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Episode27



「そういえば相談って何かな?」


美菜はオムライスをひと口食べた後、ふと顔を上げて瀬良に尋ねた。少し気になっていたのだ。あれだけ「相談したいことがある」と言っていた瀬良の真意が、気になって仕方なかった。


瀬良は一瞬だけ視線を外して、少しだけ考えるような素振りを見せた。その表情からは、何か考えているのだろうということが伝わってきた。


「まあ、あまり大したことじゃないんだけど…」


そう言って、瀬良はやや照れくさそうに言葉を続けた。


「最近、ちょっと忙しくてさ…休みの日くらい、誰かと一緒に過ごした方が気が楽なんだ」


美菜は少し驚いた。普段、どこかクールで無口な瀬良がこんなことを話すなんて想像もしていなかった。


「それで、つい…」


瀬良は言いかけたが、その後少し言葉を切るようにして続けた。


「まあ、だから、ちょっと一緒にランチでも行こうって思っただけ」


その言葉に美菜は少しだけ頬を赤らめた。瀬良が言う「誰か」というのは、どう考えても自分を指しているのだろう。


「でも、別に気を使わなくていいからな」


瀬良はそのまま軽く肩をすくめ、少し照れ隠しのように言った。その何気ない仕草に、美菜の胸はまた少しだけ高鳴った。


「そんなことないよ。私も、瀬良くんとこうして過ごす時間、楽しいし」


美菜は少し照れながらも、心からの言葉を返す。その言葉が、瀬良の耳にどう響いたのかは分からないが、瀬良は少しだけ目をそらした。


「そうか」


その一言が、また美菜の心に何か温かいものを運んできた。


二人はしばらく、黙って食事を続けた。どこか心地よい静けさが流れていて、あまりにも自然に一緒にいることができると感じられた。


ふと、美菜は思った。この時間が、ずっと続けばいいのに、と。


その時、瀬良がふと口を開いた。


「お前、なんか…少し変わったよな」


美菜はその言葉に驚いた。変わった…?


「どういうこと?」


思わず聞き返してしまう。


「なんか、前より少し…柔らかくなったというか。」


瀬良は少し照れくさそうに言ったが、その言葉に美菜は思わず目を見開く。


「私、そんなに変わったかな?」


「うん、変わった。前はもうちょっと硬かった気がするけど…今は、なんか素直になった感じがする。」


その言葉に、美菜は思わず顔が赤くなった。瀬良がそう言ってくれることが、嬉しくてたまらなかった。


「そ、そんなことないよ」


美菜は軽く笑ってみせたが、その笑顔がどこか照れくさいものに感じられた。


「まあ、そうだな。でも、こうして一緒にいると、少しずつお前のことがわかってきた気がする」


瀬良はその言葉を静かに続け、目を伏せながら少し考え込むような様子を見せた。


美菜はその言葉の意味を考えながら、再びオムライスを口に運んだ。心の中で、少しだけ期待と不安が交錯する。次に何を言うのか、瀬良の言葉に耳を傾けながら、どこか心が温かくなるのを感じていた。


その時、美菜はふと気づいた。今、瀬良との時間が、確実に変化を迎えていることに。



***



オムライスを食べ終わった美菜は、ふと周りを見渡しながら、軽く息をついた。食事の余韻を楽しむように、ゆっくりとコーヒーを口に運ぶ。その間、瀬良は黙ってカップを手に取り、少し遠くを見つめていた。


「…瀬良くんも、最近変わったよね」


美菜が言葉を切り出すと、瀬良は一瞬だけ視線を戻し、少し驚いたような顔をした。


「変わった?」


「うん、前よりも少し優しくなったというか…素直になったような気がする」


美菜は少し照れくさそうに続けた。普段の瀬良からは想像できないほど、最近の彼は少しだけ違って見える。その変化を、美菜はなんとなく感じていた。


瀬良は少し黙ってから、少し照れたように笑った。


「そうか?俺、そんなに変わったか?」


「うん、なんだか…前より素直になったような気がする」


美菜は視線を外して少し恥ずかしそうにしながら言う。瀬良はしばらく黙っていたが、やがて少し真剣な表情で答えた。


「そう言われると、なんか照れるな。でも、確かに…最近、少しは変わったかもな」


その言葉に、美菜はさらに驚いた。普段あまり自分の変化について口にしない瀬良が、そんな風に言うなんて。


「どうして?」


思わず、素直にその理由を尋ねてしまった。


瀬良は少し考え込むように視線を下げてから、ゆっくりと言った。


「忙しかったし、前は他のことに気を取られてばかりだったけど…最近、ちょっと余裕ができてきたんだ。だから、誰かと過ごす時間が大切だって思うようになった」


その言葉を聞いて、美菜は心の中で何か温かいものが広がっていくのを感じた。


「でも、それって良い変化だよね」


美菜は微笑んだ。その優しさが、瀬良の中にあることを知っているからこそ、その変化が嬉しく感じられた。


瀬良は少し黙ってから、いつものように肩をすくめる。


「まぁ、そうだな。でも、あんまり言うことじゃないと思ったけど、ありがとうな」


その言葉に、美菜はまた少し照れたように笑った。瀬良が素直に自分の変化を認めるなんて、やっぱり嬉しいと思った。


「えへへ」


美菜は軽く微笑むと瀬良は少し照れたように目を逸らし、また軽く肩をすくめた。


二人の間に、再び穏やかな静けさが流れる。心地よい時間の中で、美菜は少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じながら、またコーヒーを一口飲み込んだ。


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