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嫌われ悪女セレスタが殺された理由  作者: 滝川朗
第二章:カレル・クラマルス宝石店
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第22話:相変わらず過保護だな

「あの、セレスタを生き返らせるために、私を異世界転生してくれって、カレルさんに頼んだのは、やっぱりフィドル兄さんなの?」

 私は思わず口をはさんでいた。


 ところが二人はとても微妙な顔をしてお互いに目配せをし合う。


「そんなことまでセティに話したのか?」

 フィドル兄さんはとがめるように言う。


「隠すほどの話でもないだろう。おのずと知れることだ。……相変わらず過保護だな」

 カレルさんはむすっとした顔のまま言う。


「何をどこまで話したんだ」

 フィドルさんは問い詰めるような口調で言う。


「なにも?余計なことは何も言っていない。全ては自ずと知れること。俺の口からわざわざ話すほどのことでもない」


「僕は、セレスタには別人として生まれ変わってもらいたいんだ。過去のヒルダのことなんか、この子には何の関係もない話だろう?」


 二人の視線が苛々苛々(いらいら)とぶつかり合う。


「この女はそれを望んでいるのか?どうして働きたいか、お前はこの女の言い分を聞いたことがあるか?」

 カレルさんの静かな声がフィドルさんを責める。


「私、アリシアを幸せにしてあげたいの。ちゃんと自分の手で稼いだお金で、アリシアに好きなものを買ってあげたい」

 フィドルさんは目を見開く。


 フィドルさんが驚くのも分かる。私にとって、アリシアは赤の他人だ。

 それでも、この子の母親がセレスタ・クルールなら、私はこの子を幸せにする責任があると思う。


 そして、フィドルさんは深い溜め息をついた。

「分かったよ……。僕は本当は君に働いたりして欲しくはないんだけど、君がそう言うのなら止めることはできない。カレルと少し、話をさせてくれないか?いろいろと確かめておきたいことがある」


 カレルさんは、私達を家に招き入れてくれて、二人は玄関に私とアリシアを残して奥の部屋へ行き、しばらく話し込んでいた。


 二人はいったい何を話しているのだろう。

 秘密ばかりね。ヒルダ・ビューレンの過去には、知られたくないようなことがたくさんあるみたい。


 途切れ途切れに、二人の話し込む低い声が聞こえてくる。


――安心しろ。俺はあんな女に一切興味はない。

 カレルさんの声だった。


 フィドルさんはかつて魔性の女だった、美貌びぼうで悪女のセレスタが、カレルさんを誘惑するんじゃないかって、心配してるのかな。


 それにしても、『一切興味はない』って……ずいぶんな言いようだ。


 私だって別にカレルさんに興味なんてないし。

 ただ、アリシアと私を雇ってくれればそれでいいわけだし。

 

「アリー、お母さんは、どんな人だったのかな?」

 賢いアリシアに教えてもらうのが一番手っ取り早いのではと思い、私はしゃがみこんでアリシアに訊いた。


「優しいおかあさんだよ」


 アリシアのシンプルな言葉に、私は胸を突かれた。

 そのシンプルな言葉が、全てを表している気がした。


 セレスタ・クルールは優しいおかあさんだったのだ。少なくとも、娘にとっては。


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