外にも女性受けが良いようだ。


 最も当の彼女は、すっかりと疲弊しているが。


「今時の女子(おなご)は、いつもあんなに元気なの……?」


「あはは……女の子は、可愛いものが好きですから」


「それは私のことを言ってるのかしら……。まぁいいわ、連絡先を交換した中に気になった女子(おなご)は居た? こういうのは、待たせない方が良いわ。早めに好意を示して……」


 その時、儚げな旋律が二人の耳朶を打った――。


 二人が視線を向けた先では、路上ライブが行われていた。


 飛鳥と同年代の男女混成のロックバンドで、集まってる人の数を見ると結構な人気のようだ。


 中央に立つのは、白金色(プラチナブロンド)の長髪と、淡青色(アイスブルー)の瞳を持つ愛らしい顔立ちの女性だ。

 

 

〝降りしきる雪に涙を隠して


 押し殺したこの想いは冷たい大地へ


 あの教会の鐘楼に登ろう


 日付が変わると同時に私は鐘を鳴らす


 あなたへの想いは今日へと置いてゆく


 それでも朝が()れば、雪が溶ければ


 甦る、この鼓動(おもい)


 今、私の胸に溢れるのは、君がくれた暖かさ(たからもの)


 溶けない雪がないように、この愛も消えないから 〟



 歌が終わり、女性を中心にメンバーが頭を下げれば、耳が張り裂けんばかりの拍手が響く。


 気がつけば、聴衆もかなり増えている。


 そして女性の声に聴き惚れていたのは飛鳥も同じだった。


 隣でサハリエルが意味深な笑みを浮かべた気がしたが、今は気にしない。


 この音楽の余韻に浸っていたかったから。


 ライブ後はメンバーとファンの交流時間が設けられた。


 この距離感の近さが、路上ライブの良さだろう。


 その場に立ち尽くしていると、ボーカルの女性が飛鳥達の姿を目に止める。


「二人は初めてだね、来てくれて……って宇佐美飛鳥!?」

 


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