第22話:相変わらず過保護だな
「あの、セレスタを生き返らせるために、私を異世界転生してくれって、カレルさんに頼んだのは、やっぱりフィドル兄さんなの?」
私は思わず口を挟んでいた。
ところが二人はとても微妙な顔をしてお互いに目配せをし合う。
「そんなことまでセティに話したのか?」
フィドル兄さんは咎めるように言う。
「隠すほどの話でもないだろう。自ずと知れることだ。……相変わらず過保護だな」
カレルさんはむすっとした顔のまま言う。
「何をどこまで話したんだ」
フィドルさんは問い詰めるような口調で言う。
「なにも?余計なことは何も言っていない。全ては自ずと知れること。俺の口からわざわざ話すほどのことでもない」
「僕は、セレスタには別人として生まれ変わってもらいたいんだ。過去のヒルダのことなんか、この子には何の関係もない話だろう?」
二人の視線が苛々苛々とぶつかり合う。
「この女はそれを望んでいるのか?どうして働きたいか、お前はこの女の言い分を聞いたことがあるか?」
カレルさんの静かな声がフィドルさんを責める。
「私、アリシアを幸せにしてあげたいの。ちゃんと自分の手で稼いだお金で、アリシアに好きなものを買ってあげたい」
フィドルさんは目を見開く。
フィドルさんが驚くのも分かる。私にとって、アリシアは赤の他人だ。
それでも、この子の母親がセレスタ・クルールなら、私はこの子を幸せにする責任があると思う。
そして、フィドルさんは深い溜め息をついた。
「分かったよ……。僕は本当は君に働いたりして欲しくはないんだけど、君がそう言うのなら止めることはできない。カレルと少し、話をさせてくれないか?いろいろと確かめておきたいことがある」
カレルさんは、私達を家に招き入れてくれて、二人は玄関に私とアリシアを残して奥の部屋へ行き、しばらく話し込んでいた。
二人はいったい何を話しているのだろう。
秘密ばかりね。ヒルダ・ビューレンの過去には、知られたくないようなことがたくさんあるみたい。
途切れ途切れに、二人の話し込む低い声が聞こえてくる。
――安心しろ。俺はあんな女に一切興味はない。
カレルさんの声だった。
フィドルさんはかつて魔性の女だった、美貌で悪女のセレスタが、カレルさんを誘惑するんじゃないかって、心配してるのかな。
それにしても、『一切興味はない』って……ずいぶんな言いようだ。
私だって別にカレルさんに興味なんてないし。
ただ、アリシアと私を雇ってくれればそれでいいわけだし。
「アリー、お母さんは、どんな人だったのかな?」
賢いアリシアに教えてもらうのが一番手っ取り早いのではと思い、私はしゃがみこんでアリシアに訊いた。
「優しいおかあさんだよ」
アリシアのシンプルな言葉に、私は胸を突かれた。
そのシンプルな言葉が、全てを表している気がした。
セレスタ・クルールは優しいおかあさんだったのだ。少なくとも、娘にとっては。




