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II
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赤煉瓦造りのレトロな趣きを漂わせる最寄駅へと着くと、飛鳥の体は自然と動き出した。
肌寒さに体を抱きしめながら出口をくぐれば、硝子の空が割れたかのように光り輝く粒子が空を舞っていた。
飛鳥の吐き出した息も白い煙となり、夜空を気ままにに踊り、消えてゆく。
実らぬ恋とは、わかっていたつもりだった。
今日は笑顔で彼女を想い人のところに送り出すつもりだった。
それでも自分の中に、わずかな期待の気持ちが残っていたのだろう。
飛鳥は、家への少しだけ長い道のりを歩き出す。
ニッチな本を取り扱った書店、五十年以上続く洋食屋、和洋折衷なチグハグ感のある喫茶店。
飛鳥は、この時代の進歩から取り残されたような街が好きだ。
ふと、左側へと視線を向ければ坂を登った先に古びた大聖堂が見える。
尖塔が立派なゴシック様式の聖堂であり、長い年月による風化が進んでいた。
おそらくは何十年と使われていない廃墟と化した聖堂だ。
いつもならば素通りする場所だが、この日は妙に聖堂の存在が気になった。
飛鳥の足は自然と方向を変えて坂道を登り出していた。