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Episode10



数日後。


美菜はいつも通り、VTuber「みなみちゃん」として配信していた。


今日は久しぶりの雑談配信。リスナーの悩み相談を受けるコーナーだ。ゲーム実況も一区切りついたし、こうしてファンとゆっくり話す時間も大切にしたかった。


「じゃあ、次の相談いってみよっか~!」


軽やかにコメント欄を眺めていると、ふと目に留まったのは恋愛相談だった。


【いま学校で好きな男の子がいるけど、向こうが意識してくれてるか分かりません。】


「う~ん、好きな人かぁ……」


美菜は考え込む。恋愛経験が全くないわけではないが、人に語れるほどの経験もない。


(でも、こういう時こそ、美容師としての知識が役に立つかも?)


もちろん、自分がリアルで美容師をしていることは秘密だ。


「んー、そうだなぁ。人ってね、無意識に好きな人のことを目で追っちゃうんだって。だから、気になる彼がこっちをよく見てるな~って思うことがあったら、それはちょっと脈アリかも?」


コメント欄が一気に盛り上がる。


【なるほど! 目線チェックする!】

【でも好きだからこそ、逆に見れないってパターンもあるんじゃ?】

【めっちゃ参考になる~!】


「たしかに、好きすぎて見れないって人もいるよね~。でも、意識しちゃう相手には、どうしても反応が出ちゃうと思うから……さりげなく話しかけた時の態度とか、リアクションとかも見てみるといいかも?」


そう言いながら、美菜はふと考える。


(……そういえば、私も最近やたらと瀬良くんのこと気にしてない?)


彼がそばにいるとつい目で追ってしまうし、ちょっとした言葉や仕草が気になって仕方ない。


(いやいや、これはただの同期としての興味……だよね?)


そんなことを考えつつ、次の相談へと進んだ。



***



いくつか相談を読み上げて答えているうちに、時刻は午前0時を回っていた。


「そろそろ時間だね。今日は来てくれてありがとう! みんな、おやすみ~!」


リスナーに挨拶をして、美菜は配信を終えた。


パソコンの電源を落とし、ベッドに寝転ぶ。


(好きな人……か……)


さっきの相談が頭をよぎる。


そして、脳裏に浮かんだのは――瀬良の顔だった。


(……いや! 違う違う! これは違う!!)


慌てて頭を振る。


(同期だから! 仕事仲間だから! 最近ちょっと仲良くなっただけで、特別な意味はない!)


そう自分に言い聞かせるが、最近の出来事を思い返すと、どうしても意識してしまう。


仕事帰りに一緒にゲームショップへ行ったこと。

居酒屋で初めてじっくり話したこと。

瀬良の努力を知って、彼のことを誇らしく思ったこと。


(……なんか、ずっと瀬良くんのこと考えてる気がする)


こんなふうに誰かを意識するのは久しぶりだった。


でも、美菜はまだ自分の気持ちに気づかないフリをする。


(気のせい。うん、絶対に気のせい!)


そう思い込むように目を閉じ、眠りにつこうとした。


けれど、その夜、瀬良の顔が何度も夢に出てきたのだった。

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