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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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素敵な能力

「何か、違う……!!」


 ズシャア、メリーは床に膝をついた。その前では息絶え絶えのペータも倒れ込んでいる。


「大丈夫ですかメリー殿」

「大丈夫、くはございません執行人様」

「大丈夫かよ少年」

「だっ、だはっ、大丈夫くっ、はないですエビー様……っぐふっ」


 それぞれ手を差し伸べられた少年少女は、浮かべた表情こそ対照的だが『だいじょうぶくはない』と同じセリフを吐いた。


「はは、ウケる」


 彼らの面倒を見るように命じたはずの変態お兄さんは、ジョジーと一緒に蜂蜜牛乳をすすっている。


「メリー、分かってると思うけど、あまり連発すると枯渇するよ。そうなるとなかなか回復しないから気をつけて」

「……はい。いえ、でも、いや、ええ、ですが、しかし……っ」


 んぐううう、と少女は少女らしからぬうなり方をし、頭を抱えた。


「まあ、混乱というか、受け入れ難い気持ちは解るよ」


 だから能力は選べないよって言ったじゃん、と追撃するのはやめておいた。


 サゴシが以前から言っていた通り、メリーのポテンシャルはなかなかのものだった。元は闇だの陰だのという力とは無縁だったようなので、何かをきっかけにして目覚めたのだろう。


 まあ十中八九、そのきっかけとは私だ。ただ、彼女自身の思想が変わったせいなのか、私の魔力に当てられたせいなのか、詳しいことは判らないが。


 ジョジーの細やかな指導により、メリーは彼女の内なる力を意識し、そして発露することに成功した。短時間でそれを成し遂げたメリーの集中力や勘はすごい。

 そう褒めたら、彼女は『ミカ様やザラミーア奥様が訓練なさるのを、この目で見ていましたから』と恥ずかしそうに謙遜してみせた。


 そうして、メリーが授かった能力とは。


「あひゃひゃひゃひゃひゃっ」

「メリー、何度やっても結果は変わらないよ?」

「ですが、でも、だって……!!」

「ひゃひゃひゃ」

「人を笑顔にする能力だなんて素敵じゃない」

「うひゃひゃひーっ、こっ、これがっ、素敵な能力なものですかミカ様!!」


 にかーっ。


「うんうん、笑顔が素敵だねペーちゃん」

「んぐふっ、わっ、わけもなく楽しいっ、けど怖いっ、怖いけど嬉しい、楽しい、面白……っ怖いいいいい」


 にこーっ。


 この状態で楽しいと思える自分自身が怖くてたまらないんだろうな……。私はごくりと唾を飲んだ。


 転げ回るペータの前にエビーが立ちはだかる。


「おいメリーちゃん、少年がマジに笑い死ぬからもうやめろ」

「だってえ……っ!!」


 じわ、メリーの目に涙が浮かぶ。


「泣くなって。姐さんも止めてやってくださいよ。どうせ、何かあっても『元通りにできる』とか思ってるんでしょうけどお」

「まあ……」


 まあ、そうだけどそうではない。メリーが納得いってなさそうだからと好きにさせていただけだ。


 メリーが授かったのは、人の気持ちを意図的に高揚させるというか、楽しくさせちゃうみたいな、『陰』のくせにアゲアゲな能力だった。


 キキィ!

 珍しい力です!


「へえ、珍しいんだ。なんていうか、儲かりそうな力だよねえ……」


 一定の需要はあると思う。裏社会とかで。


「やだー、姫様わっるい顔してるぅー」

「ドンは一人で充分すよ姐さん」


 同志の一人で大商会の会頭セージは、王都の地下を勝手に整備し、シマを広げていた関係でドン・セージというあだ名で呼ばれている。


「儲かる、とはどういうことでしょうかミカ殿」


 優等生くんは首をひねっている。


「ほら、邪教徒もあの香とニタギの薬を使ってお楽しみみたいでしょ。そういう、今の世に飽きちゃったみたいな層に売れるだろうなと思ってさ。もちろん売らないけど」

「なるほど、薬の代わりに魔法で愉悦を、ということでございますか。それは確かに、暇を持て余した貴族などの間でも需要がありそうです」

「だから、内緒ね」

「は。心得てございます」


 私も本気でコレを『人を笑顔にする素敵な魔法』などとは思っていない。コレはどこからどう見てもヤバい能力だ。むやみに公表すれば、治癒能力ほどではないにしろ有象無象にたかられかねない。


「さあメリー、泣いても笑っても君の能力は変わらないよ。明日以降は、魔力から闇の力を作って貯めるのを習慣づけつつ、出力とかのコントロールも徐々にできるようにしていこっか。洗脳には向かないと思ってるだろうけど、これだって使い方次第だからね?」


 私はなおもペータで試そうとするメリーを止め、この混沌とした会を一旦解散させた。




つづく

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