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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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そんなんだからミカ様がヤンチャに育つんだ!

 ドゴオォォォン!!︎


 凄まじい爆発音、そして大量の白い煙とともに私の身体は再び宙に投げ出された。しかも、さっき投げられたよりもずっと高く。


「!?」


 これにはさっき投げた本人である彼ぴも驚いてこっちを見上げている。


 次の瞬間、ザコルはダッ、と走り出し、進行方向にたまたまいた朱雀の背中を踏んで跳び上がった。煙を切り裂くようにして飛んできた彼は、落下し始めていた私の身体をキャッチし、私の頚椎を守るように抱え込んでからクルクルと何度か回転して着地した。


 下は踏みしめられた雪だというのに、彼の脚は太ももまで沈んだし、ものすごいGを全身に感じた。しゅごい。


「〜! 〜〜!! 〜〜〜〜!!」


 ザコルが何やら言い募っているがよく聴き取れない。言葉の意味が解らないというより普通に聴こえない。もしや鼓膜が破れたかな。


 ちょっと待って、耳が、とジェスチャーで示すと、むぐうとばかりに彼は黙った。待ってくれるらしい。その間にわっと人が押し寄せてくる。


「あ、聴こえるようになりました。どうぞザコル」

「何がどうぞだ!! あなたは何をしているんですか!! 普通の人間があの高さから落ちたら、例え下が新雪や水だったとしてもタダでは済みませんよ!!」

「ザ、ザコル様、そんなに頭ごなしに怒鳴られては……」

「止めないでくださいペータ!」


 ちょいちょい。憤るザコルの肩が叩かれる。


「お待ちくださいザコル殿。今の爆発、本当にミカ殿が起こされたものなのですか?」

「いや姐さん水温の魔法士だぞ。どっかに火薬が埋まってたとかじゃ」


 ブンブン、ザコルは首を横に振る。


「いいや絶対に違う!! においが全くしない火薬なんてあり得ない。あの煙も硝煙ではなく湯気だ。だというのにあの威力、このクソ姫がニホンの知識と魔法を組み合わせて何かしたに違いありません!」


『………………』


 断言するザコルに、みんなの視線が私に集まる。


「……て、てへ。ちょこっと蒸気砲的なものの実験をば」

「何が『てへ』だこのクソ姫が! やっぱり自分で起こしたんだろうが一体何を考えているんですか!!」


『………………』


 周りが『なあんだ』みたいな感じで溜め息をついたり眉間を揉んだりし始めた。


「いやあ、こんなに威力が出るとは思わなくて」

「思いつきで結果が読めない実験をするな!!」


 結果が読めないから実験するんですよとか言ったらもっと怒られそうだな。


「全くミカは……!」


 ガミガミガミ。ザコルが滅茶苦茶にキレているので他の人々は口を出せないでいる。エビーとサゴシの幼馴染コンビは「そーだそーだ言ってやれー」と小声で加勢し始めた。


「しかも蒸気『砲』だと……? 明らかに兵器じゃないか、ますます体を張って実験することじゃないでしょう!!」

「うーん、蒸気の力を利用すれば土管からお手軽に出られるかなと思っただけなんですが……」


 例によって本かサイトで読んだうろ覚え知識だが、蒸気を利用した鉄砲や大砲って、構想はあれど、蒸気機関自体が大きくなりすぎるせいで実用化には至ってない、とかだった気がする。火薬を使った方がずっと効率がいいとかなんとか。


 しかし、私がいれば燃料やそれを燃やすような機構は要らないので、土管状に伸びたこの穴を利用し、蒸気機関のピストン的なものだけでも再現できないかと思い立った。


 それで、試しに氷で手頃な大きさの水槽を土管の底に作って水を満たし、その上にピッタリサイズの氷の蓋……といっても円柱に近い、コルク弾みたいなものを作って軽く溶接。……材料は水だが、溶かして接着に使ったのだから『溶接』で合っているはずだ。


 これで準備は万端。自分はコルク弾の上に立ったまま密封された水槽の中の水に念じ、全力で加熱してみた結果。


「いやあ、蒸気の力ってすごいですねえ。蒸気機関っていうより水蒸気爆発かな? 卵を殻付きのままレンジに入れた感じにも近い? あんな小っちゃいタライみたいなサイズの水槽でも、人一人分の重さなんてスポーン! でしたよー」


 あっはっはー。


「笑い事じゃないっ、そもそもその水蒸気爆発とやらに巻き込まれていたらどうするつもりだったんだ怪我どころか木っ端微塵だったかもしれないんだぞ軽率に死にかけるのは金輪際やめろと何度」


 ちょいちょい、ちょいちょい。


「何ですか!!」

「おい、さっきミカ様を球遊びみてえに投げてただろザコル様。軽率はどっちだ」


 じと。ザコルを責めるような視線を送るのは、審査員をしていたリンゴ箱職人の皆さんである。


 責められたザコルはキョトンとした。


「軽率? あの程度の高さでこのミカが怪我をするはずないでしょう」

「てんめえ……。普通の女の子ならあれでも死んでたぞ!」


 そ、そうだそうだー、とペータとタイタが遠慮がちに加勢し始めた。


「アンタがそんなんだからミカ様がヤンチャに育つんだ!」

「保護者の自覚あんのか!」


 保護者……。おじさん達まで私を幼児扱いして……。


 ドドドドドド。近づいてくる轟音に大軍でも現れたかと思えば、


「何事だ!! ミカに怪我はないだろうな!!」


 イーリアがモリヤ率いる衛士軍団とともに現れた。

 そのうちに使用人軍団を連れたマージや、パパママ軍団、壁の修繕と曲者の見張りで忙しいはずの穴熊達までやってきた。


 キョエエエエ!!


 踏みつけにされた上に蚊帳の外にされていた朱雀が不満を訴え始めた。


 カオスだ……。


 土管からピョイーンと飛び出てみたかったばっかりに。私は静かに反省することにした。





「いやはや。本日も公式聖女様には度肝を抜かれましたな」

「魔獣殿の叫びさえも霞むあの爆裂音!!」

「歩く火薬庫と並び立つにこれほど相応しいおなごがおりましょうか」

「むしろ第二の火薬庫では」


 同志達は一体いつからどこに潜んでいたんだろうか……。ちなみに、歩く火薬庫とはザコルの二つ名の一つである。


「ミカ様はついに爆弾まで作れるようになったんか、おっかねえなあ」

「まあ、そんなこともあるわよ」

「ミカ様だものねえ」


 パパママ軍団も私を何だと思っているのか。歩く火薬庫か、そうか。


「さすがはミカ様。いつかは猟犬様の城壁崩しを越えてくると思ってました。ね、メリーさん!」

「はい。神に不可能はありませんピッタ様」


 あっちの聖女班なる新興団体は聖女を何だと思っているのか。歩く火薬庫か、そうか。


 あれからイーリアを始めとした偉い人達に滅茶苦茶叱られた私だが、追いかけっこが中断されて不完全燃焼な朱雀が私をつまみ上げて連れ去ろうとしたために違う騒動になりかけ、その場はうやむやになった。


「ねえスザク、こんどは僕とおいかけっこしましょう! 『あそぼう』、『つかまえろ』です!」

「おれもやる!」


 わーっ、イリヤとゴーシが朱雀に声をかけて散る。


 キョエエエエーッ!!


 朱雀はあっさりと私を放っぽり出して、少年達を追い始めた。


 ミイミイミイミイ!

 ミカのバカまた死にかけた!


 これまた今までどこにいたのか、ミイが私の頭をペチペチと叩いている。



 町の外の放牧場が賑やかなのは久しぶりに見る。

 みんな私が作り出したクレーターを見物しながら、うちの聖女はしょーがねーなと笑っていた。




つづく

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