Episode54
次の日の夕方、美菜はワールド・リーゼをプレイするためにPCの前に座った。
「さて、やってみますか!」
配信を開始すると、リスナーたちが続々と集まってくる。
【待ってました!】
【ワールド・リーゼ実況楽しみ!】
【初プレイ楽しんで!】
「みんな、来てくれてありがとう! 今日はワールド・リーゼをやってみようと思います!」
コメント欄には、すでに経験者と思われるリスナーがルールや戦い方についてのアドバイスを書き込んでいた。
「ふむふむ、2対2のバトルゲームで、私はやっぱりサポート役に回る方がいいってことね」
サポート役として味方を支えるのは、美菜の性に合っている気がした。
「キャラクターは……この子!」
美菜が選んだのは、ずんぐりとしたガタイのいいチャンピオンだった。
【もっと可愛いの選ぶのかとおもたwww】
【たしかにそれは強い】
【女チャンプにしとけwww】
【なぜそれwww】
「えっ、ダメ? でも初心者向けのサポートってこういうキャラが多かったんだよね」
【性能厨www】
【でもそれ、初心者には最適】
【割と適正あるかも?】
「まあまあ!とりあえずやってみよう!」
美菜は基本的に、可愛さよりも性能を重視するタイプだった。昨日のリサーチでも、初心者向けのチャンピオンは大抵タンク系ばかりだったし、何より味方を守るプレイスタイルは美菜の好みに合っていた。
***
まずはソロプレイで何度か練習してみることにした。
最初は操作に戸惑いながらも、少しずつ慣れてきて、試合にも勝ったり負けたりするようになった。
【みなみちゃん他のゲームよりセンスあるよ!】
【乙女ゲームよりできてる】
「褒めてる?」
リスナーのコメントに笑いつつ、試合を重ねるごとに美菜はどんどんゲームの楽しさに引き込まれていく。
このゲームは勝っても負けても楽しいゲームだ思った。
***
そんなとき、コメント欄に気になるメッセージが流れてきた。
【このゲーム今日本の大会してるよ】
「えっ、大会?」
調べてみると、ちょうど日本大会の決勝戦が始まるところだった。
「じゃあ、みんなで一緒に観戦しようか!」
配信画面には映せないが、リスナーそれぞれで大会の配信を開きながら、一緒に試合を見ることにした。
【今回の大会賞金デカいらしいよ】
【目指せみなみちゃん世界一】
「へぇ、賞金とか出るんだ! すごいね!」
画面には「AK2 VS ウルフルズ」と表示されていた。
どちらのチームも知らなかったが、とりあえず美菜は興味津々で画面に見入る。
試合が始まると、圧倒的なスピードと連携の取れた動きに驚かされた。自分がさっきまでプレイしていたゲームと同じはずなのに、まるで別物のようだった。
【プロの試合はレベル違うよね】
【このアタッカーの人、マジでやばい】
【AK2のサポートが神】
【結構このゲームではAK2が有名だよね】
美菜もすぐに、現在優勢のAK2を応援し始めた。
「このAK2のアタッカーの人の判断、なんかすごい……!」
試合は白熱し、最後の一撃が決まると、画面には「AK2 WIN!」の文字が浮かび上がる。
「………AK2が勝ったーーー!」
美菜は思わず立ち上がるほど興奮していた。
「いやぁ、すごかったね! やっぱり上手い人がやると全然違う!」
【みなみちゃん、実況向いてるかも】
【テンションの上がり方可愛いw】
【888888】
試合を見終わり、美菜はすっかりワールド・リーゼの虜になっていた。
「私ももっと上手くなりたいなぁ」
そう言って、美菜は再びゲームを起動する。
その後、大会の試合には到底及ばないがリスナーと一緒に協力しながらゲームを楽しんだ。
ワールド・リーゼの面白さを知り、美菜はますますのめり込んでいくのだった。




