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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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オシベメシベくらいの認識

 ミイイ……。

 なっとくいかない……。


 タイタの頭上でうなる白リスである。


「俺の頭ではご満足いただけませんかミイ殿」


 ミイミイミイ。ミイ、ミイミイミイミイ!

 赤毛は別にいい。でもミイ、金髪に注意しただけ!


「ミイが性……いや、センシティブなこと言うからだよ」

「あの、ミカ様。その魔獣様は何をおっしゃってたんですか?」


 話についていけていなかったララに「かくかくしかじか」と説明する。


「せ、せい……っ、ダメですよ魔獣様! 未婚のミカ様になんてことおっしゃるんですか!」

「まあ、ミイからしたら植物のオシベメシベくらいの認識でしかないんだと思いますよ」


 ミイが何気なく放った言葉は『ニンゲンの胸は性器』と直球で訳されてしまったが、ミイとしては『人間の女にとって胸部はデリケートなものなので冗談は言わないように』と物申しただけという感覚なのだろう。


 ミイミイミイミイミイミイミイ!

 ミイはニンゲンのメシベにキョーミない!


「はいはい、メシベだと思ってるならそこに入らないで、ってこと」


 ミイイ……!

 せっかく寝心地よかったのに……!


「もう、ミイったらまだ言っているの? あなたが悪いんですからね。ご不快な思いをさせまして申し訳ありませんミカ様」

「いえ、ふところに入れていること自体は不快でもなんでもなかったので大丈夫です」


 なんなら某腐海のほとりに生きる少女気分で楽しんでいた。あの子、意外に巨乳なんだよな……。


「というかうちのチャラ男がセクハラ発言しなきゃミイも失言することなかったので。はあ……」


 なんかすごくどうでもいいことで揉めている気がしてきた。


「どうでもよくなんかありません!」


 私の独り言を拾ったのか、ザコルが食ってかかってくる。


「どうでもいいですよ。どうせあってないようなものですし、これからも活躍しない可能性高いですし。ミイ、やっぱりここで待機する?」


 ミイ!

 わーい!


 私が胸のボタンに手をかけようとすると、その手をガッとつかまれた。


「駄目だ!!」

「やめろっつの!!」

「なりませんミイ殿。ここにお留まりください」


 がし、ミイはタイタの手で捕まえられ、再び赤毛の上に戻された。ミイもその気になれば空間を渡れるのだろうが、大人しく捕まっている。と思ったら、ミリナがニコニコしながら彼を見ていた。


「ていうか、どうしてセクハラしてきたエビーまで止めるのかな……?」

「自分をどうでもいいみたいに言うなこのバカ姉貴!!」

「はいはい、めんどくさい子だねえ。どんな思惑があってもセクハラはよくないよ?」

「それは! ごめんなさい!!」


 謝るくらいならしなければいいのである。しかし軽口叩いてこそのエビーでもある。どこまで締めるか悩ましいところだ。


「いいなあ、エビーさんはしかってもらえて……」

「はは、ゴーシ様は、ザコル殿と思考が似ているところがおありですね」

「ホント?」


 ゴーシはちょっと嬉しそうにしたが、あまり似なくてもいいところである。


「ゴーシの失敗の土台には正義がある。あのセクハラ男の土台にあるのは単なる軽薄です。同列に並べるべきではありません」

「はは、全くその通りでございますね」

「ちげーよ、俺はちょっとミイちゃんに嫌味言いたかっただけで……!!」

「………………」


 結局誰も叱ってくれなさそう、と踏んだゴーシはララの隣へ行った。ララも苦笑する。


「言っとくけどねゴーシ。かーちゃんも叱りにくいわよ。こんなに反省してる子のこと、これ以上怒れないわ」

「でもおれ、ガットのこと止められなかったし、かーちゃんもシンパイさせたし、しかも外でさわいだんだぜ?」


「仕方ないじゃない、あんたの目の前であの子達と平然と話してたかーちゃんも悪いわ。ゴーシのとこに、あの子達が私が到底買ってやれないようなお菓子や新しい服を持ってきても、かーちゃんを傷つけないように断ってくれてたの知ってるよ」


「リコがきてからは、いっかいだけ、うけとっちまったよ。おやつ、やりたくて……」

「……ゴーシは、本当に優しい子だね。とても私から生まれたとは思えないくらい」


 いーこいーこ。

 周りの大人は、その優しさゆえに、ザハリやザハリの元ファンに復讐に行きかねないと心配している。


「かーちゃんはね、あんたが目の届くところで無事に笑ってくれてたらそれでいいの。かーちゃん嫉妬したりしないから、もらえるものはもらっていいのよ、ただ、もらったときは教えてちょうだい。お礼にいきたいからね」

「うん」


 ゴーシは、干し林檎が盛られた皿を見遣る。もちろんゴーシに出されたものだ。


「ゴーシ兄さま! ガットがね、兄さまにおてがみだって!」


 イリヤがガットを連れてやってきた。


「僕も兄さまに書いたよ! はいどーぞ!」

「どーぞ! ゴシにい!」

「え、ありがと……」


 彼が戸惑いながら受け取った手紙には、つたない文字で彼への感謝がつづられていた。




つづく

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