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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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優しい人ですから

 どよ、どよ、どよ。


「常々言っていることですが、ミカは、人を甘やかしすぎなんですよ」

「みんなで私を甘やかすからでしょう? あと、みんながあんなに目の色変わってるのってたぶん、ザコルが私を好きすぎるからじゃないかと思うんですけど」


 ザコルがダダ漏れさせてるせいでみんな若干操られてるんだと思うんですけどー。


「…………それは、あり得なくも、ない、かもしれない、ですね」


 渋面。


「そうか、また漏れているのか……。どうやら精進が足りないようです」

「ふふっ、私は私に掛けられてるの以外は分かりませんでしたし、サゴちゃんや魔獣達も何も言ってきませんから違うかもですけどね。でも『好きすぎ』って認めてくれるんですね。嬉しいなあ」


 む。


「紛らわしい。誘導尋問はやめてくれますか。あと頬をつつかないでください。それに抱きつかないで」

「注文が多いですねえ、ていうか抱きついてきたのはザコルでしょうよ。ふふっ」


 いーちゃいちゃいちゃ。


「やっぱ本物のイチャつきはえっぐいぜ」

「うるさいエビー」

「そろそろミカを貸せザコル。私が愛でる」

「義母上は引っ込んでいてください」

「なんだと」


 どよ、どよ、どよ、うう、ぐうう……。


 猿轡を噛まされ、手足を縛られ、雪の上に正座させられ。

 喉の奥からうなり声を上げながらこちらを睨んだり、青ざめて震えたりする人々。


「いっぱい集まってますねえ。いいんですよね、イーリア様」

「ああ、全員用済みだ。煮るなり焼くなり好きにしろ」


 キキィ!


「ジョジー。どうかな、強そうなのはいる?」


 キキィ……。

 ザコルより闇が強いの、いないです。


「そう。それならいいね。ありがとう」


 私はお礼として、彼女へ魔力のお裾分けをする。


「後で蜂蜜牛乳も一緒に飲もうね」


 ミイミイミイ!!

 ミカの相手、ミイの役目!!


「ええー、ミイが面倒くさがってジョジーに頼んだんじゃない」


 それで文句を言われてもな。ミイはここは俺の陣地とばかりに私の肩に乗ってきた。


 くぅん。キューキュー。


「はいはい魔力ね、みんな集まって。今日はたくさんあるから。ふふ、みんなかわいいね」


 小中型の魔獣達は、森の中で見るとよりメルヘンさが際立つ。このビジュにはメルヘンつよつよミカ軍も敵わない。


「さあどうすればいいですか、サゴシ」

「あ、俺に訊くんですね」


 ザコルに指名されたサゴシがひょっこり出てきた。


「君は僕のシショーでしょう?」

「そーでしたっけ」


 サゴシは、集まった人々を見渡しながら「ううーん」と唸った。


「なんか頼まれた覚えはあるんですけど、頼りにされた覚えはないんですよねー」

「僕はいつでも君を頼りにしていますが?」

「はいはい、俺のこと大好きですもんね。じゃあ、とりあえず一人か二人相手に思いっきりやってみたらどうですか。ソレ意識してから本気で掛けたことないですよね?」

「はい」

「貯めてます?」

「ジョジーの助言通り、なるべく練って貯めるようにはしてきました」

「そーですか。まあ、廃人になっちゃうかもですけど、やってみましょうかね」


 サゴシはそう言うと、適当に二人選んで引っ張り出す。最後の足掻きなのかその二人は暴れた。


「うるさいな。怯えろ」


 ひっ、喉の奥から小さな悲鳴が聴こえたかと思うと、二人はガタガタと震えだして大人しくなった。


 サゴシは以前、人間の悪感情に干渉できる、と言っていた。


「君の本気も見てみたいですね」

「はいはい、後でやってあげますよ」


 ズルズル、サゴシとザコルはその二人を引きずり、皆から距離を取る。私達も念の為、一か所に集まって遠くから成り行きを見守る。


 しん。音や動きがなくなり、ザコルが二人を見据えた瞬間。


 ぐわん、空間が大きく歪み、濁った何かが曲者二人を包み込むようにまとわりつく。私の目にはそう見えた。


 隣に立ったエビーが思わずといった様子で顔をしかめる。


「ここからでも余波っつの? 結構キツいすね。風景とか何も変わってねーのに、やっぱ不思議な感覚だわ」

「そうだね……」


 やはり見えて、いや『視えて』いるのは私だけか。


「尋問の時とは比べものにならないな。やはり、あれでも手加減なさっていたのか……」

「大丈夫すか、タイさん」

「大丈夫だ。その正体を正しく知ってからは、衝動をいくらか押さえられるようになったからな」


 タイタには『浄化』を扱う『神徒』の素質がある。その傾向があると、闇の力は滅せねばという強い衝動を感じるらしい。


「……なるほど、あれほどとはな。よくぞアレを表にも出さず内に秘めて制御してきたものだ。ザハリも無意識ながら『上手い』とは思っていたが、比べものにならんぞ」


 そうつぶやくのは、ザコルの放つ闇の力を初めて目の当たりにしたであろうイーリアだ。


「オーレンの判断は、間違っていなかった。あいつがブルグ家に、サイカ人として産まれなくて本当に良かった」

「イーリア様、坊っちゃまは……」


 マージが反論しようとするのを、私は手で制した。


「色んな意味で、ですねイーリア様。合理的で、敵には厳しい人ですが、優しい人ですから」

「ああその通りだ。あの腐った国がザコルの心を理解してやれるものか。ザコルは自分の『支配力』を危ぶみ、当主の座だけはと固辞している。あいつは家族や民を想える繊細なやつだ。ザラミーアによく似て、いやそれ以上に。……情けなくも、最近知ったことだが」


 義理の息子の背負ったものの大きさに、イーリアは胸を掻きむしる。


 発狂した曲者二人を前に、ザコルが困ったようにこちらを見たので、私はミイとジョジーを連れて走り出した。




つづく

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