第51話
その夜私は、こんな夢を見た。
アリシアと二人、ふかふかのベッドで、絹のネグリジェを着て眠っていたのだが、ふと目が醒めると、部屋の窓のカーテンが開いていて、少し開いた窓からさらさらと風が吹きこんでいた。
そのカーテンの影に、長い銀髪をなびかせ、たおやかな白い手首を窓枠に掛けた美しい女性が佇んでいた。
顔はよく見えなかったが、彼女の容姿はたとえ見えなくとも分かる。
――あなたに、ひとつだけ伝えておきたいことがある。
彼女は、ぽつりと言った。
――でもどうかエヴァンにだけは、言わないでちょうだい。彼を哀しませるだけでしょうから
何の物音もしなかった。
彼女の話す言葉だけが響いていた。
――アリシアには魔法の力があります。
え……っ?
私は驚いて聞き返した、ように思う。
――彼女の力は、封じられているだけなの。
アリシアは呪いを掛けられたのです。
アリシアの祖母……つまりエヴァンの母親によって。
彼女は誰よりも、悪女セレスタとエヴァンの結婚に反対していました。
母親になった今ならば彼女の気持ちも分かります。
自分の子どもが、自ら不幸になるような相手と結婚すると言い出せば、当然反対するでしょう。
彼女の反対を押し切って結ばれた二人を、彼女はどうしても許せなかったのです。
そして、悪女セレスタを王宮から追い出し、エヴァンを真に国民から敬愛される国王にするために、彼女は生まれてきたアリシアに呪いを掛けた。
エヴァンが、悪女セレスタとの恋から目を醒まし、相応しい相手と再婚することを願って。
私は偶然その事実を知りましたが、エヴァンには言わなかった。利害の一致です。
私も、エヴァンを『運命の恋人』の呪縛から解放してあげたかったから。
そして、彼に本当の幸せを手にしてもらいたかったから。
――でも、貴女にだけは伝えておくわ。
アリシアがいつか、思い悩むようなことがあれば伝えてほしい。アリシアは、エヴァンと私の子ども。そこに疑いの余地はない。アリシアにはそれを誇りに生きてもらいたい。
彼女はとても美しい女性だった。
陛下が惚れ込むのも無理はない。
凛とした立ち姿が誇りに満ちていて、正真正銘、勇敢で美しき、悪女だった。
(了)
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