表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

III


◆◇◆◇

 

 威容を誇る大聖堂を支えるためには頑丈な石造りの基壇が使われており、それはさながら城塞のようだ。


 凍えるような強風が吹いたかと思うと、ギイィィ……という重厚な音と共に扉が開く。


 時計は既に零時を過ぎていたが、異様な高揚感が飛鳥を突き動かし、教会へと足を踏み入れさせる。


 扉の先には、最奥まで暗く、静謐な空間が広がっていた。


 足を一歩踏み入れれば、その音を深紅の絨毯が吸収する。


 絨毯は祭壇へと続き、左右には年季を感じるマホガニーの長椅子とステンドグラスの窓が並ぶ。


 歩を進めてゆくと、祭壇の背に四体の聖人の像が並ぶのが見えた。


 その中央には神聖な雰囲気に不釣り合いな石像が、聖人達に取り囲まれるように()る。


 床から伸びた禍々しい鎖に、体を縛られた漆黒の天使像だ。


 (むご)たらしい姿でありながら、その表情からは気高ささえも感じさせる。


 哀れみを覚えることさえも彼女の前では、おこがましく思えた。


 飛鳥は鞄から、紺色の小ぶりな箱を取り出した。


 その中には雪の結晶をモチーフにした首飾り(ペンダント)が入っている。


 ヒカリへと今日、渡そうと思っていたものだ。


「他の女性へのプレゼントなんて、ちょっと失礼かな……。でも天使さん、きっとこれはあなたに似合う」


 飛鳥は優しい手つきで、その首飾り(ペンダント)を天使の首にかけた。


 彼は十字を一度切り、その場を後にしようと祭壇に背を向ける。


「他の女への贈り物というのは気にくわないけど、貢物としてもらっておくわ」


 鎖が弾け飛ぶ音とともに尊大な声が響く。


 一瞬の後に硬直を解いた飛鳥が振り返れば、そこには腰下まで伸ばされた艶やかな濡羽色の髪と金色の双眸、そして漆黒の翼を持つ女性が立っていた。


「私の名は堕天使サハリエル――貴方の主よ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ