表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ悪女セレスタが殺された理由  作者: 滝川朗
第二章:カレル・クラマルス宝石店
21/51

第21話:寄りによってカレル・クラマルスだなんて…

「セティ?」

 帰ってきたフィドルさんが、私の顔を見て怪訝けげんそうに首を傾げる。


 し、しまった……。


 家に帰ったら、なんでもいいから鏡を見ながら『鏡よ鏡』とおまじないをつぶやいておまじないをかないといけなかったのに……!

 すっかり忘れていた。

 私の馬鹿……っ!


 フィドル兄さんは、鬼のような形相ぎょうそうで私の元へと駆け寄ると、私のあごに手を掛けて、まじまじと覗き込む。


 ち、近いって……!

 私は思わずぎゅっと目をつむった。

 こないだのことがあったから、変に意識してしまうではないか……!


「『魔法』か……?」

 フィドルさんは呟く。


「カレルさんだよ。カレルさんにしてもらったの」

 アリシアの屈託くったくのない言葉に、私はぎょっとした。

 

 アリシアは、だから何か?と言う顔をしている。


 フィドルお兄さんはますます顔を引きつらせる。


()()()()()()()()()が?この家に来たのか?」

 普段ののんびりした口調からしたら考えられない、緊迫した鋭い声だ。


「ち、違うのよ」

 私は白状することにした。


「私、仕事が欲しくて。いつまでもあなたのスネをかじっている訳にもいかないし。自分とアリシアが食べていけるだけのお金は、自分でかせぎたいの」


「そんなこと……っ!必要ないって言ってるだろう!?僕は君のお兄さんなんだよ!妹とめいを養う義務がある!可愛い君たちの扶持ぶちを稼ぐことぐらい、僕は何とも思わないんだよ……っ!それよりも、君たちの身の安全の方が心配なんだ……っ!」

 フィドルさんは怒ったように、声を荒げて言った。


「それに……、寄りによって()()()()()()()()()だなんて……」


 フィドルさんは苦悩するようにうつむいて頭を抱えた。

 フィドルさんの身体が震えている。


 カレルさんにこんなに反応するなんて。


 この人とカレルさんとの間に、いったい何があったのだろう……。


「フィー、だいじょうぶだよ!カレルさんなら、おかあしゃまを護ってくれる」


 アリシアは腰に手を当てて、苦悩するフィドルさんをさとすように言った。

 私もフィドルさんも、驚いてそんなアリシアの姿を見ていた。

「おかあしゃまもアリーも、ずっとおうちに閉じこもっているのはいや。街に行きたい。おかあしゃまは、お洒落したい。美味しいもの、一緒に食べたい」


 私は泣きそうになった。


 アリシアは、私がカレルさんに語った言葉をきちんとすべて聞いていたのだ。

 そして、こんな私の気持ちを、全部理解してくれているのだ。


「アリー!だいすき……っ!」

 私は思わず、小さな娘をぎゅっと抱き締めていた。


 フィドルさんは毒気を抜かれたような顔をして、長い溜め息をついた。


「分かったよ。その代わり、僕もカレル・クラマルスとは話をしておきたい。今から一緒に行くよ!」


「ええ……っ?いまから?」

 兄はさっさと家から出ていく。


 仕方なく私もアリシアを連れて足早に家を出た。

 カレル・クラマルス宝石店はこの家からそう遠くない距離にある。徒歩で十五分ぐらいだろうか。


「お店、もう閉まってるんじゃないかしら?」

 私は兄を追い掛けながら言った。


 店はたしか十七時までだ。

 現在時刻は十八時。とっくに店は閉まっているはずの時間だ。


「だいじょうぶだよ。店舗兼住宅なんだから」

 そう言って、兄は店舗兼住宅の住宅側にある小さな勝手口についたノッカーを思い切り叩いた。


 すぐにカラスアゲハ色の髪に紺色の瞳の魔法使いが顔を出す。


「こんな時間に何の用だ」

 カレルさんは仏頂面だ。


「うちの妹を雇ってくれるそうだな。いったいどういうつもりだ?何を考えてる?」


 フィドルさんはやはりいつもののんびりした彼とは違う、冷たく苛立いらだったような話し方だった。


「そう怖い顔をしないでくれ。俺だって心底迷惑してるんだ。何が悲しくてヒルダ・ビューレンなんかを雇わないといけないんだよ……。これ以上面倒事を引き受ける義理は俺にはないぞ」


 やっぱり……この人達は知り合いなのね。


 フィドルさんは舌打ちして言う。

「僕だって、君とはもう関わらないつもりだったのに……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ