第2話:◯女なのに、娘がいるの?
第一章 どうしてお兄さんなのよ
痛い。身体中が痛い。特に背中が、燃えるように痛い。
あまりにも痛くて、
身体が動かせない——私ははっとして身を起こした。
私は知らない部屋のベッドの上に居た。
「おかあしゃま……?」
私は目を疑った。
なんだこの可愛い生き物は……?
目が紫色だった。
髪は艶やかなシルバーの色。
目の前に、銀髪につぶらな紫の瞳の、超絶美少女がいて、心配そうに私を見ていた。
年の頃、五歳ぐらいだろうか。
「おかあしゃま……よかったあーーーー!」
美少女は私の身体にぎゅっと抱き付いてそう言った。
私の身体に回された少女の小さいながらもしっかりとした両腕の手応えに、私はぼんやりしていた意識が少しずつはっきりしてくるのを自覚した。
「お、お母さん……?わたしが、あなたの?」
自分と少女を順番に指差しながら聞く。
銀髪紫眼の美少女はこくこくと頷いた。
そんな……、私は、生まれてこのかたアンドリュー以外の男性とはお付き合いをしたこともなかったのに、リアルの男性とは手繋いだこともなかったのに、と言うかそもそも私、◯女なのに、◯女なのに、娘がいるの?
どういう状況!?
「おとうしゃまーーー!」
女の子は慌てたようにパタパタと駆けて行った。
ち、ち、ち、ちょっと待って。お父様!?
つまり、私の結婚相手と言うこと?私が、身体を許したお相手と言うこと?
無理。待って。心の準備が追い付かない。
そんなことよりも先にちょっといまの状況を把握させてはいただけないでしょうか……!
周りを見回せば、古いヨーロッパ風のおうちだった。質の悪そうなでこぼこしたガラスの窓から光が差していて、埃っぽい本棚と、両開きのタンスと、バラの花が一輪だけささった一輪挿しが枕元の小さなテーブルにあって……まるで、そう、お伽噺に出てくるおうちみたい。
それに、銀髪紫眼の美少女って……アニメキャラですか?これはいわゆる、『物語の世界に転生した』ってやつ……?
ただただアンドリューに夢中だった私は、ジャスティンなんちゃらとかエドなんちゃらの音楽ばかり聞いて、彼の好みそうな洋画や海外ドラマばかり見ていて、そう言った手書きキャラクターの付いた小説やアニメはあまり見たことがない。
そう言う筋書きのお話があるということを知っていると言う程度だ。
物語の世界に転生するなら、主人公はその物語の筋書きに精通してたりするのかもしれないけど、私は銀髪紫眼の美少女が娘である女が主人公の物語なんて、知らないぞ……?
なんで転生しちゃったのか分からないけど、転生させる人間間違えていませんか?
いや、それよりも、人間が近付いてくる気配がある。
どうしよう、来ちゃう。
少女の父親が、いや、私(というかこの身体)が身体を許したであろう男性が、生理的に受け付けない感じの不潔なおじさんとかだったらどうしよう……っ!
イヤだ、異世界に転生して、気持ち悪いおじさんに身体触られるとかだったらもう一回死んでしまうしかないではないか……っ!
私は思わず固く 眼を瞑っていた。怖くて目を開けられなかった。






